-2-
「アニキ、アニキ!」
家中にキンキンと、変声期の終わらないガキの声が高く響く。起こされるならせめて女の子に起こされたかった。美人で、出るとこ出てて、肌の露出が多ければ、
しかし、そんな俺のささやかな願いなんぞどこ吹く風と、礼儀知らずな男の闖入者は寝ている俺の上に乗っかって、揺さぶりながら更に大声を上げた。
「アニキが、女、女って、うるさいから、すごいの来たよ!」
あ、あん?
目を開ければ、夏の日差しが目を焼く。つか、今日も暑い。もうじき盆だったはずなのに、秋はいつ来るんだ。
かしましい蝉の声も鳴りやむ気配はない。
目を擦りながら上体を上げれば、胸の上に乗ってた従兄弟の智也が足の方へと転がってった。が、気にせずに伸びをする。
「ったく、人が寝てたってのになんだお前は、毎日毎日。しかも、夢の途中で」
嘆息しながら、智也が転がった先へと視線を向ける。ベッドの端の柵につかまりながら部屋の壁に足を這わせ、逆立ちの真似事して遊んでる従兄弟は、所謂、アホの子枠なんじゃないかと本気で心配になる。
子供っぽい黒目がちの目が俺を捉えれば――。
「なんの夢、見てたの? すっごいの?」
女の話はどこ行ったんだよ、この鳥頭。健全な男子の興味は、寝る時見る夢じゃなくて
「この夏の、クソ面倒臭い誰かさんの宿題に取り掛かった日の夢だ!」
と、叫んで我が一族秘伝の猫パンチの構えをシャーと、決める。智也は智也で、猫キックの姿勢で応戦の構えを見せていた。
そんな、別の意味での極限状態の中で、はじまりの日に思いを馳せる。
だいたいがクソコロナとそれを悪化させた
そんな中でも市民はしっかり――もとい、ちゃっかりしていたので、昔ながらの縁故主義で乗り切ろうという動きが生まれた。その結果、本家だからと、昔ながらのお屋敷でもない、ただの一戸建ての俺の家に親戚のガキが集まり始めた。
んで、子供世代の最年長が俺。つまり、俺が監督要員である以上、ここは俺のキングダムだ。手下どもが部屋の中でも
だからなのか、コロナ禍が落ち着いた……んだか落ち着いていないんだかよくわからない消化不良なまま迎えた最悪の夏休みにも、再び智也が来襲してしまった。
口は禍の元。後悔先に立たず。
しかし、来たものはしょうがない。
また春みたいに適当にからかってあしらうつもりでいたんだが、あの曽祖父さんの日記とスチウが全てを変えてしまった。
転生なんてせずとも、キッチンで日々繰り広げられる細やかな冒険。そこに足りないのは、女っけと色気だけ。
まったく、受験勉強頑張ったってのに、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます