休み時間『私のやり方について』

第16話『計画通り』――sideコマツナ

「ふふっ、やっぱり……やっぱりそうなった!」


 私は木陰に隠れながら、田島さんの告白を覗いた。

 内容はまったく聞こえない。だけど、柊の性格を熟知し、あの表情から察して失敗したのは理解出来た。


「はい、一人排除」


 私はそれだけを見届けて五限目に戻ろうとすると、柊が何かを提案しているのが尻目に映る。

 素早く視線を学校から二人に変えると、場所を移していく。

 釣られるように私もバレないよう近づいた。


 声が聞こえる程度に近づいたが、会話の一つすら耳に届いてこない。

 最初に戻ろうと田島さんが提案をしてはいたが、それが最初で最後、十分の時が流れる。


 もうそろそろ戻ってもいいのだが、会話が無いのに居続ける柊が気になって戻れない。

 そう思っていた時――事態は進む。


「授業に戻った方がいいですよね」


 田島のその言葉に、柊も案に乗って授業に戻ろうとする。


(ちょっと待って!? このままじゃ私がいないの不思議に思われるじゃん!)


 急いで戻ろうとするけど、ここでバレるわけにもいかない。

 だからゆっくり、でも柊より先に着くために極力急ぐ私の目に映ったのは――


(あれって……)


 何をしていたのかはわからない。

 ただわかるのは、柊が田島さんの横顔に口を近づけていた事実。

 もしかしたら勘違いかもしれない。そうであってほしい。だけど、それを見たら思うのは、


(キス……してるの?)


 思わず口をついて出そうになるのを抑え、心の整理に時間を使う。


(どうして? 柊はずっと柚葉が好きだったはず……なのに、他の女にキスなんて出来るの?)


 今まで見てきた柊とは違った行動に、戸惑いが隠せない。


 ……いや、考えたところで私のやるべき事は何一つ変わらない。


 準備は整い始めている。

 もしかしたら脅威になるかもしれない相手、田島さんの排除も完了。

 それに……柊が柚葉と付き合う可能性はだし。


(……なら、残ったのは?)


 幼なじみは負けヒロイン、なんて言葉クソ喰らえだ!

 確かに幼なじみが負ける確率は高いし、私のような性格の幼なじみは大抵負ける。


 でも私は、他の幼なじみとは違う。

『幼なじみ』なんて肩書きに甘えず、準備を着々と進めている。

 用意周到な私だから、柊の事を理解し熟知し好きだから――隣に居るべきは私だと思う。

 とりあえず現状は――


 ――計画通り……なんてね。


 ――――――――――――――――――――

 次回から生徒会編突入です!

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