第45話 歓喜
ヨハンは部隊を四つに分けて、ガルガンディア要塞周辺の監視に当たらせた。
四部隊は、それぞれ昼夜の監視ができるようにいくつかの隊分けも行われてガルガンディア要塞への救援。物資搬入の阻止に当たった。
国境とガルガンディア要塞の間には距離がある為。拠点は両者の中間位置に設置して、ヨハンが率いる本陣とした。
共和国に潜伏して、すでに一週間が経とうとしている。
ガルガンディア要塞へと救援を求めにきたのは、共和国が使役しているゴブリンやオークなどの下級兵ばかりだった。逆にガルガンディア要塞から出撃する兵士は見ていない。
一週間の間に四つの部隊は怪我人が出ることはあっても死人は皆無で過ごすことができた。
敵国陣地に布陣するにあたって様々な用意をしてきたが不要のまま事を終えられている。
ただ、厄介だったのはモンスター兵士とは別に魔物の森から蜘蛛系の魔物が多く出現したことだ。
毒や麻痺などの異常状態を引き起こす攻撃に苦戦した者が出たため、解毒や麻痺解除などエリスと呼ばれる病魔退散系の治癒魔法まで習得することになった。
戦士として戦うのではなく、新たなジョブとして僧侶を習得して回復魔法を使えるジョブを装備するようになった。サブ1に魔法師を合わせる使うと魔力消費が抑えられる。
魔導師達も回復が使える者は回復に徹し、回復が使えない者は補助魔法で騎士の強化につとめさせた。
大々的な魔法を使えば目立ってしまうので、戦闘は騎士たちに頑張ってもらうことになったのだ。
「一週間も戦場にいて、誰も死んでないっていうのは凄いことだよ!」
リンが用意してくれたお茶を飲みながらミリーが興奮気味に笑っている。一週間を生き抜いたことで、主要メンバーを集めて会議をしていたのだ。
一週間でヨハンが困ったことは、8割近くが女性ということだ。しかしも男勝りな騎士が多く。無防備過ぎるのだ。
ミリーは引き締まった感じの女騎士ではあるが、出るとこは出ていて着替えとか気にしないでヨハンの前でも脱ぎ始めるので全部見てしまった。
「あんた達は運がいい。私達には最高の指揮官が付いてくれたんだ」
ヨハンの部隊以外にも、ミリー部隊も集まっていたので、ミリーはヨハンを担ぎあげて、士気を高めようとしている。
最近はスキンシップも簡単にしてくるので、こういうことも多くなった。ガーナとマリルの部隊は今も偵察に動いてくれているが、隙あらばヨハンにボディタッチしてくる。
これってあれですよね。逆セクハラですよ。あなたたち俺は上司ですよ。
ヨハンは溜息を吐きながらも朗らかな雰囲気に安堵していた。指揮官になるに当たって徹底したことは、兵士の士気の高さを保つことだった。美味い食事と勝利が続いているお陰で、士気は高く保てている。
しかし、気がかりなこともあった。一週間経ってもガルガンディア要塞を攻略したという本隊からの連絡がない。
元々すぐに攻略できるとは思っていなかったが、一週間の間になんの音沙汰もないことに兵たちが不安になるもの仕方がない。
「いいかい、私達は重要な任務を預かっているんだ。その使命を全うするために頑張らなくちゃいけない。
でもね。私達は美味い食事が食える。誰も死なずに戦い続けられる。これほどありがたいことはないよ」
兵士たちの気持ちを汲んだようなミリーの言葉に、不安げな顔をしていた従士達も顔を上げる。
何故か、騎士や従士よりも体力がないはずの魔導師達は終始元気なのは腑に落ちない。元来魔導師は変わり者が多いので、追い込まれれば追い込まれるほど力を発揮する。
ドMな魔導師達に若干引きながら、いつもの日課である皆で朝食を食べた。他部隊にも食事搬入部隊と言うのが出来て、朝昼晩とヨハンが作った食事を取りに来るのでつくらないわけにはいかない。
拠点があると言っても、いつ共和国にばれて部隊を向けれるかわからない。
ガルガンディア要塞を囲む共和国側は一本の道と魔物が住まう森なので、常に緊張状態で過ごさなければならないのだ。
俺がいるので死ぬ前に治療できればケガや異常状態は助かるが。心の休息まではヨハンにはどうすることもできないでいた。
だが、ミリーの声に応えるように今日も騎士たちは元気だ。
「今日も王国のため、皆さん死なずに頑張りましょう」
「おおおおーーーー!!!!」
ドドドドドドドドドォォォォォォォォーーーー!!!
いつもの声かけして掛け声を上がるのと同時に地面が揺れる。ガルガンディア要塞から上がる火の手。
「なっなんだい!いったい!」
ミリーの驚きの声に兵のみんなも驚き慌てる。ガルガンディア要塞からは爆発音が続き大炎が吹き上がる。
「本隊が攻撃を仕掛けたのかい?」
「そうみたいですね」
ガルガンディア要塞の本格的な攻略が開始されたのをみて、作戦を次の段階に進めることを考えた。
「皆さん!俺達のやることは変わりません。本隊がガルガンディア要塞を攻略するまで、我々は任務を全うするだけです。
敵の増援が増えないように救援を求めにきた部隊を撃退します。終わりが見えてきましたよ」
ヨハンの発言に兵士達も喜びを実感し始める。
「そうだ。戦いはもうすぐ終わりだよ。後ひと踏ん張りだ!」
ミリーが大声でヨハンに続く。
「「「うおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーー!!!!!」」」
先ほどの空元気ではなく心からの歓喜に満ちていた……
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