第1話 転移
目の前で起きた出来事に、しゃけは口をパクパクとさせて思わず呟いた。
「バカな……」
それを聞いたニグルムは彼の発した言葉に反応し、しょんぼりとした様子で下を向いて言った。
「も……申し訳ございませんしゃけ様。言葉を慎みます」
ありえない、そんなことはありえないのだ。
NPCが自我を持ったように受け答えを行い、さらには口をパクパクと動かしている。
その行動に驚きを隠せないしゃけは慌てながらも、悲しむニグルムの発言を否定しようとした。
「いや……そんな……それは気にしなくていいけど……えぇ?」
知らない間にアップデートがあったのだろうかと考えながら右手で口元を隠す。
しかし、もしアップデートがあるならそもそもゲームを始める前にアップデートファイルのインストールを行わなければならない。
なのでその可能性は限りなく低いのだ。
「おやおやおや、本当にそうなのでしょうかねぇ? お疲れのご様子ですが……何はともあれ、無理をなされるのはいけませんよ」
そう言ってしゃけに声をかけたNPCは人間ではなかった。
黄色く濡れたレインコートを羽織り、その下から無数に生えた触手で体を支えて胴体は宙に浮いているかのごとくゆらゆらと上下する。
顔は太陽の光が当たっているのにも関わらず、真っ黒で何も見えない。まるで永遠の深淵が続いてるかのようだ。
それはギルドメンバーの一人、だるタマが生み出したハスターという種族。9階層の担当である。
NPCの名はデザベルだ。
「いやあの……ゴホン! な、何もないから心配しないでくれデザベル」
NPC相手に丁寧に接する必要はあまりないと考え言い方を変えた。
だが今はそんなことどうだっていい。
しゃけにとってはそんなことよりも、目の前でうねうねと動くリアリティのある触手の方が重要だった。
このVRMMOのNPCには、会話をする機能、口を動かす、触手を動かすモーションは存在しないハズだ。
しかし現実はどうだろうか。
目の前のNPCはしゃけの発言に反応し、さらには体調の心配までした。
どう考えてもこの状況はありえない。
しゃけは慌てながらも右手の平を天井に向ける。
本来ならば3秒間、手の平を上に向けることによってメニュー画面が表示されるのだが……。
「メニュー画面が表示されない……」
何度やっても宙を片手が回るだけで、それ以外の変化は一向に起こらない。
その間、NPC達はしゃけの奇行に頭上に「?」を思い浮かべながらもじっと見つめていた。
一体どういうことなのだろうかと、しゃけはメニューを開くのを諦めて思考に浸る。
プレイヤーが作ったAIを搭載できるMODをギルドメンバーの誰かが入れたのだろうか。いやしかし、いくら優秀なAIだと言ってもここまでリアルな動きや反応はできないだろう。
そうなると、この目の前の出来事は一体どういうことなのだろうか。
夢にしてはやけに記憶がハッキリとしているし、11時59分99秒の時点はまでVRMMOを楽しんでいたことに間違いはないハズだ。
するとどうなるかというと、12時を過ぎた時点でこの世界はただのVRMMOではなく現実世界へ変わったという可能性……つまり、俗に言う異世界へ転移をしてしまったことになる。
その考えを証明するべく、実験を行うことにした。
しゃけは右手を下へおろすと、目の前で起こっている出来事を全て脳内で整理し、その結論を出すために胸ポケットから一本の万年筆を取り出した。
万年筆は紅色の外装をしており、光に反射して赤色の光を放つ。
見た目だけなら高級感が漂うが、実はそこまで値段も張っておらずしゃけの倉庫の中にまだ30本ほど転がっていた。
つまりいくらでもかえがきくということになる。
「……よし」
手の平の上でぎゅっと万年筆を握ると、手の中で真っ二つに折った。
「!?」
手の中からインクがこぼれ、ぽたりと音を立てて地面に落ちた。
それを見ていた一部のNPCは、何故そのような行動を起こしたのか理解できずに目を丸くする。
この万年筆に何の意味があったのか?
