領地経営

第52話 第三章 プロローグ 

王を守るため作られた漆黒の扉から帝国が誇る将軍たちが入ってくる姿は、壮観の一言に尽きるであろう。

漆黒の大理石と漆黒のクリスタルで作らせた床や窓。全てが黒で統一された謁見の間には曲者揃いの将軍たちが天帝に自らの武勇を示すように存在感をこれでもかとアピールしていた。


帝国が誇る城ブラックキャッスル


その謁見の間には漆黒の大理石で作らせた階段の上。

もっとも高い位置に作られた場所に天帝は座している。


黒は帝国を象徴する色である。

黒を着こなす者こそがより帝国の威厳を放つと言われている。


天帝は漆黒の鎧に身を包み、黒髪黒瞳の容姿が集まった将軍たちを見降ろしていた。


「そろそろか……」

「はっ、すでに城に入ったと連絡がありました」

「あい、わかった」


天帝の後ろにはダークエルフの執事がタキシードを纏って膝を突いていた。


天帝が待つ謁見の間に客人が入ってきた。

傭兵王ビスタ、大商人ドン・アスタークの二人は、闇法師に導かれ謁見の間へ入っていく。


「最初からこれが狙いだったのか」

「喰えぬ人ですね」


闇法師に悪態を吐きながらも正装をした二人はふてぶてしい態度で天帝の前に立つ。


「共和国からやってきたビスタだ」

「アスタークだ」


謁見の間には強者揃いの将軍たちが、その階級を表すように左右に分かれて階段に立っていた。

最も低い位置にいる二人にはそれだけで威圧的であり帝国の強さを表しているようにすら感じていた。


階段の最上段。天帝の座は権威を象徴するように作らている。

謁見の間に入ったビスタとアスタークは唖然とした。

先を歩く闇法師は一段だけ階段を上がって将軍たちの末席に並ぶ。


「よくぞ来た。我が友たちよ」


遙か高見から聞こえる声。ビスタとアスタークは身が震えるような思いがした。

それは腹の底から恐怖がにじみ出てくる声であった。

圧倒的な存在感と威厳が感じられたのだ。

二人は心の中で同じことを思っていた。これが天帝……


「我らの言葉をお聞きいただきありがとうございます。天帝様」


天帝、それは帝国の王を表す言葉であり。

共和国が隣接するもう一つの国家であった。

王国よりも圧倒的な領土と軍事を有しており、全世界を支配できるだけの力を持っていると言われている。

共和国も再三に渡り帝国へ下るように勧告がきていた。

しかし、纏まらぬ二つの頭と王国という憂いがあったため、なかなか帝国へ下るまで話がいかなかった。

今回、二つの頭は闇法師の導きにより共闘することになった。

結果は共和国の敗北となり、互いに領土を減らすことになってしまった。

そのため自分達の力の無さを痛感し、弱った自分達では本気で帝国が攻めてきたとき対抗できないと判断した。

話し合いをする機会があったことこともあり、二人は帝国に下ること決めたのだ。


「「ありがとうございます」」

「うむ。共和国の傭兵王と大商人が仲間になってくれるのだ。これほど心強く嬉しいことはないぞ」


帝国に下るに当たり、帝国側が出した条件は税を納めること。それだけだった。

税を納めれば帝国の民として認めるという寛容な言葉に、最初こそ疑った二人であったが、天帝に会うことで自分達がいかに小物であり、天帝からすれば弱小な護るべき存在でしかないのだと実感した。


「はっ。この身天帝様の為に捧げまする」

「はっ。この知天帝様の為に尽くしまする」


傭兵王は武を、大商人は財力と知恵をそれぞれが持てる力を天帝に捧げる宣言をする。共和国は帝国へと受け入れられる。これにより共和国という国は消滅した。

代わりに巨大な帝国の領土が増すことになり、また王国への足掛かりができたことを意味する。


「我々の相手は王国である。皆もそのつもりで準備いたせ。

長き戦いになるか、短き戦いになるかは皆の力にかかっておる」


天帝は玉座から立ち上がり宣言を口にした。


「王国へ宣戦布告せよ!我が名はデリンジャー帝国初代天帝サウザンド・デリンジャー一世である。この名の下に戦い。この名の下に全てをもたらせ」


威厳に満ちた天帝の声に集まった将軍たちが膝を突く。


「「「「はっ!!!」」」


これにより、王国と帝国の全面戦争が開始されようとしていた。

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