第083号室 モアトリップ!
深く重い霧に呑まれた夕暮れの団地、尼僧の意匠を取り込んだローブの下は水着な
「良き
揺蕩う濃霧に気配を隠し耐え難い渇きを癒すため、
霧の奥に人影が浮かび上がり夕日に焼けた陽炎が霧と混ざり合って、茜と白の
「ガラシャではないか。様子を見るに相当、
「ええ、ヒリヤ。貴女が走るゾンビを拵えるお陰で、
辺りに消毒液の香りが漂い始め、
「いいコトじゃない?その方が私の薬もより強い効果を望めるわ」
「やあ、フランか」「そうですか?」
舞台演出用のレーザー照明に似た緑色の光が、霧に攪拌され陽炎に歪み、
「………おつで~す、空気読んで霊体化も足しておいたよ~………」
「やあ、ラズム」「そうなの?」「ん~それ、お薬の効果、潰されない?」
プラズムソヒィの連れて来た
「我々の力は、ただ足せばいいというモノではありません。大事なのは心を合わせるコトです」
「やあ、ソヒア」「そうかしら?」「ま〜ね、切り替えてこーよ」「出来るかな〜………」
冷んやりとした空気を運び、
「物理を主軸に据えて、ゾンビの毒性とグールのタフネスをドーピングで底上げし、急所は霊体化させて隠す。あとは〜そうですねぇ………」
夕日が沈み星々は雲に陰り、チラつく街灯が明度を落として不自然な仄暗さを団地に迎え、
「あとは城じゃ、豪奢な墓石の石垣、艶めく白骨の白壁、見目麗しく並ぶ瓦は
「いいね、
「目指せ、医療崩壊!団地ドーム集客率200%!!トリップして逝くよぉおお!!!」
「「「「「「おぉおおおお!!!」」」」」」
「………お~!」
盛り上がるソヒィ達の脇に、真っ赤なベルベットのコートに包まれた少女のゾンビがちゃっかり現れ、掛け声に遅れて参加すると全員の注意を奪った。
「やあ、え~と、誰だ!?」「そう、ね、私達とは別物よね?」「でもゾンビでしょ?」
「あ、ドォロミと言います~」
まともに言葉を介し、ゾンビとしての枠を超えた知性を窺わせる相手にソヒィ達が困惑する。
「………沢山、
「不気味です。もう一度殺しましょうか?」
頭と胴を離せば問題も無くなると、ドォロミの首にソヒアがナイフを突き立てたところで、一人思案していた亡姫が待ったをかけた。
「いや折角、知性が残っているのじゃ。マネージャーでもやってもらおうか」
「ん、オッケー」
ゾンビに噛まれようが、悪魔と契約しようが、霊に取り付かれようが、寄生生物に侵蝕されようが、ヴァンパイアのマネージャーにされたって、何処までもマイペースでガチな奴、団地攻略ガチ勢の不穏分子ゾンビっ子ドォロミは、こうしてソヒィ達のマネージャーになった。
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ビジュアルは近状ノートの方に載せております。
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