幸か不幸か 6
「わかったわ! 名前は私とお婆様で良い名前を考えてあげる!」
「任せておきなさい! りっぱな名前を考えてあげるわ!」
「は、はあ、そのお願いします・・」
二人とも握りこぶしを突き上げて何か使命感に燃えておられる。
「それじゃあ、君の名前は後で考えるとして、先に私達の名前を教えてあげるね?」
そう言えばお二人の名前を聞いてなかった。
「まずは私ね」
美少女エルフさんが前に出て来た。
「私は、エルフの王族、フューナス王家、第一王女のアルーラ・ミレ・フューナスです!」
「・・・・い、今なんと、仰いました?」
「え? アルーラよ?」
「いえ、そうじゃなくて、ですね、王家がどうとか?」
「うん! 私、一応お姫様ね。こう見えて10才よ」
どや顔で、大きな胸を突き出して威張っておられる・・・・
いや、いや、いや、いや、いや、おかしくないか? いや、良いのか? お姫様だからどや顔でも? じゃなくて!
「な、なんで! そんなに、軽く言われるのですか!?」
「そう? ちょっと王族らしく威張って言ってみたんだけど? おかしかった?」
「おかしいですよ! 王族ですよ? お姫様ですよ?! エルフ王家の中の王家、エルフの祖と言われるフューナス様の名を継ぐ由緒ある王家のしかも第一王女なんですよ?! もっとこう威厳というかお淑やかさというか、こうもっと姫様としての振る舞いといいますか・・・」
「結構、君ってズゲズゲ言うわね? でも好きよそう言う裏表ないのって」
しまった! つい意表をつかれてしまって思ったままの事を喋ってしまった!
「す、すみません! 平民の僕なんかが!」
前世ならいざ知らず、今の僕は普人族の平民のしかもたぶん最下層の住人だったはず。そんな身分の僕がこんな待遇に、あまつさえ姫様に無礼な口をきいてしまった! ぜったいに不敬罪で首が飛ぶ!
「君!」
お婆様といわれている美人のエルフさんが、怒鳴ってこられた。
これは本格的に処罰だな、死刑だな、打ち首だな。
「良く言ってくれました!」
「は?」
「私が言うのもなんですが、このアルーラは少し自由奔放に育ち過ぎで、今一つ王家としての自覚が足らないのです。ですからあなたの様にビシッと言ってくれる方が近くにいると大変助かるの! やっぱり一緒に暮らす事になって良かったわ!」
「いえ、いえ、普通逆じゃないですか? 本来なら不敬罪で打ち首とか?」
「「そんな事、しませんよ?」」
二人でハモって断言されました。
「とにかく宜しくね?」
そんな屈託のない笑顔でいわれたら今更いやとは言えない気がする。逆に断ったら酷い目にあわされるかもしれない・・・
「はい、よろしくお願いします。」
僕は少し混乱する頭をなんとか冷静に戻そうとアルーラ姫様のことをもう一度観察してみた。
たしか、10才と言われていたよな?
・・・・10才、うん確かに身長はそれぐらいなんだけど、胸は20才くらいに見える。あ、でも大人でも無い人は無いからな? 別に問題ないのか? いや、年齢も身長もそれなりなのに、胸だけあんなに成長されて物凄く違和感が・・・・そう言えばエルフ族って成長遅かったか? 見た目が大人の姿になるのが40才から50才って前世で聞いた事がある。
長命種特有の現象だ。
でも、それなら、あの胸の大きさは説明がつきません。
さっきあれに窒息死させられそうになったんだよね。
危険なオッパイだという事はわかった。
「次は私の番ね?」
僕が黙ってしまっていたので、美人のエルフさんの方が僕の目の前に腰かけて来た。
ちょっと近いです。
「先ずは、この家は私が別宅として使っているの。今は王族からは離れて暮らしているわ」
「そう、なんですね?」
ん? 待てよ。姫様のお婆様という事は、先代の女王様ということか?!
つまり、ラリーアの子孫ということか。そう言われればラリーアが歳をとって妖艶さが出たらこんな美人になっていたんだろうな?
僕が前世で好きになった人で、僕の才能を最初に見出していつも僕を見守ってくれた大切な人、ラリーア・ミレ・フューナス。
「改めて私のお家にようこそ! これから当分は三人で暮らす事になると思うから遠慮なんかしないでよ?」
「は、はい。極力努力します」
「ん、よろしい。私は、フューナス王家先代の女王を務めた、ラリーア・ミレ・フューナスと言います」
え? い、今なんて・・・・・・・
「どうしたの? 君?」
僕は、彼女の顔から視線を外す事が出来なかった。
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