第3話 独り
活動を続けていると帰る時間が遅くなり、ゲームにとれる時間が短くなってしまっている。
次の週になり、不満を隠さず表情に出して周囲から避けられながら独りで登校していると、俺に話しかける奴が現れた。
「聞いたよ!部活始めたんだってな!なんでも、人を助ける部活なんだって?
のっけからよく喋るなこいつ。
と、若干引いている俺を他所にそいつは喋り続けた。
こいつの名前は
中学校までは陰キャだったらしいが、高校ではその感じは片鱗も見せていない。
器用な奴だ。
友達も多く、高校デビューの代表例みたいな奴。
何故か俺に話しかけることが多いそいつは、今もなお喋り続けている。
「なぁ、なんで俺に話しているんだ」
俺に関わるな!
とはせっかく親しくしてもらってるんだしとても言えない。
だから、オブラートに包んで理由を聞いてみた。
「笠真と話していると、気分が良いんだ!」
爽やかな笑顔で陽悟はそう言った。
それとらえ方に依ったらぼっちに優しくしてる俺、カッケー!
みたいになるから気を付けろよ。
俺と陽悟は同じD組。
下駄箱も同じなので、別れることもできずにそのまま靴を一緒に履き替える。
去年からこんな不思議な関係は続いている。
陽悟が一方的に話してきているのだけなのにこいつはすごく楽しそうだ。
靴を履き替え終わると、女子が近づいてきた。
そしてそのままそいつは俺を無視して通り過ぎ、陽悟に話しかけた。
「蕉野くん!今日のサッカー部のことなんだけど……」
「あぁ、分かってる。お前も頑張れよ」
パッと女子は笑顔になり、離れていく。
………俺の横を通る時、すごく睨まれた気がする。
「すごいよなぁ、あいつも」
感心した声で陽悟は言った。
俺の同意を誘うような呟きに戸惑った。
「………もしかして、今の同級生?」
「お前………さすがに見たことはあるよな?」
信じられないという目で見てくる。
なんか適当に言おう。
「あぁ……いやまぁ……見たり聞いたりしたら大体のことは覚えるけど、情報も一緒に貰わなきゃ、今のを同級生って思えないよ。小さかったし」
「はぁ……普通なら情報も当然もらってるはずなんだけどな………」
どうやら間違えたらしい。
あ、確かに覚えてる。
同じ階で見たことあるから同級生だなあいつ。
「まぁ、お前のそういうところもすごいと思うけどな」
も、てなんだよ。
他にもあんのかよ知らないぞ。
「お前の方が器用ですごいだろ。」
「器用って、褒められてる気がしないんだよな」
陽悟は俺の嫌味に気付いても上手に笑っている。
やはりすごく器用な奴だ。
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