17「ナナシ、魔装軍団の襲撃」.

 魔獣は、ゴブリンのような低級魔獣から、

ドラゴンのような上級魔獣までかなりの物量だった。俺は剣を振るいつつ、


「バーストブレイズ!」


魔法攻撃で、大勢の敵を倒していく。

なおレインボミングは、巻き添えにならならなくとも、

濡れてしまうので、文字通り二人の戦いに水を差しかねなので、使わない。


 ともかく重要なのは、敵を近づかせない。

しかし一番気を付けないと行けないのは、

うっかり二人に、攻撃を当ててしまわない事だ。

俺たちが二人の勝負の邪魔をするような事があってはならない。

だから使う攻撃に気を使いつつ、魔獣を片っ端から倒していく。

なお他の連中も、その点には気を使っているようだ。


 さて、戦いの中チラッと、黒の勇者たちの方を見た。

先の戦いで見せた力は片鱗でしかなかった。

黒の勇者は強大なチェーンソーのような剣を手にし、

白の魔王は、先がドリルのようになった槍を持って、多数の敵に対処している。

その様子は圧倒的で、魔獣たちを蹂躙してるように見えた。

こっちも敵と戦わなければいけないから、ずっと見てるわけじゃないものの、

ある時は上級魔獣のワイバーンロードやレッドドラゴンを一刀両断し、

またある時は、巨大なゴーレムの頭を消し飛ばしていた。

それは、まるでザコを倒すかのようだった。


 因みに、この場にはリリアもいて、何時ものように魔獣に変身して戦っているが、

この事は、黒の勇者たち話していて、気を付けるように言っているから、

両者とも、リリアが変身したと思われる魔獣は、きちんと避けて攻撃している。


 黒の勇者たちの力は圧倒的だし、

イヴやミズキやリリア、ベルたちも活躍している。

しかし魔獣の量は一向に減らない。

ナナシが、サマナビィで次々と召還しているからだ。

相手は神だから、カーミラやデリックの時の様に、魔力切れは、ないだろうし、

ナナシは、遊んでいるから、シャレにならない魔獣の召還はないものの、

それも時間の問題だろう。


(ヴァルキュリアを使えば、一掃できるだろうが)


今回は使用可能の様だが、しかし、ジークとルリさんを巻きこむ可能性があるので、

使いづらかった。


 そんな二人は、俺たちの事を信じて、手合わせを続けている。

二人の為にも、ここは抑えきらなきゃいけない。


(奴の持ってるサマナビィをどうにかしないと……)


しかし、奴も遊んではいるが狡猾だから、

以前のカーミラの様に、自分の元に辿りつけないように、魔獣を配置していた。

しかも魔獣を倒しても、即座に補充されるので、意味はない。


 あとこの時、俺はフレイを装備していた。

その誘導能力をつかって、敵を避けながら、攻撃を仕掛けようと思ったのだ。


<だめよ、『誘導』は無力化されているわ>


との事だった。


<でも『誘導弾』を使えば>


最近使えるようになった誘導を強化した弾との事だ。

銃のスキルと弾のスキルの二重の状態なので、

打ち消しは片方のみにとどまる可能性があるとの事。

俺はさっそく使ってみた。弾は魔獣を避けて飛び、

ナナシの持つサマナビィに向かって行った。フレイの予測通りだった。


「この程度」


 だがバリアーの様なものではじかれた。どうも威力が弱いようだ。

なお属性を付与して攻撃力を上げると、こんどは誘導を殺してしまう。

同じ『誘導』スキルだが弾の方は、エレメンタル系と相性が悪いとの事。


 倒しても、直ぐ召喚され、次々と繰り出される魔獣たち。

状況は膠着状態になりつつあった。そんな俺達に、


「もっと頑張りなよ。これから魔装軍団と言う本命が来るんだから」


そう言って笑い声をあげるナナシ。

この状況に、魔装軍団なんかが来られたら最悪だ。

何とか打開策を考えないといけないのだが。そんな時だった。


<ねえ、ちょっと思いついたんだけど……>


フレイはある提案をした。


(それで行けるのか?)

<誘導が無くなるのはスキルとスキルがぶつかった結果だから、

でも、あれはスキルじゃないから>


と言われて、試してみようと思った。

でも、気づかれたら、いけないので声は上げらえない。


(問題は、上手くこらえれるか。『習得』で勝手に出るものだからな)


