13「対決、略奪の魔王(1)」

 俺も、既に抜いていたクラウで応戦する。剣と剣がぶつかり合う。


「その剣……見た目は変わってるけど、七魔装ね」

「だったら、どうなんだ?」

「もらうわ、アンタを殺してね!」


引き続き、剣の打ち合いが続く。


《彼女の心が乱れてます。いい作戦でしたね。これで差は埋められます》


漆黒騎士の鎧は七魔装がそろった事で、連動して強化されている。

それは、コピーである白銀騎士も同じこと。

ただ、それでも略奪の魔王には、まだ劣っている。


 クラウが言うには、俺が彼女の心を乱した事で、

冷静な戦いができず、差が埋まり互角の戦いになりそうだという事で、

クラウは、それが俺の作戦と思ったようだが、

実際は、言いたい事をぶちまけたに過ぎない。

だから作戦と言うには、おこがましかった。


 とはいえ皮肉にも、そのおかげで、今は互角になっている。


(よし!このままいけば……)


と思っていたが、


「調子に乗るんじゃないわよ!」


と言って、


「ファイアロー!」


炎でできた矢のような物を大量にはなって来た。

彼女の怒りを反映しているようで、雨の様に俺に襲い掛かれる。


 俺は避けたり、剣で弾いたりしていたが、一発ほど肩に当たり


「熱っ!」


鎧越しだったが 、滅茶苦茶な熱さだった。

一応自動調整が働き、瞬時に「修復」が働いたが、

それでもヒリヒリが残る。


(自動調整が無かったら、即死クラスの攻撃なんだろう。

さすが、三大魔王に数えられるだけはあるわけか)


もちろんこの攻撃も「略奪」で得た物なんだろうが。


 ただ頭に血が上っているからか、どんどん矢の本数は増えていく。

しかも、威力も上がってきているようで、 地面や壁に当たるたびに、

爆発が起きるようになってきた。

それでも地面や壁は丈夫で、壊れる気配はない。


 俺は武器をイズミのシールドモードに切り替えた。

そして魔王の攻撃を防御し、そしてある程度ダメージを蓄積させた後、

跳ね返す光弾として跳ね返した。

攻撃を、いくつかは回避したが、何発かは被弾して


「キャアアアアアアア!」


と悲鳴を上げて怯んだ。ここで、俺はすかさず追撃としたかったが、


「………」


彼女は、鎧は来ていなくて、どこかの探検家をような格好しているが、

怯む彼女は、か弱く見えて追撃ができず。


 そして彼女は、槍を召喚して、


「このぉ~!」


と涙目で声をあげながら襲って来た。


《彼女は、見た目を利用しているわけでは無いようですが》


何だかズルく思えた。


 そして、彼女の振るう槍を避けつつも、


(仕方ない使うか)


武器をミニアに切り替えた。向こうも槍だから、こっちも槍だが、


〔久しぶりだから、興奮しちゃうわぁ~〕


そして振るうたびに、この場では俺にしか聞こえない喘ぎ声をあげるが、

堪えながら槍を振るう。。


 互いの槍がぶつかり合い火花が散る。

「習得」により得ている槍術で応戦していく、

向こうも「略奪」で槍術を得ているのだろうが、

感情任せで力いっぱい振ってくるだけなので、

こっちが冷静に対応できれば有利なのだが、ミニアが喘ぎ声をあげるので、

気が散り、それが「習得」にも影響が出て、結局、互角の戦いになる。


 そして彼女が、


「レッドランシング!」


以前、シュウヴィオが使って来た高速で何度も槍を突く奥義だ。

こっちも自然と


「百襲突!」


同様の奥義で応戦し、互いに激しくぶつかる。


 そしてここからは奥義の打ち合いとなる。


「サンダーランシング!」


雷を纏った一撃、


「雷神突!」


こっちも同様に奥義で応戦、周囲に火花が飛び散る。

しばしその状況が続いた後、


「ファイアランシング」


炎の槍による連続突き こちらも同様の奥義で応戦。


「インヘル・スティング!」


技はぶつかり会い、今度は炎がまき散らされる。


 周囲が炎の包まれる中、


(次は何が来る?)