ブレイブザストーリーには、ギルドマスターだけに権限のある城の設定の一つに【破壊機能】という項目がある。
このシステムは元々、ブレイブザストーリーにリアリティを出すために実装されていたものだった。
物にはそれぞれ耐久力という数値が存在し、物を掴んだり使いこむと耐久力を消耗する。そしてある一定の限界値を与えてしまうと壊れてしまうというもだ。
振れたものを腐食させる種族や力があるオークなど、NPCやプレイヤーに設定されているステータスによって耐久力の消耗が大きく変わる。
このシステムはVRMMOが始まった当初は斬新なシステムだと評価された。
しかし、アップデートを重ねていけば重ねていくほどレベルの上限が解放し、それに伴ってレベルが上がれば能力が強化されていくわけで……最終的には、自動で動くように設定されていたNPCが家具にぶつかるだけで音を立てて爆発四散、壁に当たるだけで穴が空くようになってしまった。
大量のNPCを管理する大御所ギルドであればあるほど修理にも時間とお金がかかるといった悪夢のような状況に、流石にどうにかしてほしいと多くのユーザーが運営の窓口に問い合わせた結果オフにできる機能が追加されたのだ。
このヘル・ボトムでは絶対に間違えてオンにしないように、変更するにはパスワードが必須という高セキュリティの状態で常にオフにしていた。なので万年筆が壊れるのはありえない。
つまりここがVRMMOの世界ではない、ということを知ることができたのだ。
ポケットから取り出した赤い刺繡が縫われた白いハンカチで、右手に付いたインクをある程度ふき取る。
片手を水平に上げ、目の前で跪くNPCを見据えて言った。
「あー……その……リッパー、今からお前は猟友会と共にこの城の半径20キロメートル周囲の情報を隠密行動で集めてきてくれ」
「かしこまりました」
「えーっと……でだ。第1階層、第2階層、第3階層の担当はトラップとモンスターのリスポーンパッドが機能しているのかの点検。それ以外の階層の担当者は……あー……自分が担当している階層に異常がないかを調べてくれ。もし何かあった場合はすぐに俺に知らせてくれ。はい、じゃあ解散!」
しかし、突然のしゃけの命令にNPC達は驚きを隠せず、互いに顔を見合わせてどうしたものかと黙り込んだ。
それもそのハズ、突然万年筆を折ったかと思えば命令を下すなんて他者から見れば奇行でしかないのだ。
まるで一発芸を披露した後のような視線に、しゃけの胃はストレスでキリキリと痛みだす。
どうにかしてこの状況を打開したいが、だからと言って公に理由を説明することはできない。
NPCの反応を見る限り、自分達が話すことが当たり前のようにふるまっている。
そんな相手に「お前らNPCじゃねぇの?」なんて聞けばさらに状況がこじれるだけだ。
しゃけは心の中で何度も訴えかけた。
――頼む。今は何も言わずにとりあえず行ってくれ!
