昼休み『学内女子の低評価について』

第29話『明日からの平穏のために』前編

 ついに来てしまった月曜日。

 ただ、言っても対決は放課後なので猶予はある。

 いつもいつも面倒な学校生活は、放課後まで長いなぁと感じるから。


「――って、思ってたんだけど」


 気付けば俺は、一足先にコンピューター室にいた。

 悶々とどうすればと考えているうち、時間は過ぎていたようだ。


「やる気満々だな」

「! ……夫馬先輩」


 後から……と言っても時間通りに来た夫馬先輩は、座る俺の後ろからパソコンを覗く。

 起動させただけで画面はホーム状態なので、夫馬先輩はすらすらと動かしていく。


 オタク=パソコン上手な風潮はあるが、俺は全くといっても過言じゃないほどに使えない。故にホームにしていたのだが……恐るべし夫馬先輩。


 ……なんて、感動している場合じゃない。

 俺にはやるべき事があり、終わらせなければならないことがある。


「で、ここをこうして」

「夫馬先輩!」

「お? なんだ、プログラム作りのやり方分かったのか?」


 何の疑念も抱いていない夫馬先輩。

 人間とは予想もしていないことを突きつけられるとあたふたし、上手く返せなくなるものだ。

 勝機は上げれる所から上げていく、それが非情に徹するということ。


「話が」

「――吹いたホラを取り消せ、ってか?」

「!?」


 俺が話すより先、夫馬先輩が本題の核心を突く。

 虚を衝くつもりが逆に衝かれた俺を見てか、攻撃の手を緩めない。


「なぜわかった……と、言いたげだな? ――覚えてるか? 昔お前、取り付けられてたろ」

「…………なんで、知って……」

「そら、オレが取り付けたんだからなァ? あん時は気づかれて壊されたが……今回は、バレなかったみたいだ」


 机に置いていた俺のスマホを手に取り、ケースから小型で薄型な盗聴器を取り出す。


「ま、今日のお前の考えは丸わかりだってこった」

「…………クソ」


 先手必勝で勝つつもりが、出鼻をくじかれる結果となった。

 だ、だが俺のやるべき事は何一つ変わらない。変な噂を立てられた女生徒を助け、何より田島と別れさせる……!


「一つ訊いてもいいか?」

「なんスか」


 毎度毎度、俺が口を開こうとした刹那に話しかける夫馬先輩。

 きっとわかっているんだ。このタイミングだと。故に俺は毎度、後手に回ってしまう。


「誤解を解いたとして、お前はどうしたい?」

「どうって……平穏を取り戻したい。男女問わず、仲のいい学園生活にしてぇよ」

「友達いねーのにか?」

「うぐぅっ……」


 嫌な所を突かれたが、攻めてを緩めるな。

 今言わなければ俺の勝ち筋が――


「ちょっと遅いんじゃねーかな?」

「!」


 口を押えられ、身動きの封じられた俺。

 早く立ち上がらなかった俺の敗因だ。だけど、今回逃そうが勝ちが遠のいただけだ。チャンスはいずれ訪れる。


 ――と、思っていたのに。


「別にバラそうが構わねーんだけどなァ。オレは楽しめればそんでいいんだからよォ」

「むぐっ……ハッ! ど、どういう意味だ……」


 手を払って訊くと、やれやれと首を振って――


「女共をヤったって噂立てたの、半分以上だから」

「……は? 何言って……」

「オレの名を語ってやってんだろ? 楽しそうでなにより……だ!」

「がっ……!」


 さらに強く抑えられた俺は、思考も放棄しそうなほどに痛みを感じていた。

 ダメだ……もう。――てか、俺は何をすればいいんだ?


 思考の行き着く先がそうなってしまった時点で、俺はもうダメなんだろう。

 そう思って諦めた――その時だった。


「作本!」

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