第3話 活躍
クリスがステファンのパーティーメンバーに加わって数か月。
パーティーは少し遠い街にまで出向いていた。
それは、とある森でしか採取できないキイロタマゴタケを採取して欲しいとの依頼を受けたからだ。
ただし、その森には凶暴な熊が潜んでいるとの噂もあり、一般人がおいそれと入ることができない状態にある。そのため、冒険者に代わりに採取してきてもらおうというのが、この依頼の本筋である。
「……地図によると、キイロタマゴタケの生育地域まであと3kmほどだ。今日はこの辺で休むとしよう」
太陽はすでに沈み、周辺は真っ暗な暗闇になりかけていた。
そんな中、鬱蒼とした森林の中を歩き回るのは危険が伴う。
そのような判断から、ステファンはここをキャンプ地とすることを決めたようだ。
「了解、俺は周囲の状況を確認してくるぜ」
「じゃあ私は料理のほうをしたおっかな」
「俺はテントの設営でもするよ」
「その前に調理道具の召喚お願いね」
「うん、分かった」
そんな感じでそれぞれ役割分担をして、キャンプの設営を行う。
皆で焚火を囲み、夕食を食べる。クリスはそれだけで、なんだか冒険者をしているような気分になっていた。
「今日のところまでは順調に来ているな。あとは目的のキノコを採取するだけだ」
「でもあれって希少価値の高いキノコなんでしょ?そう簡単に見つかるかなぁ?」
「なーに、エレナの『お告げ』があれば大体なんとかなるだろ」
「そうだね。それに採取の時間も丸2日あるから大丈夫だと思うよ」
こうして夜が更けていく。
翌日、霧が出ている朝方に一行は出発する。
目的地までは2時間ほどで到着した。
早速周辺の捜索に入る。キイロタマゴタケはその名の通り、傘の部分が卵のように丸く鮮やかな黄色をしている。だが普段は土の下などに隠れているため、容易には見つからない。
しかし、そこは冒険者。エレナの「お告げ」で、どこにどれだけキイロタマゴタケが生えているか簡単に見つけることが可能である。
「……右方向200m先、3本生えている」
「よし、まずはそっちの方向を探しにいこう」
そういって全員で移動する。
今は熊対策のために、バラバラで捜索するより全員まとめて移動した方が熊と接触した際に対応しやすくなるからだ。
それから日が暮れるまでの時間、パーティー一行は必死になってキイロタマゴタケを探す。その甲斐あってか、予定よりも多くのキイロタマゴタケを採取することに成功したのだ。
「これで目的は達成したな」
「あとは安全に帰るだけだね」
そんな話をしているところ、近くの藪がガサガサと音を立てる。
一行は皆、戦闘態勢になる。
藪から出てきたのは、体長6mはあろうかと思われる巨大なオオアカグマのオスである。
もともとオオアカグマのオスは獰猛で危険な生き物である上に、この時期は縄張り意識が非常に高くなり、遭遇したらまず生き残ることはできないとされている。
そんな熊を目の前にして、まずはステファンが切りかかる。
「ふっ!」
前足を狙った攻撃。素早い身のこなしでそれは命中する。
続いてセシリアの攻撃。巨大な火炎魔法を詠唱し、それをオオアカグマの顔面目掛けて打ち放つ。
それは見事に命中し、オオアカグマは顔面に大きなやけどを負うことになった。
さらにテニーの攻撃。大斧でオオアカグマの首を狙いに行く。
だが、これはオオアカグマの無茶苦茶な攻撃によって狙いを外される。
そのままオオアカグマはステファンのいるあたりに前足でひっかきにいく。これは狙いが甘かったのか、ステファンは簡単に避けることが出来た。
クリスは自分が召喚したクロスボウでオオアカグマの目を狙う。しかし、狙いがうまく定まらず、首に浅く刺さるのみであった。
ステファンがオオアカグマの横っ腹に剣を突き刺すと、熊は大きな鳴き声を上げる。そのまま、ステファンに二度目の攻撃をする。
ステファンは自分の持っていた剣を離すと、後方にいたクリスの元に駆け寄った。
「剣を召喚してくれ!」
「分かった!」
クリスが、ステファンの持っていた剣に似た物を出す。ステファンはそれを受け取るや否や、まっすぐオオアカグマの首目掛けて突っ込んでいく。
ちょうどその時、テニーが前足の片方を切り落としたところである。
そのタイミングで、ステファンが飛び上がり、首にまっすぐ落ちていく。
そしてステファンが叫ぶ。
「スキル発動!」
そうすると、ステファンが持っていた剣の刃が世界最高峰の切れ味を持つ物へと変化する。彼のスキルである「万物の創造」で刃の形状を変化させたのだ。
そしてステファンは勢いそのままに、オオアカグマの首を大きく刈り取っていった。
「……ふぅ」
頭と胴体が完全に分かれていることを確認して、戦闘終了である。
「お疲れさま、皆」
「結構あっけなかったな」
「そうだね」
「だが、ここで油断してはいけないよ」
「分かってるって」
「……」
こうして、無事に依頼を達成した彼らは王都への帰路に着くのであった。
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