遥は目を見張った。ずっと地下に籠っていた。人に会うことなどまずない。通信は専用回線でしかできない。こちらからの定期連絡以外のコンタクトもまずありえない。なのにモニタの画面には瀬戸夏が映っている。入り口の前で仁王立ちしていた。間違いなく夏だ。 

「ちょっと あんたこんなとこでなにしてんの?」

 夏は扉に向かって文句を言っているようだ。遥かはあきれて声が出ない。

「言いたいことがたくさんあるんだけど、まあ、とりあえず疲れたからちょっと休憩したいんだけど」夏はしゃべり続けている。

「ちょっと早く開けてよ もしもし 聞こえてる?」

 遥かは少し考えた。どうしよう? たぶん夏は無視しても帰らないだろう。ここまでたどり着いただけでも異常だ。遥は椅子の上で体育座りしている。しばらくして入り口のセキュリティーを解除した。モニタに映っている夏が笑顔になる。

「ようやく開いた。友人が訪ねてきたんだからさっさと開けなさいよね」

 夏はそういって真っ白な建物の中に入っていく。さっき降りた駅から白い建物まで街灯のような明かりが導いてくれた。暗闇の中で白い建物はとても美しい。シンプルな球体のような外観も素敵だ。

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