第30話 対抗
クリスは高次元空間小型格納コンテナから30mm重機関砲を取り出すと、弾丸を装填し近衛歩兵第4連隊に射撃を行う。
装填された榴弾は着弾と共に爆発する。
もちろん、近衛第3師団はただでやられているわけでもなく、抵抗のためにクリスに攻撃をする。
近衛騎兵第1連隊が突撃を敢行した。
クリスはそちらに重機関砲を向ける。
しかし数が数なだけに、1門の重機関砲では対処きしれない。
クリスはスキルの中から、SUS-8の外部アタッチメントを探す。
そしてクリスはSUS-8専用の大型チェーンソーを召喚する。
クリスはチェーンソーを装備すると、スターターを回す。
チェーンソーは鈍い音を立てて、回転を始める。
その大きな音に、その場にいた下士官は一瞬身構えた。
そのまま突撃する近衛騎兵第1連隊にチェーンソーを振りかざす。
しかし、チェーンソーは誰にもあたることなく避けられる。
「くそ、流石に一人じゃ分が悪いか!」
クリスは近衛第3師団が城門内に入らないように立ち回っていたものの、次第に劣勢となっていく。
近衛歩兵第4連隊と近衛騎兵第1連隊を相手していると、横から近衛砲兵中隊が臼砲でクリスのことを攻撃する。
ほとんどの砲弾はあらぬ方向に飛んでいったが、そのうちの一つはクリスに向かっていった。
その砲弾は肩の装甲板に命中する。
管状炭素繊維強化装甲板とセラミック及びチタニウム合金による複合装甲を持っているため、そこまでダメージはなかったが、命中した衝撃でSUS-8はバランスを崩してしまう。
そのまま膝をついてしまう。
その隙を狙って、近衛歩兵第4連隊はクリスの乗るSUS-8を、近衛騎兵第1連隊は城門を突破しようとしていた。
「くそ!」
クリスはまとわりつく歩兵を払おうと、チェーンソーを振り回す。
その際、何人かの兵士がソーチェーンに当たる。
血が飛び跳ねるが、クリスはそれにかまっている暇はない。
このままでは城門を突破され、近衛騎兵第1連隊を宮殿に入れるはめになる。
(最悪城門を壊すしかないのか!?)
そう考えたクリスは、持っていた30mm重機関砲を城門上部に向けようとした。
その時、宮殿方面から複数の発砲音がする。
クリスが振り返ってみると、そこにはペトラ隊の姿があった。
「大丈夫ですかクリス!」
そうペトラが聞く。
ぺトラ隊の歩兵がM4カービンで射撃をしながら、接近する近衛騎兵第1連隊を食い止める。
射撃によって馬や人に弾が命中し、近衛騎兵第1連隊はその場に倒れるか、そのまま引き返していった。
それを見た近衛歩兵第4連隊も、SUS-8から離れていった。
「あっ、待て!」
クリスは思わず、去っていく近衛第3師団のことを追いかける。
しかし逃げ足は早いもので、すでに遠くまで行ってしまう。
クリスは追いかけるのをやめようとした。
その瞬間。
「スラッシュ・カリバー!」
右から何かが飛び出してきた。
クリスは反射的に右腕で防御する。
すると右腕はすっぱりと切れて、持っていたチェーンソーごと吹き飛んでいった。
クリスは飛び出してきた正体を確認する。
それはステファンであった。
「ステファン……」
「やぁ、クリス。何してたんだい?」
ステファンは剣を肩に担いで、クリスに尋ねる。
「何って……。クーデターの鎮圧をしてるんだよ」
「嘘をつくな反逆者め!」
ステファンは声を荒立てる。
「今、反逆者どもと一緒に逃げていたではないか!」
「違う、それは反乱軍を追いかけていただけで……」
「黙れ!反逆者は命をもって罪を償え!」
そういってステファンは剣を構える。
ステファンは完全に狂気に陥っているようだった。
後ろにいたテニーやセシリアは止めようとしない。
クリスは覚悟を決めた。
「お願いだ、ステファン」
そういったクリスは、左手に持っていた30mm重機関砲をステファンに向けて撃つ。
ステファンはそれを横に動きながら回避する。
ある程度避けたところで、ステファンは方向を変え、クリスのほうへ突っ込んでくる。
今度は足元に接近し、剣を振るう。
振るった剣は勢いよく左足の装甲板に当たるが、今度はある程度まで切ったところでひしゃげる。
ひしゃげたことによって、左足の制御がうまくいかず、クリスは膝をついてしまう。
「出てこいクリス!直々に首を刎ねてやる!」
そういってステファンはSUS-8に飛び乗り、クリスのいる操縦席に対して剣を突き立てようとする。
その瞬間、SUS-8のキャノピーが開き、中にいたクリスはトーラス・レイジングブルでステファンのことを狙う。
しかし狙いが甘かったのか、発射された弾丸はステファンの顔の横を通り過ぎていく。
ステファンは一度後ろに下がる。
クリスはトーラス・レイジングブルを構えたまま、SUS-8の上に立つ。
「ふん、そんなものが僕のアダマンタイトで出来たアダマン・ソードに勝てるものか」
そういってステファンは自分の持つ剣を愛おしそうに眺める。
「へぇ、見たことない剣だと思ってたけど」
「当たり前だろう。これは僕がスキルを使って創った世界で一つの剣だからな」
アダマンタイトはこの世界において最強の金属。
加工は現在の技術力をもっても不可能と言われているものだ。
そんなアダマンタイトを、ステファンはスキル「万物の創造」を使って加工したのである。
「さぁ、どこからでも来い反逆者。僕に切られる覚悟があるならな」
そういってステファンは剣をクリスに向ける。
周辺に一瞬の静寂が訪れた。
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