【ギャグ】お題:同性愛のカラス 必須要素:サスペンス

 同性愛のカラスは、夜な夜なゴミ捨て場に行き、生ゴミを漁っていました。ゴミ袋の中からは、サンドイッチの欠片やご飯粒など、そこそこの食料を得られますので、カラスはいつもここに来ていました。


 ある日、いつものようにゴミあさりをしていたところ、中から面白そうな物を見つけました。バナナの皮です。しかも、真っ赤な血がべっとりとついているのです。


 同性愛のカラスは、興味を持ったのか、バナナの皮を咥えると、そのまま自分の寄り合いへと持ち帰りました。そして、仲間たちの前にバナナの皮を置くと、こう言いました。


「誰か、これで面白いことをしてくれないか?」


 寄り合いのカラスたちは『また俺たちに変な属性を付ける気だな……』と訝しながら、お互いの顔を見合っていました。

 同性愛のカラスが棒状のものを持ってきた日には、いつもとんでもないことがおこるのです。同性愛のカラスの目はまるで、ドロドロの溶岩の中で輝く宝石を見つけたかのように、ギラギラと光っていました。


 やがて観念したのか、1羽のお調子者のカラスが、口を……もといクチバシを開きました。


「ク……クエェーーー」

「おい、ちょっと待て。俺たちは一応、人間が読むこと前提に話してるんだからさ……人間の言葉を使ってくれよ」

「べ、別にバナナに反応なんてしてないんだからねっ!」


 お調子者のカラスは、なんとか皆を笑わせようとして、思いつきのギャグを言いましたが、反応は芳しくありません。遠い空の向こうで、カラスが「アホー、アホー」と言っているような空気が流れました。


「アホー、アホー」

「アホー、アホー」


 そんな空気に感染したのか、寄り合いでも、アホーコールが起こりました。こうなったら、お調子者のカラスもお酒を飲むしかありません。しかたなく、一升瓶をクチバシで咥えると、そのまま顔を上に向けて中身を喉元へ注ぎました。


 一方、同性愛のカラスは、べっとりとついていた血に感心のない仲間たちを見て、またギラギラと目を輝かせました。『アイツとアイツ……このバナナを見た時、一瞬恥ずかしそうな顔をしたぞ。何を想像したのかなぁ……うひひひ』。そんな声が聞こえてきそうです。カラスの見た目が黒いのは、妄想のしすぎで腐っているからかもしれません。


「ひっく……うぉ、このバナナ、よく見ると血ぃついてるやん! バナナと血で妄想できるやん!」


 お調子者のカラスがそう言いました。同性愛カラスは嬉しそうに、お調子者カラスの言葉を聞いています。ですが、話が進むにつれて、徐々に余裕が崩れていきました。


「バナナは栄養価が高いから、他の食べ物をちょっと下に見てんねん。そんなバナナになんで血ぃついてんのかってーと、食うた人がうっかり口ん中を噛んでしもうたからですわ。突然口ん中は血溜まりになってバナナはびっくりですわ。バナナは血ぃ見て逃げ回っとっけど、ついに血に飲み込まれしまうねん。

 そこで血が言うねん。『お前を手に入れるにはこれしかなかったんや』って。血は栄養素を運ぶもんやから、バナナと結ばれようと思ったらバナナを消化するしかない。けど、消化したらバナナやなくなってまう。ほんでもバナナを求めずにはおられんかったんや。以上、バナナと血のカップリングでした」


 妄想があまりにディープだったのか、同性愛カラスはどこかへ飛び立っていきました。寄り合いのカラスは大喜び。

 さっそくみんなで、同性愛カラスを追い払うため、彼が苦手にしているディープなカップリング妄想トレーニングの練習を始めました。


 これが、100日後に同性愛に目覚めるカラスの初日です。

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