第7話 依頼受諾

 王都に戻ってきた二人は、すぐに宿屋へと入り、スキルのことについて話し合った。


「……というわけで、俺のスキルがユニークスキルだとかになったんだよ」

「なるほど、道理でちょっと変わったわけだ」

「変わったって?」

「雰囲気。前はナヨナヨしてる感じだったけど、今はすごい強気」

「……それだけ?」

「あと、持ってる道具。見たことないものばっかり」


 確かにそうだ。拳銃やら小銃といった類いの火器は、まだこの世界に広く存在していない。

 あってもクロスボウのようなものだけだろう。


「それで、これからどうする?」

「今それを考えているんだよなぁ」


 そう、これからのことも考えものだ。


「そろそろ討伐依頼も受けたいところだし、ちょっと見に行ってみるか?」

「うん」


 そういって二人は早速酒場の掲示板へと向かう。

 その道中、またばったりとステファンたちと出会ってしまった。


「やぁ、クリス。元気にしてるかい?」

「そっちこそ、元気そうでなによりだ」


 ステファンはそう言っているが、なんだか様子がおかしい。


「どうしたステファン?なんだか腕でもケガしたような感じだな」

「それはそっちもだろう」

「それもそうだな」


 本当だったら、笑うところなのだろうが、そうは言ってられない。


「……この間、難易度Bクラスのダンジョンに潜りに行ったんだ。格下のダンジョンだったから問題ないと思っていたんだが、そうは行かなかったよ」


 そういってステファンは腕の袖をめくる。

 そこには真っ赤に染まった包帯が巻かれていた。


「ものの見事にやられたさ。しばらくダンジョンはおろか、依頼を受けることも難しそうだ」


 そう、ステファンはうなだれる。

 それを見たクリスは、こう切り出した。


「俺だったらそれ治せるよ」

「……なに?」


 ステファンは顔をあげる。


「それは本当か?」

「もちろん、本当だとも」

「……いや、君のことだ。スキルで包帯を召喚するに違いない」


 クリスは変なところで疑われる。

 それでもクリスは主張を曲げない。


「なんだったら今ここでやってやろうか?」

「……いや、元パーティーメンバーとはいえ、そういう施しは受けない。僕個人でなんとかして見せるよ」

「あっそう」


 そういってステファンたちは去っていった。

 その直後、エレナがぼそりと呟く。


「……セシリアって回復魔法持ってなかった?」

「いんや、あいつ攻撃魔法に極振りだったから持ってないはずだぞ」


 回復魔法があれば、あのような傷はとっくに回復できるはずなのだが、唯一の魔法使いであるセシリアが回復魔法をもっていないため、ステファンはしばらく傷の痛みに耐えなければならない。

 一方、エレナも魔法使いで、回復魔法も持ってはいるものの、それを使う頻度は少ない。その理由は分からないが。


「てか、エレナは自分に回復魔法かければいいじゃん。腕の治りも早くなるでしょ」

「いい」

「なんでしないんだ?」

「だってこれは……」


 そこまでエレナが言うと、俯いてしまう。

 クリスには、そのわけが分からなかった。

 それはともかく、二人は酒場の掲示板を見に行く。


「討伐依頼は……そこそこあるな。どれがいいと思う?」

「……これ」


 エレナが指し示したのは、王都から約1日程度の所にある村での依頼だ。

 どうやらゴブリンの群れが巣を作っているようだ。それの討伐を依頼しているらしい。


「これ、行く?」


 クリスの問いに、エレナが答える。

 二人はその依頼を受け、準備に入った。


「とりあえず、エレナの腕のやつが取れるまでは準備期間にしよう」

「……分かった」


 とはいっても、翌々日になればギプスは取れるわけだから、翌日に出発ということになった。

 その間、クリスは何か道具が使えないか、スキルを使って探す。

 ちょうどその最中に、スキルで召喚できる道具を検索できることに気が付いた。


「えぇと、攻撃の道具は……。うわっ、8400個もある……」


 そんな調子で一日を費やしていた。

 そして翌日。

 二人は馬車に乗って目的の村に向かう。

 クリスの手には、先日召喚したばかりのM4カービンに背負い紐が取り付けられ、トーラス・レイジングブルは腰のホルスターに仕舞われていた。

 目的の村につくと、早速村長が出迎えてくれる。


「おぉ、冒険者の方々、お待ちしておりました」

「ゴブリンの討伐ですね」

「えぇ。1ヶ月ほど前からこの近くにある洞窟に巣を作るようになりまして……。どうやら知性が高い種のようで、どんどん繁殖していってるようなんです」

「分かりました。私たちがなんとかします。そこで、一晩観察してみて、討伐の機を窺ってみようと思います」

「なにとぞ、よろしくお願いします……!」


 そうしてゴブリン討伐の依頼が始まったのだった。

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