俺は、歯をくいしばりながら、二丁拳銃となったフレイを、ナナシの方に向けて撃った。

発射された弾は、魔獣をすり抜け、ナナシへと向かって行く。


「無駄、無駄」


と言ってバリアーの様なもので防ごうとした。着弾と同時に爆発した。


「うわっ!」


バリアーは衝撃を完全に防ぎきれず、転倒した。

そして、手にしていたサマナビィが宙を舞った。


 その直後、発砲音と共に爆発する。銃による破壊だが、俺じゃない。

音の方を向くと黒の勇者が、ライフルのような物を片手で持っていた。

どうやら彼が破壊したようだ。


「お見事!」


と俺は言っていた。そしてサマナビィの破壊と共に魔獣は消えた。


 ちなみに俺が何をしたのかと言うと、誘導弾で、爆裂剛煌撃を使ったのだ。

爆裂剛煌撃は、アーツで会ってスキルではないので、

誘導の効果を消さずに、尚且つ爆裂弾の効果を出す事が出来る。

技名を叫ばなかった分、威力は減っただろうが、

奴に、衝撃でサマナビィを手放させることはできたし、

結果オーライとした。


 ここで、


「やってくれたねぇ」


ナナシが起き上がって来た。


「これで勝ったと思うなよ」


その言葉を聞いて、俺は咄嗟に銃を撃った。

弾は、丁度やつが取り出した物に命中し、それは吹っ飛んで行った


「予備のサマナビィが!」


奴が、サマナビィを、もう一体持っているとは知らなかった。

何かするだろうと思っての咄嗟の一撃だったが、運がよかったらしい。

奴は転移で飛んで行ったサマナビィの元に移動した。


 黒の勇者の銃撃とは違い、俺のは、破壊には至らなかった模様で、

奴はそれを手をすると、再び魔獣の召還を行ったが、

と登場した魔獣は、体の一部が欠損していたり、

動きがぎこちなかったり、なんだか様子がおかしい。

その後、魔獣たちと戦いになったが、手ごたえがないというか、

触れただけで、魔獣は消滅してしまった。最初に出現させた魔獣は、

あっと言う間に全滅させた。

どうやら破壊には、至らなかったが、故障させたようだった。


 するとナナシは、地面を踏みつけながら、


「クソが、クソが、クソがぁあああ!」


と激昂する。こんなナナシを見るのは初めてだった。


 そして、地団駄を止めると、低い声で


「ちょうど良い時間だね……」


この瞬間、まさかと思ったが、


「魔装軍団の到着だよ!!」


そして光と共に魔装軍団、この前の鎧を着た集団が出現した。


 この前よりも、はるかに数が多かった。


《オートマトンの気配がします。恐らくは、殆どかと》


「感知」が上手く働いてないらしく、どれがとは言えないが、

多くは、かつての魔装軍団の時の様な、オートマトンらしい。

それによって、頭数を増やしたんだろう。奴らの狙いは、ジークの様だが、二人ほど、こっちを狙ってる奴がいる。シルヴァンとレベッカだ。


 シルヴァンは


「今度こそ、お前を倒す!」


一方、レベッカの方は、再びベルが立ちふさがったのか、


「またあなたなの、邪魔しないで!」


と叫んでいる。


 そして、シルヴァンも魔装を変形させたと思われる。

二丁拳銃で攻撃を仕掛けて来る。


「喰らえぇ!」


奴の攻撃が当たる直前、「習得」の所為か、

アクロバティックな動きで避けつつ、

接近し、蹴りを入れつつ、銃撃をする。弾は鎧に防がれるが、

雷のスキルを付与したので、


「グッ!」


電撃は走ったようだった。


「てめぇー!」


今の攻撃で、ますます逆上したようで、


「死ね!死ね!死ねぇええ!!」


と声をあげながら、俺に向かって連射してくる。

俺は、それを自然とかわしていく。


「くそぉ、ちょかまかとぉ!」


その後も、撃ち続けるが、弾丸を避けていく。

「習得」のおかげだが、それ以前に、シルヴァンは、

頭に血が上って、冷静に狙いを定められていないように思えた。


 やがて、シルヴァンの銃は弾切れを起こしたようで、


「なんだよ、クソッ!」


と悪態をついていたが、こっちは容赦なく、銃撃をした。

弾は防がれているが、引き続き雷属性を付与した弾なので、

感電しているようで、


「グワァ!」


悲鳴を上げている。俺は追撃として、銃弾を放ち続けたが、

途中で奴は、武器を剣に切り替え、銃弾を弾いた。

弾いた際は、感電はしないようだった。


 そして銃弾を弾きながら向かって来たので、

こっちもクラウに切り替え、剣と剣での戦いとなった。

そしてつば競り合いとなり、向こうも魔装の所為か、結構重かった。

更に奴は


「お前さえ、いなければ!お前さえ、いなければ!俺は神官になれたんだ!」


とか言い出すので、俺もイラっと来たので


「どうだか、お前の上にはジムがいるんだろ、

奴の事だから功績は、どうせ独り占めだ。

あのままで居たって、出世できたどうか」


と言ってやったら、案の定


「黙れぇ!!」


と激昂し、力任せに押し込んできたが、こっちも負けじと、


「黙ってたまるかぁ!」


と言いながら、押し返して、そのまま、


「ミサキ切り!」


と奥義を発動させていた。


「うわっ!」


と声をあげながら、斬撃による衝撃で、

シルヴァンは後方に吹っ飛んで行ったが

鎧の効果なのか、致命的なダメージはない様子で、

直ぐに立ち上がって向かって来た。俺も迎え撃つのだった。

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