「――聞こえてないのかしら」
堕天使であるニグルムの言葉が、静かな部屋に響き渡る。
しゃけはまさかすぎる人物からの助け舟に驚くほかなかった。
「しゃけ様は階層の管理者である私達に命令を下したわ。たとえそれがどのような命令であっても、私達はそれを遂行するだけ。……分かっているでしょう?」
言葉と表情に一切の戸惑いもなく、まるで鋭いナイフかのように言い放つ。
それがどうやらNPCの心に刺さったのだろうか、立ち上がってから一礼すると、何も言わずに外へと出ていった。
――いや……そこまで言う必要はなかったんだけどな。
ニグルムの言葉の重さに違和感を感じながらも、とりあえず発狂は何とか防げたのでそれ以上は考えなかった。
とりあえず一難は去ったと言いたい所だが――。
ニグルムは何も言わずにしゃけの方へと目をやると、ただただじっと見つめ始めたのだ。
しゃけとニグルムの目と目が合う。
「……」
「……」
しかし、ニグルムは何か言おうとするわけでもない。
しゃけは緊張で何も言えず、只々無言で時間だけが経過していく。
――き……気まずい。
何を話せばばいいのかわからない。
というか、そもそも何故しゃけを見つめているのだろうか。しかしその理由すらもわからない。
平静を保つために「ここはゲームの中だ」と何度も自分自身に言い聞かせるが、現実味のある目の前の世界がそれを全力で否定してくる。
それが原因でしゃけの心はここを現実世界だと認識してしまっており、ゲームの中のしゃけではなく、現実世界のコミュ障陰キャとスイッチが切り替わっていしまっていた。
しかしこのまま黙って見つめ合うわけにもいかない。
――俺はギルドマスターだ俺はギルドマスターだ……よし。
そう自分に言い聞かせ、大きく息を吸って吐く。
覚悟を決めてニグルムを見据える。
彼女の立ち振る舞いは、まさしく清楚と呼ぶに相応しいものだった。
紫色の済んだ瞳がまるでしゃけ自身の弱い心を見透かしているように想像してしまう。しかし、ここで足踏みしていても何も始まらない。
ニグルムのことをより知るためにもと覚悟を決めて、勇気を出して声をかけた。
「あっ、あの――」
「お美しい……」
遮るかのように放たれたニグルムの発言は、しゃけを困惑させるには十分な威力を誇っていた。
美しいって何?
「頭に備えた神々しい二本の角。屈強なお身体だというのに清らと美しさを兼ね備えている『完璧』に最も近いお方……素晴らしい、素晴らしいですわ! 流石は我らがギルドマスターである崇高なお方!」
「あの……ちょっと……」
話しかけてみるものの、完全に自分の世界に入り込んでいるようだ。
身体から突き出ている部位を色気を感じるほどにくねらせ、その度に白いドレスを揺らす。いつものしゃけならばそれに性的興奮を感じるだろうが、この状況では興奮するどころか少し引いていた。
「私としゃけ様だけの空間……この空間が永遠に続けばいいのに……」
「あの……すまない……聞こえている?」
「はいしゃけ様はぁはぁ! 何なりとお申し付けください!」
「うぉ!?」
「はぁはぁしゃけ様……しゃけ様……!」
突然体を近付け、なすりつけてくるニグルムにしゃけは驚きを隠せなかった。
生温かい肌が身を包む心地良い感覚に、意識が持っていかれそうになる。
まるで成人向け雑誌に登場するヒロインの如く、ハート模様を浮かべたようなとろけた目、赤面して息を切らすその姿にしゃけは確信する。
――こいつ……やべぇ奴だ。
どうにかして今の状況を冷静に考えると時間を確保したいが、かといってニグルムを興奮させてこれ以上面倒なことになるのは御免だ。
何故このような性格なのか、そもそも現状がどうなっているかと疑問は尽きないが、とりあえずどうにかして一人になれる環境を作らねば色々な意味で精神が持たない。