と槍を構えていると、急に彼女は、槍を捨て手甲を装備した。

そしてこっちの槍を避けながら、一気に接近し、


「が……」


腹に拳を叩き込まれた。鎧越しだが、こいつもかなり痛い。

どうにかこらえながらも、槍を手にしたまま、

地面を蹴って間合いを取った。


 打撃だと「修復」は機能しにくいが、今回は機能したので、

相当なダメージだったんだろう。でも痛みはまだ残っている。

そして彼女は、相変わらず涙目で拳を振り上げ襲ってくる。

一度、間合いを取りつつも、相手に合わせて武器を夜叉に切り替えた。


〈ついに我の出番が来たか、わが主よ。今こそ修行の成果を見せる時ぞ〉


夢の中での修業が、どこまでの物かはわからないが、

ただ、フレイと同じく、他の武器の時よりも、「習得」を、

うまく使いこなせているような気がするが、

とにかくと徒手空拳で、応戦する。


 相手の、怒りで満ちた猛攻を避けつつ、時に拳や、蹴りがぶつかり合う。

魔王は頭に血が上っているからか、

ひたすら攻撃ばかりで、こっちが攻撃を打ち込める隙はあった。


〈どうした主よ?なぜ攻撃をしない〉


武器がぶつかり合っている時はまだよかったが、

手甲を装着しているとはいえ素手で、しかも可愛い女の子、しかも涙目。

そんな子に対し、襲ってきているとはいえ、手を上げるのはさすがに出来ない。


 その後も、素手による攻撃が続いていく、


「バスターガンズ!」


とジークと同じ技を使いだした。


(エンプマーシャルも使えるのか、こいつも誰かから略奪したものなんだろうな)


と思ったものの、後に知るが、これは結界下の中でも使えるらしく、

「略奪」を使わず、彼女自身が修行をして身に着けたものと言う。


 彼女の奥義に対して、最初の一撃は回避したが、あの時のルリさんのように、


「剛煌弾!」


と気弾を撃っていて、後から撃ってきた気弾を撃ち消し、

この後は気弾の撃ちあいとなる。

しかも、向こうは気弾の種類を変えてきて


「ファイアガンズ!」


と火炎弾を撃ってきた。


「うわっ!」


とっさに気弾を回避するも、周りに炎が散る。

その後も火炎弾を撃ってくるので


〈炎には氷!〉


と言われ、


「極冷剛煌弾」


と冷気をまとった気弾を撃って火炎弾を打ち消す。

そして次々撃ってくる気弾を撃ち消していった。


 すると再び接近してきて、


「フレイムドライブ!」


炎の蹴りを放ってきた。


「!」


俺は、地面を蹴って回避しつつも間合いを取る。


〈炎には……〉


と夜叉が言いかけたので、思わず。


「氷だろ!」


と言いつつも、


「極冷脚!」


と冷気をまとって蹴りで攻撃を受け止めた。


 そして次に魔王は、


「ファイアナックル!」


炎をまとった拳で殴ってくる。俺は攻撃を回避しながら、


(急に炎系ばかりだな……)


その攻撃には、本人の怒りが体現しているような気がした。

更に


「インフェルノラッシュ!」


炎を宿した両手によるパンチラッシュ。


「極冷連拳!」


こっちも、手に冷気を宿しパンチラッシュを行う。


 炎と冷気の拳のぶつかり合いが続き、最後の一撃、

拳と拳が強くぶつかり合った後、爆発のようなものが起き、

俺たちは、軽く吹き飛ばされるも、お互い踏ん張って、

転倒はしなかったが、間合いを取り、


「「はぁ、はぁ、はぁ……」」


お互い肩で息をする。そして、俺は彼女に言った。


「なあ、俺からイヴを奪ってどうする気なんだ?」

「そんな事、知ってどうするのよ。この後アンタが死ぬのに……」

「どうせ、あの部屋に放置するんだろ、他の自動人形みたいに」

「………」


図星なのか、彼女は反論してこなかった。


「手に入れたところで、満足するのは一時、後はあの部屋に置いて、

それを見ながら溜息するだけだろ。そして、虚しさに襲われる」

「………」


やはり何も言わない。


「お前は本当に、ハダリーが欲しいわけじゃない。

ただ衝動に駆られてるだけだ。

その衝動の所為で、手に入れた物以上を失ったんじゃないのか」


彼女は、低い声で、


「うるさい……」


と言った。自覚があるように思えた。


 俺はさらに畳み込む。


「悔いが無いとは言わせないぞ。

あの部屋でのお前は悔いに満ちていたぞ」


彼女は再び、


「うるさいっ!うるさいっ!うるさーい!!」


と叫び、涙を流しながらこちらを睨む。


 そして彼女は、頭のリボンを外し、ツインテールを解いた。

次に瞬間、炎のようなオーラに包まれ、髪の色も白くなり、体が宙に浮く。


《まずいですよ。奴の力が高まっています》


どうやら、第二形態って奴らしい。


(なんだか、お約束って感じだな)


昔遊んだ、ゲームのボスキャラを思い出させる。


「この力を使うのは久しぶりよ。この力でアンタを嬲り殺してやる!」


と彼女は高らかに宣言した。

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