幸か不幸か 8
「あ、良い匂い・・」
倒れ込んだ先にはふくよかな双丘の谷間が存在し、そのおかげで全く衝撃もなく抱えられ大怪我をせずにすんだ。
「あ、ありゅがほうございまひゅ」
アルーラよりでかい胸に沈む僕の顔。おかげで喋りづらかった。
「どういたしまして。それよりあなたは衰弱しきってまだ真面に体動かせる状態じゃないんだからね。大人しく寝てなさい!」
「え、でも・・」
「寝ときなさい!!」
「・はい!・・」
女神様に言われるままに、僕はベッドへとゆっくりと移動して布団の中に入らせてもらった。
「ところで、女神様」
「なあに?」
「一応、こう見えても前世の記憶があるので、精神年齢的には15才の成人男性なんで、その恰好は聊かなものかと?」
「え? そうお? これが一番綺麗に見えるのよ? だってこの抜群のプロポーションが私の魅力だもの! 本当なら素っ裸で・」
「いいから何か着てください!」
僕が思いっきり睨むと、女神様が渋々何処からともなく白い服を取り出して羽織ってくれました。
外套かな? でも前と後ろに垂らすだけの簡易的な外套みたいで、横からはチラチラと見えてはいけない物が見えそうだったりするので返っていやらしい。
この女神やっぱ露出狂だろ?
「まぁ良いです。それより何か御用があったのでは?」
「あ! そうそう。グルフェル君に伝えときたい事があってね」
僕に? 直接? 何か神様に怒られる様なことをしたかな?
「違う、違う! 君の転生の件にからんだ事だよ」
「え? 転生の?」
「そう、何を隠そう、君を転生させたのは私だからね!」
偉そうに胸を仰け反らせ、ウィンクしてくる女神様。鼻が高くなっていますよ?
「あ、ありがとうございます。でも何故なんですか?」
取りあえず、面倒くさくなりそうなので、初めに礼を言ってくことにした。
「そんなの、君への謝罪の気持ちだよ。自信の命を顧みず邪神龍を討伐してくれたことへのね」
「そうだったんですか?」
「そうだよ。でも魂の定着には時間がかかるし、順番待ちだからね、本当ならあと100年は転生できなかったんだよ?」
フ、フン! とか言って自慢されている。
まぁ、そのあたりは専門外だしそうなんだろうと思っておくことにしたのだが、でも何故そんなに早くしなければならなかったのだろう?
「うん、それはね君に会わせたかったんだ。ラリーアとね。まぁ神の罪滅ぼしだと思っておいてちょうだい」
そうか、これは女神アマラス様の計略なのか。でも長命種のエルフなら別段、今でなくても良かったと思うんだけど?
「あのう、僕の転生を早めたのと、前世の記憶が残っているのは、もしかして何かあるのですか?」
僕がそう訪ねると、少し視線を落とす女神様。
「実はね、ラリーアの寿命が余り残されていないのよ」
「・・・・・・・・」
「あれ? あまり驚かないのね?」
僕がもう少し驚くのだと思っていたらしく、拍子抜けな顔をする女神様。
「いえ、エルフ族の寿命の事は前世の記憶がある僕は知っていますからね。300才を越えるラリーアはかなり長生きの方だと分かっていますから・・・」
「そう、なら私がとやかく言うことは無いわね。転生の事を話すもよし、話さないのもグルフェル君に任せるわ」
「はい・・」
僕は女神様の言葉を噛み締め、これからどうするか決めないといけないと、思っていた。
「それともう一つあってね。これはお願いかしら?」
「何でしょうか?」
「えっとね、じつはこの世界に龍を崇める宗教が広まり始めているの」
「! 龍?」
「そう、グルフェル君達が倒した邪神龍を崇拝する宗教団体ね」
そんな。あの驚異を世界に振り撒き、人類を滅亡へと誘う邪神の龍だぞ? なんでそんなものを崇拝する事ができるんだ?
「人の世は、よく分からないけど平和が続くと、邪な考えを持つ者が時々現れるからね。ただ今のところどうって事はないと思うの。ラリーアを初めとした今の世代の聖戦姫を中心として目を光らせているからね」
「なるほど、彼女達は今でも世界の為に頑張っているんだ。でも今の世代と言うことは?」
「そうよ、あなたの知る殆どの聖戦姫は亡くなっているからね」
「・・・・そうですか」
まあ、300年も経ってれば、当たり前の事だろうけど、やっぱり心が苦しくなる。
「でだ、グルフェル君には、前世での力を取り戻しておいてほしいんだ」
「・・つまり今後邪神龍の復活もありえると? 言うことですか」
「たぶん、大丈夫だと思うけど、念の為だよ」
微笑みながら、手をパタパタと振って、そう問題にはならないだろうと言われる。
「でも気になるから僕に伝えたいんですよね?」
それには言葉は無かったが、否定もしない女神様。
はあ、第二の人生、普通な生活がしたいんだけどなあ。まあここで悩んでいても仕方ない。そうならない可能性の方が高いようだし、それまでは自由に生活させてもらおう。
「分かりました。何か有った時は頑張ってみますけど、そうでないなら普通の一男性として人生を歩ませてもらいますよ?」
「うん、それで良いよ。一応言質もらったからね?」
満足そうな女神様。喜んでもらえるなら良しとしよう。
「あ! それでね。グルフェル君には私の加護をあげたからね」
「加護ですか?」
「そう、私の加護は自己中心よ!」
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