幸か不幸か 7
夕べはぐっすりと眠る事が・・・出来る訳がなかった。
ラリーア。
前世で僕が初めて好きになった人で、僕の良き理解者で、結婚を誓い合った女性。
その彼女を僕は手放してしまった。邪竜神との戦いで命を落としたのは僕の失態だ。悔やんでも悔やみきれない。
けど、彼女には孫のアルーラがいた。
あの後みんながどうなったかは分からないけど、幸せな家族を持ってくれたみたいで良かったと思う。それが分かっただけでも転生した意味があったというものだ。
「それにしても、まさか300年程経っていたなんて」
彼女がラリーアだと名乗った時、年齢も話してくれた。312才らしい。見た目は20代後半か30才になったばかり位にしか見えないのだけど、これがエルフ族特有みたいだ。
当時、たしかラリーアが16才だったから300年程たった事になる。
「300年、またラリーアと会えるなんて奇跡だな。神様に感謝を・・・・」
いや待てよ? その神様のせいで邪竜神が僕たちの世界に来たんじゃなかったか?
『あははは、覚えていた? あの時はごめんね!』
突然、女性の声が頭に響くほど強く聞こえてきたので反射的に手で耳を塞いでいた。
『ビックリした? ごめんね。ちょっと調整が上手く出来なくてね』
え? 耳を塞いでいるよな? なんで聞こえてくるんだ?
『それはですね、私があなたの頭の中に直接念を送って話しかけているからですう』
あ、なんか話し方が軽いなあ、って今、僕喋ってないぞ?
『あ、そこはね、喋らないでも大丈夫! 頭の中で喋れば聞こえるから! そうしないと端からみたら独り言をずっと喋っている変人に見えるからね。その配慮だよ?』
いったいなんだ? 僕おかしくなったのか?
『大丈夫。君はまともだよ。私はアマラス、神様だよ~』
・・・・いえ、間に合っています。
『あ~! 押し売りを一刀両断に断る主婦みたいな事言わないで!』
何ですかそれ? 訳の分からない事言わないでください。あなたは何者なんです? 悪魔ですか? 魔導師ですか?
『だから、神様だって言っているじゃない! こんな美しい人間なんか居ないわよ!』
いえ、声しかしませんから美しいかどうかなんてわかりませんよ?
『よ~し! 分かった! 今からそっちに降りてやるわよ! 地上界に降臨なんて滅多に無いんだからね! 驚かないでよ!』
すると、僕が座っているベッドの先、僕から見たら足先の方に突然光の柱が現れたのでビックリした。
その光の柱がポン!とかいって弾けたと思ったら、中から両手を上へと広げ、片足を少し曲げて変なポーズで現れたのは、薄い殆ど透き通っている白い布を体に申し訳程度に纏わせている確かに超が付くだろう美女が佇み、僕の方に笑顔を向けていた。
「色情魔? 変態? サキュバス?」
「誰が! サキュバスですか! 女神! 女神のアマラスよ!!」
肩で息をしてハア、ハア、言いながら興奮している。
「・・・淫乱なお姉さん?」
「ちっがーーーう!!」
面白い女神様だな。
「あ、あなたわざとね? わざとでしょ?!」
「まあ、あなたのせいで人類は滅びかけたみたいですし、そのせいで僕も死んでしまったのですからこれくらい、大目にみてください」
「・・・やっぱりわざとだったのね・・」
これくらいでやめとこう。さすがに可哀想になってきた。
「まぁ良いわ。私だってあなた達に迷惑かけたな、とは思っているのよ? 特にグルフェル君には、悪い事したと思っているんだからね」
そうなんだ。てっきり、ごめん、ごめん、テヘペロ! とかいって有耶無耶にするのかと思った。
「そんな無神経な女神じゃないわよ、私?」
「ごめんなさい。僕が言い過ぎました。色々とあって混乱していたみたいです」
僕は、素直に悪い事をしたなと思ったので、ベッドから降りて、改めてご挨拶しようと体を動かそうとしたのだけど、体を支える腕がプルプルと振るえるし、足もあまり言う事を聞かないので、フラッと倒れそうになりベッドから落ちそうになってしまった。
「な! 何しているの!」
目にも止まらぬ、とはこういう事をいうのだろう。女神様は到底、人では出来ないだろうくらいの俊敏な動きで、落ちそうになっていた僕を優しく支えてくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます