第081号室 エピデミック
女児アニメの住民である団地のアイドル、ネクロマンスヴァンパイアのソヒィちゃんが出現する条件は謎に包まれている。
小夜が侮蔑の意味を込めて【お兄ちゃん】と呼ぶゲームセンターの住民が語るところによるとソヒィの本体、
「………ソヒィはゲームのキャラがそのまま実体化したような存在だ、出会えば問答無用で斬りかかって来る」
「フフン、今更よね?」
ブタのお兄ちゃんは美形揃いの異世界勢の女性達に囲まれ、居心地悪そうに身動ぎして縮こまり、すると有識者 (?)の話を聞き漏らすまいと美女の囲いがさらに狭くなり、お兄ちゃんの呼吸は浅くなる。
「ちょっと離れて上げて、お兄ちゃんは異性に慣れてないのよ?」
「どういう意味だ?」「は~い」「いいけど」「あは!」
小夜が面白くってしょうがないと眼を細め、口角を吊り上げて両手でお腹を抱え、腹筋に力を込めて笑いを堪える。そして心の中で女性陣をいるだけ連れて来たのは正解だったとほくそ笑んだ。
「………ソヒィは同時に複数存在していて、能力の強さに応じてレアリティが設定されている。普段テレビでレポーターやってたり、直接仕掛けてくような
「本来なら逆立ちしたって勝てないような化け物が、無様晒して死んでくれるんですもの。ナイフ舐めない手は無いでしょ?」
一斉にナイフを舐める練習が始まる。(ぺろぺろ、ペロペロ………)
「何してんだお前ら?…(練習が止まる)…た、ただスターゲイザーはSSRより上位のエンドコンテンツ、固有レアリティ持ちには通用しない!」
「へぇ、それは知らない………」
「最近のゲームガチャに倣えば、固有Rの排出率〜いや遭遇率はだいたい1%以下だろ」
「じゃあ、なあに?1%の確率で搦手の通用しない、つよつよソヒィちゃんが出てくるの?」
「俺は何度か見たぞ」
「そんなと会って、よく生きているわね?」
「ああいや、正確には存在する痕跡を見た事がある。かな?固有Rの周りは一種の結界が展開されているんだ。アレでゲームのお約束を踏襲しているとこあるからな、ボス戦前の警告的なもんなんだろう」
「ふ〜ん………結界、霧とか?」
小夜は夜の砂浜を呑み込んだ霧を想い返した。
「俺が見たのは局地的に気温を下げるのと、日差しを弱めるのだったな。霧が局地的に起きていたんなら居たかもしれない………」
「でも、その時、霧から出て来たソヒィちゃん、スターゲイザーで倒せたわよ?」
「バカ言え「はあ?」そいつは別個体だろ「アンタいま私をバカって言ったわね?」ボスなんだから結界の真ん中まで行かないと戦えないんだよ「撤回しなさいよ!」バカが!「またバカって…」ソヒィをなんだと思ってんだ!?「知るかよな!!」アイドルだぞ!?」
口論を始めた二人を置いて、聞くべきことは全て聞いたと残りの住民達は解散と相成った。
―――
団地の陰間、カプセルトイの販売機や子供向けゲーム筐体の並ぶ人気の無い一画、モア・トリッパーズのゲーム筐体から、一等派手な演出を経て排出されたカードは、意思を持つかのように風に舞い、乾燥し切ってミイラとなった屍に貼り付くと、
蒼炎を宿し甦った
「さあ、行け!我が
秒単位の即効性と致命的な致死性から自らをも滅ぼした最古のゾンビウィルス、レイジ株は唯一の
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