思案する最中、しゃけはあることを思いついた。
「あー……その、ニグルム、君に頼みたいことがあるんだ」
「ああ、ついに……優しくしてくださいね……!」
ニグルムはしゃけの右手を両手で優しく包むと、豊満な双丘の隙間へと押し込む。
テンションの違いが未だになれないが、今は触れない方が良いだろう。
「いやそういうのじゃなくて……実は先日私が大切にしていたペンダントを城の中でなくしてしまってな、それを君に見つけてほしいんだ」
「しゃけ様のペンダントの捜索!? そんな大仕事を私に任せてよろしいのですか!?」
そこまで大仕事じゃないだろと内心突っ込むも、とりあえずはニグルムと同じテンションで話す。
「ああ。これはニグルム、君のことを信用しているからこそ与える重大な任務だ」
「重大な任務……!」
「勿論、完遂した暁には……ほ、褒美をやろう」
「ほ……褒美!?」
「あ、あぁうん。そうだ、褒美だ!」
「しゃけ様のご褒美しゃけ様のご褒美しゃけ様のご褒美……! 承知いたしました。必ずやペンダントを見つけて見せます!」
ニグルムは一礼をすると、まるで疾風のごとく廊下へと出ていった。
「……なんだったんだ今の」
実はペンダントなどは存在せず、一人になるためには仕方がなかったとはいえ噓を付いたことに心を痛めるが、同時にとりあえず目の前の問題どうにかこなすことができたと安堵する。
とりあえず周囲が静かになったので、取り敢えず今分かっていることを頭の中で整理した。
まず、ここがしゃけ自身が知っている世界ではない。
破壊機能が勝手に外れていたように、VRMMOとは似て非なる別世界だ。何が起こるかわからないからこそ、さらに情報を集めなければならない。
しかし、一体何をどうすればいいのだろうか。
こんなことを今まで体験したことがなかったので、この状況で何をどうすればいいのかわからない。
最初に何から手を付けるべきなのだろうか。
「しゃけ様、思し召しの御供としてカルティア茶でもいかがでしょうか?」
「おぉありがとう。じゃあ後でそこのテーブルの上にでも置いとい……え?」
聞き覚えのない声が背後から聞こえた。
後ろへと目をやる。
壁際で微動だにせず、背筋を伸ばしてじっと虚空を見つめるメイド――ニホンウサギがいた。
「うぇぇ!? い、いつの間にいたの!?」
「しゃけ様に命令されてずっとここで立っていました」
「そ……そうか……」
さっきの光景をすべて見られていたと思うと途端に恥ずかしくなってくる。
ニグルムとしゃけの絡みを見ていて全く動じず、表情一つ変えずにいられるなんてことが可能なのだろうか。
もししゃけがニホンウサギの立場なら、最初は黙って見ていても途中から発狂してベランダから飛び降りていただろう。
そうだ。
ニホンウサギがそういう性格だったからこそ、しゃけは気付くことができなかった。
ここでしゃけは一つのことが気になった。
「……なあ、えっと……ニホンウサギ。少しいいか?」
「はい。何なりとお申し付けくださいませ」
メイドは耳をぴょこぴょこさせながらしゃけへと近づくと、無駄な動きが1つもない洗礼されたメイドらしい礼を行う。
万年筆を片手で折った時、このニホンウサギは顔色を変えずにじっとしゃけを見つめていたことを思い出した。
そして現時点でも、先程の光景を見ておきながら全く動じていない。
その光景が疑問へと繋がった。
万年筆を潰した時、NPCの反応は全員違うものであった。
同じモーションではない。
傾き、表情、驚いた直後の動き全てがばらついている。
それは今まで自己が存在しかったNPC達に、新しく個々の自己が生まれているとおり、それに伴って反応が変わっているということになる。
ではそもそも、NPC達の個々の性格はどこから生まれたのだろうか?
