第28話 編成
翌日、クリス達は宮殿内にある近衛師団詰所に来ていた。
国王曰く、ここで独立部隊の人員を確保するとのことだ。
「お待ちしていました。ホーネット様」
そう出迎えたのは、近衛第1師団の兵士であった。
詰所に併設された運動場には、約300人ほどの兵士が集められており、きっちりと整列されていた。
「国王陛下から、近衛第1師団の兵の一部をホーネット様の隷下に置くことを通達されています。また、ホーネット様は国王陛下より、
兵士はクリスに階級章を見せる。
「まさか自分に職業軍人になれと言うんですか?」
「いえ、あくまでホーネット少佐は特務ですので、正確には少佐の階級を持った、軍に属さない外部の人間ということになります。いわゆる非常勤ですので、職業軍人ではありません」
「……なんだかややこしいな」
「深く考えずにいたほうがよろしいかと」
そういって兵士はクリスに階級章を取り付ける。
「そしてこの部隊はホーネット中隊とし、国王陛下直属の部隊になります。指揮官はホーネット少佐、参謀長兼指揮官補佐は私、ザック・ウォードが勤めさせていただきます」
そういって兵士、ザックは礼をする。
「それと、お嬢様方にも国王陛下から特務大尉の階級が与えられています。お受け取りください」
そういってエレナたちにも階級章を渡す。
「私たちも対象なんですか?」
「はい。ホーネット少佐のみに階級を渡してしまうと、我々ホーネット中隊の兵士はお嬢様方に対してどのような扱いをしていいのか分かりません。よって、これは一種の名誉階級だと思ってください」
ザックはエレナ達にも階級章を付ける。
「早速ですが、国王陛下より部隊設立に関して要望が届いています」
「要望?」
「はい。国王陛下は、ホーネット少佐の能力の柔軟性を看破しておられます。そこで、ホーネット中隊には近衛師団よりも柔軟に対応できる戦力を持ってほしいとのことです」
クリスは頭を悩ませた。
柔軟な対応を可能にした中隊を編成するにはどうしたらいいか悩んだからだ。
柔軟性が高いと言えば歩兵だろう。
歩兵は軍の基本であるが故に、様々な場面に対応しやすい。
「わかりました。ホーネット中隊は歩兵を中心とします」
「了解です。歩兵ですと、銃や槍の装備が必要になります」
「装備に関しては問題ありません。自分が装備しているものを支給します」
そういってクリスは全員分のM4カービンを召喚する。
「あと、1個小隊に付きSUS-8を1機支給します」
クリスはSUS-8を10機召喚する。
SUS-8を中心として、歩兵を6名ほど付けさせる。
そのほかにも騎兵や工兵を編成した。
結局、歩兵を150名、装甲機械歩兵としてSUS-8を10機とそれに追従する歩兵を計60名、機関銃兵を10門40名、兵站工兵40名とした。
「今のところ、これでいいでしょう」
「分かりました。ひとまずこれで訓練を行っていきましょう」
こうしてホーネット中隊は始動する。
翌日からは、本格的にホーネット中隊の訓練が始まった。
最初はM4カービンの射撃訓練を行う。
中隊の全兵士にこれを徹底させる。
射撃訓練が終われば、それぞれ担当の兵科に分かれて訓練をする。
特に歩兵の動き方と、SUS-8の操縦と追従する歩兵に関しては、一番に注力した。
SUS-8の隊列は、それだけでも歩兵や騎兵の何倍もの力を持ち合わせている。
決して軽視できないものだ。
そのほかにも機関銃を扱う兵科を設立している。ブローニングM2重機関銃を取り扱う兵科だ。
こちらも射撃や移動の訓練を行っていく。
そんな中、歩兵の訓練にエレナたちが混じっていた。
「エレナ、なんで歩兵に混じっているの?」
「私たちは特務だけど大尉の階級を持ってる。それで何もしないのはなんだか味気ない」
「それで私たちは歩兵を三つに分けて、それぞれの隊長として行くことを考えたんです」
「結構楽しいよー!」
なんだか本人たちは楽しんでいるようだ。
「まぁ、これはこれでありか」
こうして歩兵はエレナ隊、ペトラ隊、ティナ隊と分かれることになった。
クリスは時折、ミュンヒハウゼン出版の図解本を召喚しながら歩兵の動き方や戦術を学び、実戦していく。
これを数ヶ月みっちりと行った。
その介あってか、ホーネット中隊の練度は十分に向上した。
まさに実戦に出せるレベルである。
そんなある日のことだった。
「ホーネット少佐に手紙です」
そういってザックが手渡してくる。
「手紙ですか?」
差出人を確認してみると、近衛第2師団長のジャックであった。
内容は以下の通りである。
『我々は国王陛下のことを信用している。しかしながら国王陛下のすることには不満を持っている。元冒険者であり、軍人となったホーネットなら分かることもあるだろう。簡潔に言うならば、国王陛下は冒険者に対して有利な政策を取っている。それは国防を主とする軍人に対する冒涜である。国王陛下には何度も具申しているものの、改善の余地は見られない。そこで我々はついに行動を起こすことにした。本日正午より宮殿を攻撃する。もし我々に手を貸してくれるのならば、共に戦ってほしい』
これを読んだクリスは二度見返す。
そして察した。
「これ……クーデターの予告か?」
クリスはザックにも見てもらう。
「確かに、これはクーデターをほのめかしているようですね」
「もしこれが本当だとしたら……」
クリスは時計を確認する。
時刻は11時54分であった。
「すぐさま司令部庁舎に確認に行きます!」
そういってザックは飛び出していく。
クリスは居ても立ってもいられず、補佐官と共に宮殿の正門前に行く。
そこには異様な井出立ちの近衛第3師団の歩兵と騎兵、そして砲兵がいた。
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