第2話 一人で
何すりゃいいんだろう………。
だいたい第三者を欲しているって言っても、先生とぼっちじゃかなり差がある。
困ったときに、「保護者に電話しますよ」が使えない時点でもうダメだろ。
この京両高校にそんな情けないやつがいるとは思えないけど。
一番窓側の椅子に座り適当に時間を潰していると、ドアがノックされた。
「どうぞ」
入ってきたのは、女子が一人。
同じ階で顔を見たことがないから、多分三年生か一年生。
予想は三年生だな。
敬語で行こう。
…初対面なんだし敬語じゃないとどっちみちダメだな。
「あの、
「はい、そうですよ」
「えっと、今日はですね、放送委員としてここに来ました」
「はい」
「今日を担当している生徒がですね、都合が合わなくなってしまって帰りの放送を流せないんです」
一呼吸置いてその女子はさらにばつが悪そうな顔になり、
「本当は言ってはいけないんですけど、テープは最初に撮って使い回しなんで最終下校時間に流してくれませんか?」
「はぁ、はい。わかりました」
「テープは機械に入れたままで構いませんから」
そう言って放送委員の女子は帰った。
早速初仕事かぁ、みたいな感じで放送室に移動し、テープを入れる。
………こういう非常時の場合は先生がやるんじゃないのか?
放送委員を担当している先生は………と。
名前控えたからな。
後ですれ違うときに聞こえないくらい小声で文句言ってやる。
………誰か分かんないけど。
担当する学年が違ったら先生の顔と名前なんて一致しないと思うんだ。
しゃーない見逃してやるよ俺の心の広さに感謝するんだな!
壁に貼ってあるマニュアルを見て、機械を操作する。
『最終下校の時間になりました。校舎に残っている生徒は速やかに下校してください』
「よし、流れた」
テープは入れたままでいいと言ったので、そのまま教室を出る。
鍵を閉め、職員室の前に掛け、仕事を終える。
………………これ……雑用じゃん………。
次の日は園芸部から依頼され、こちらも放課後に植物を世話する人に用事が入って代わりにやって欲しいとのこと。
園芸部の活動する場所は体育館と校舎の間。
人目の着きにくい場所だな、と思った。
一人になりたかったらここに来よう。
あ、いつも一人だったな。
次の日は男子バスケ部から依頼が来た。
新学年になり、先輩と後輩でイザコザがありその間に入って仲介して欲しいとのこと。
それ顧問がやるべきじゃないの?
同じ生徒に任せていいの?
みたいな疑問も当然湧いたが、話によると顧問には内緒にしたいらしい。
依頼して来た部長、
「今年の一年は上手いやつが多くてな………。上手くまとめられないこと、あまり人に知られたくて…」
だそうだ。
一緒に来た副部長の
彼女欲しい彼女欲しい、って。
モテる為にバスケ部に入ったらしいけど普通にうまかった、なんかむかつく。
でも、田中にこの部活を教えたのは山内らしい。
なんだよ普通に気も利くのかよ。
前言撤回、いい奴じゃねぇか。
………少し活動して分かったことがある。
菊瀬先生は本当に俺に仕事を横流しするらしい……。
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