その疑問に一つだけ心当たりがあった。
このゲームにはTRPGの要素を多く取り込んでおり、その一つにキャラクターシートというものが存在した。
種族、性別は勿論のこと、性格や生い立ちすらも細かく設定できるのでロールプレイングを行いたいプレイヤーにとってとても役立つ機能だ。
一時期、このギルドでは突然ロールプレイングが流行ったことがある。
じゃむサンというTRPGを好む外国人プレイヤーがメンバーに布教し、それに憧れたしゃけ含むギルドメンバー達は、今までスッカラカンだったキャラクターシートに設定を書き込んだり言葉遣いを変えた時期があった。
ただギルドに所属する全てのNPCの設定を書いたと同時に燃え尽きてしまい、その後はいつも通りの会話に戻ってしまったわけだが。
ともかく、しゃけはキャラクターシートに記載された設定が、ここにいるNPC達の自己と関係しているのではないかと睨んでいたのだ。
事実、しゃけが覚えている範囲では、ニホンウサギの性格の欄にこう書かれていた。
物静かで全く動じない。
感情がほぼゼロに等しく、それにより遂行できない任務はない。
主の命令は絶対だと考えており、必ず任務を優先する。
それが本当に目の前にいる元NPCと同じなのかを確かめるため、女性がされたら激しく動揺するであろう行為を実行した。
「……すまん」
しゃけはニホンウサギの胸目掛けて手を突っ込んだ。
片手に納まりきらないそれを鷲掴み、指の隙間からはきめ細やか肌がスライムのようにはみ出る。そして手の中には生命の象徴とも言える優しく心地の良い熱を感じた。
そして確信する。
このNPCは間違いなく生きていると。
触っただけだというのにあまりの気持ちよさに意識が持っていかれそうになるが、それに抗うかのように何度も指を動かす。
それから約10秒ほど時間が経過した。
本来であれば蔑んだような目で見られるだろうが、それらしい反応はないどころか、しゃけを見つめながら平然と口を開いた。
「しゃけ様。どうされましたか?」
「えへっ!? あ、ああ……その……も、揉んだら気持ちよさそうだなと思って……」
「左様でございますか」
「あ、ああ……左様だということだ」
始めて女性の胸を触った彼にとってその感覚は新鮮で、口が回らないほど動揺しながらも手を止めることはく、何も考えぬまま右手を動かし続ける。
それから数分後。
何のために触っているのかを忘れて揉んでいた。
「しゃけ様。揉みごこちはいかがでしょうか?」
「ああ、最高だ……ってそうじゃなくてだな! す……すまない!」
ニホンウサギの声で我を取り戻し、さっと手を引いた。
揉んでいる間の記憶を全く覚えておらず、そこまで揉むことに夢中になっていたのかと自らの情けなさに片手で頭を抑えた。
「すまない……その、揉み心地がよくてつい……」
「しゃけ様が謝る必要などございません。私でよければまたいつでもお申し付けください」
「あ……ああ……」
自分から触ってみたものの、それを咎めるどころか表情変えずに容認するという言動に困惑するほかない。
しかし、これでNPCの性格がキャラクターシートの性格から形成さているということに気付くことができた。
確認したのはまだ一体だけなので確実とは言えないが、それでもとりあえずの目標ができたことは、異世界に来て何をすればいいのか分からないしゃけにとってもありがたいことだった。
「ニホンウサギ。君は確かメイドリーダー……だったよな?」
「左様でございます」
左様という聞きなれない言葉に違和感しか感じない。
しかし、ここはしゃけ自身がいた世界とは違いファンタジーな世界だ。一々こんなことを気にしていてはいつまで経っても慣れることはない。
そう自分に言い聞かせながら口を開いた。
「では至急で頼みたいんだが、アビスの全員が一人もかけていないか確認してきてくれないか」
「かしこまりました」
ニホンウサギは頭を下げると、表情一つ変えずに扉の外へと出ていった。
誰も部屋にいなくなったことを確認すると、真っすぐだった背筋を曲げながらベランダの手摺りへともたれかかった。
とりあえずこの世界の知識を1つ得られたが、これだけではまだまだ足りない。
ひとまずNPCの性格についてさらなる追求が必要だと感じたしゃけは、キャラクターシートに特徴的なことが書かれていたNPCを思い返す。
一人、心当たりがある。
「アイツならちょっと話するだけでどうなのか分かるな。けど……できれば会いたくないなぁ……」
ため息交じりにそう呟くが、だからと言ってここでじっとして良い理由はない。
思いついたことを取り敢えず実行するべきだと自分に言い聞かせ、両手で手すりを押して立ち上がる。
「……行くか」
両足に履いた靴の底にある、ダマスカス鋼を鳴らしながら扉へと歩んだ。
ディバイン・ブレイズ ~元中間管理職の俺が異世界征服を目指す~ @askn
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