第4話『魔法』

(1)

真咲慶太は会社の先輩女子社員数名の「女子会」に呼び出された。

LINEの通知を見た彼は一瞬鼻じらんだ顔を覗かせたが、


『マジすか。嬉しいです!すぐ行かせてもらいまーす』


と返信した。先輩たちのご機嫌取って飲み代タダにしてもらうのだから

このくらいの気遣いは当然といえば当然だろう。

居酒屋に行くと、先輩たちがすでに4人集まっていて

「おーい慶太こっちー!おいでよー」いつも優しい楓先輩が手招きした。

楓は慶太の上司である福田の彼女で、よく三人でご飯食べに行くと

すごく優しくしてくれるとても面倒見のいい先輩だ。


楓の隣にいた菜美はどうやら今日は機嫌が悪いらしく

「おぉいこらあ、遅いぞ慶太ぁー」すでに出来上がっているみたいだ。

菜美は慶太より3歳年上だが、慶太と仲のいい同僚である祐樹の彼女だ。

「どうもごめんなさいー。菜美さんどしたんですか」

「どしたんですかじゃねえって。いいからそこ正座」

言われるままに菜美の隣に畏まって正座する慶太に

「だいたいお前よー、遅れてきてごめんなさいの一つもいえねえってのか」

「え・・ええ?あ・・・」

「あじゃねえよ」

「はい、ごめんなさい」

呼ばれてすぐにきたはずなのに初っ端からの説教スタートで

慶太は空気を読んでとりあえず謝ることにした。


「ほらほら菜美ちゃん、慶太が怖がってるからまずは乾杯しよ」

楓が仲裁し、一旦は菜美も引き下がる。

みんなで乾杯し、他の先輩たちのご機嫌を伺いながら

甲斐甲斐しく注文をとったり、酌をして回る慶太。


菜美もイライラしてはいたが、一生懸命機嫌を取る慶太を再び隣に座らせると

「おおい慶太。祐樹しってんだろ?え?そうそうお前の友達な。あいつさ

私が仕事で忙しい時によお。他の女と浮気してたんだぜ。巫山戯んなよこら」

そういうと、慶太の太腿を平手でバシッとひっぱたく。

「いてっ!菜美さん痛いっす」

「痛くねーーーーよ。痛いのは私だっつーん」

「はい、ごめんなさい」

「ごめんなさいじゃねえーよ。いやごめんなさいだろそうだろ」

理由はわかるが、ものすごい絡み酒に冷や汗をかく慶太。


そのまま祐樹への鬱憤をぶつけながら、菜美はその間ずっと慶太の太腿を

ひっぱたいては撫で回し、ひっぱたいては撫で回すを繰り返した。

まあ慶太としても早く機嫌を直してもらいたいと思い、

菜美にされるがままとなったまま、はいはいと相槌を打つ他なかった。



(2)

一次会が終わり、そっと帰ろうとする慶太は菜美に捕まり、

「おおい慶太ああああ、カラオケ行こうよ。来るだろうお前も」と

強制的に二次会参加となってしまった。

カラオケボックスに入った一行はさらに酒類を注文しまくっており、

慶太はこの悪夢がさらに続く事を予感して絶望していた。

慶太自身もそれなりに酒は飲んではいたのだが全く酔える気がしない。


こっそり楓の隣に避難しようとしたものの、

「おい、慶太はこっち」菜美に手招きされて彼女の隣に座らせられる。

一通りマイクは廻り、一生懸命盛り上げようとテンションあげて

騒ぐ慶太であったが、菜美がJUJUの「この夜を止めてよ」をセレクトすると

事態は急変した。


歌いながら「ちくしょーーふざけんな」そんなアドリブ入れ始める菜美。

そのままマイクを放り出して慶太に近づき「男ってほんとクソ」と言いながら

慶太の服を脱がし始めた。


「え?え?まずいっすそれ・・・」慶太も驚いて抵抗するが、

先輩たちが面白がって菜美に加勢する。

4人に取り押さえられ、服を脱がされてしまう慶太。

ふと気づくと楓が後ろから腕を抑え、慶太の胸を弄ってケラケラ笑っている。

そのことに衝撃を受けた慶太はズボンを引き下ろされ、パンツだけにされてしまい

菜美に股間を踏みつけにされてしまった。

胸を刺激されながら股間をグリグリと踏みつけにされた慶太の体が反応してしまうが

これを菜美や他の先輩たちが狂喜する。

「やば!慶太でかくない?」

「え、ほんと?どうどう?」

「祐樹よりでかい」

「まじ?見せてみい」


嗜虐的な興奮で4人がパンツを引き下ろす。

勢いよく腹まで跳ね返り、猛り狂ったその様子に

歓喜の悲鳴をあげた先輩たちは手で触れたり、スマホで写真を撮っている。

「これでかいんじゃない?楓ほら」

「ねえ菜美、私慶太呼んで正解だったでしょ?」

「楓さすがー。よーーーーし、それじゃあ今日私は慶太とせっくすしまーーーす」

「えええええ、ちょ先輩」慶太が慌てると後ろにいた楓が耳元で

「いいじゃん楽しめば?菜美と寝て、菜美が満足したら私も味見するからさ。

慶太の彼女には黙っててやるからやってきなよ」


その言葉で大体の察しがついた。この4人のリーダーは菜美ではなく、

主犯は楓だったのだ。菜美は楓に良いように利用されている道化者と言うことか。

羽交い締めにされて男性器と胸を弄ばれながら、慶太の目は人知れず

冷徹な色を浮かべた。


『そう言うことか・・・なら教えてやる』


(3)

先輩たちは慶太が逃げないようにとわざわざホテルの前までついて来てきた。

千鳥足の菜美を支えながら、ホテルに入るまで見送られる念の入れ様だ。

素直に入室した慶太だったが、先ほどまでのおどおどした気配は何処へやら、

彼の怒りは頂点に達していた。もちろん怒気を表に出さないようにはしていたが

カラオケまでの低姿勢からの豹変に菜美も少し戸惑っていた。


『カラオケボックスで受けた辱めの借りはきっちり返してやる』


入室してすぐに菜美の顔を真顔で見つめ、「それじゃセックスしましょうか」

慶太の顔がぐっと近づくと菜美は照れて目を背ける。

その顔を無理に振り向かせて口づけをし、小声で耳打ちする。

「それじゃあ今日から俺の言うこと全部聞くんだよ。さもないと・・・」

薄暗い部屋で慶太の余裕の声が響く。

これで菜美は慶太の奴隷だ。



週末明け。出社した慶太が席に着くと、向かいの席にいる楓からLINEが届く。


『ねえあの後どうだったの?菜美何も教えてくれなくてつまんないんだよー』


もう本性を隠そうともしてない楓に一瞬嫌悪感を覚えた慶太だったが、


『楽しかったっすよー、今夜飯奢ってくれるなら全部教えますねー』と

明るくレスを返す。


『ほんと?なら今夜うまく理由つけて時間作るね。楽しみー』

その返信を見た後に席の向かいににこやかに笑顔を振りまく。

楓もニコッと笑った。


さあて、4人全員俺の魔法にかけてあげるから覚悟しな。


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