ー3ー
「アニキ! アニキ!」
「うるっせえな! 毎日、毎日」
どうせタオルケット被っても、蒸し暑いだけで智也からは逃げられない。だから今日はタオルケットを吹っ飛ばして自分から起き上がってみた。
が、……暑い。
エアコン、おやすみとおはようのタイマー設定していたはずなんだが、この絶妙な蒸し暑さはなんだ? 寝過ぎたのか早起き過ぎたのか、それが目下最大の問題だ。
スマホで時間を確認しようとしたら、バタンと、勢いよくドアが開けられる。確認するまでもない。アホの子代表の智也だ。
まったく、今日も悩みのなさそうな顔をしているな、お前は!
有り余った元気の賜物なのか、俺の昔のタンクトップに、カーキ色の短パンをはいている。ああ、そういえば、昨日の夜、夏恒例のあの映画の再放送をやってたっけ。んで、折角なので智也もそういう格好にしたんだが、短髪の黒髪のせいで思ったよりも雰囲気出てる。
……興味本位でビー玉とかおはじきを齧らないように、一応、注意しとくか。
ってか、ここ最近のテレビは、海外ロケなんて出来やしないし、撮り溜めてたストックも尽きたのか、懐かしのアニメとかばっかりだしな。国内ロケも未だに不安定だ。一か所叩いたら、別の場所でまたコロナがピコピコ顔を出す。
未だに風邪が根絶されてないのに、風邪を起こすウィルスの一種であるコロナが暖かくなったら大丈夫とかテレビで言ってた御用学者は、どんだけおめでたい頭してるんだっつーな。
俺が起きていたからか、どっか拍子抜けしたような、もしくはきょとんとしたような顔になった智也は、その表情のまま告げた。
「かあさん、仕事行った」
智也は、なぜか自分の母親より十も年上の俺の母親もかあさんと呼ぶ。理由は……知らん。ってか、理由はないのかもしれん、アホの子だから。もっとも、最近ちょっと生意気になりつつあるけど。
「……お前、朝飯は?」
「食べたよ?」
いや、そんな無邪気な瞳で訊き返されても、従兄弟のお兄さんは困るぞ?
確かに昨日の夜に、御袋が出かけたら、コロッケ作って昼飯にするって決めたが、誰も寝起きでコロッケ作るなんて約束していない。
どんだけ楽しみにしていたのかは知らんが、俺には俺のペースってものがある。
のんびり惰眠をむさぼって、眠気が消えてもベッドでうだうだスマホゲームして、仕方なく起きて、ブランチ食ってから、それからようやくエンジンがかかってくるので、この腕白の相手をしてやる。
この俺の完璧な計画になんの不満があるというのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます