2.
「ただいまー。」
「はいはい、おかえりー。」
「杏も帰ってきたじゃん。」
「いいじゃん、いいじゃん。」
家に帰ると、ベッドにダイブして、汚れるから服脱いでって杏に怒られて、わかったーって脱ぎ捨ててベッドに潜り込む。杏は、カメラの写真を見返している。ここまでがいつもの流れ。
「ちょっと、理香子。」
うたた寝していると、肩を叩かれた。目を開けると、嬉しそうな、戸惑っているような微妙な顔をした杏が目に入った。
「見て、これ。」
差し出された写真を見ると、写真の中の道には不自然に文字がくっきりと映し出されていた。
「島に行け?」
「そうそう。でさ、行った方がいいと思わない?」
杏の声は心なしかどころではなく弾んでいる。表情もいつの間にか満点の笑顔だ。
「何、急に。てか、心霊写真?めっちゃ怖いんだけど。」
「行こう、島。」
こう言う時、なんか面白そうと思ってしまうのが杏のいいところだと思う。私は怖くて薄気味悪いから、何もしないで写真捨てて終わってしまいそうだ。
「V Rのデータ探そうか?どこの島がいい?」
「い・く・の!」
こうなるとどうにも手がつけられなくなってしまうのが玉に瑕だ。ちょっと前に疫病がすごい流行ってから、なんでもオンラインで済ませようと言う流行になった。その流れで、V R旅行が流行り始めて、ここ半年くらいで主流になってしまった。以来、旅行なんてしていない。楽に旅行できていいなと思ったけれど、ちょっと物足りない感じもする。まあ、私は引きこもる方が好きだから手軽に旅行気分を味わえるのは嬉しいんだけど。
「もう予約したから、八月五日から、一泊二日で。」
こう言う時の杏は早いと言うことを忘れていた。
「どこの島なの。」
「ないしょ。あ、夜行バスだから出発は八月四日の夜ね。」
杏は意地悪そうな顔でそう言うとベットに滑り込んできた。
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