第8話

あぁ....やってしまった、扉をくぐる時には笑顔で送る....と思っていたのに。


『.........』

最後の最後で表情を曇らせてしまった。


『さぁ、もうひと頑張りだよ。』


「.....っ」

自分で勝手に決めたこととはいえ、それができ

なかった自分に腹が立つしすごく悔しい。

こうやって悔しがってる間にも時計の砂はカサカサと音を立てて落ちていく。


『何してるの?!早くしないとっ!本当に閉じ込められてしまうよ!?』

今まで一度も声を荒らげることのなかったマシュマロが怒ったような、でも少し焦ったような口調で私を扉の方へ進ませる。


『まって、ようせいさん.....。』


『ん?』


『おねえさんってまだ生きてるんでしょ?だったら、おねえさんみおくってからあそこにはいるんじゃ.......だめ?』


「.....!」

びっくりした、まさかそんなことを言うなんて....でも...... それをするってことは、ルールを破ることになる。ルールを破ると元々霊魂であるマシュマロは強制的に成仏することになる。


成仏ということは喜ばしいことなんだろうけど、成仏しそこなったことを楽しんでいたこいつにとってはどうしても避けたいことだという話を聞いていた


『あのね僕、ルールっていうのがあってね?』


『おねがいっ....!ようせいさんワガママいうのこれでおしまいにするから....』

そう言って少年はマシュマロの方をまっすぐ、あの輝く瞳で見つめる。

そんな二人の会話を聞いていると、何故だろうか理由なんて分からないけど.....涙か止まらなくなった。


『仕方ないなぁ.....今回だけだからね?こりゃボクもこの仕事の後強制成仏だな.....。』

マシュマロがそう言った時、ちょうど.....


“カサッ”


と音を立てて最後の一粒が落ちていった。

それから何が起こったのかよく分からないけど最後に聞こえたのはあの少年の『ありがとう』という言葉だった.....気がする。

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