12「イヴとナタリア達の戦い」

 オークの向かっていったイヴ、オークたちは棍棒を手に襲い掛かるが、

アクロバティックな動きで軽々と避け、刀による斬撃で切り裂いていき、

更に状況に応じて、武器を切り替えながら攻撃していく。

それは、まるで舞っているかのように華麗で美しく、

更には群れと一人で渡り合うと言うよりも、

かつてのディドラゴンとの戦いの様に、

群れを一人で一方的に殲滅しているに等しかった。


 ナタリアたちは、サイクロプスがイヴの攻撃で死んではないが、

気絶しているので無視して逃げることもできたが、

ゴブリン達が邪魔してくるのと、そもそも5人とも基本良い人なので、

一人オークと戦うイヴを、そのままにしておけないと言う事もあり、

この場にとどまり襲ってくるゴブリンの群れを相手にする。


 ゴブリンたち強くはないが数が多いのと、巣に入られたかの如く、

凶暴性をむぎだしにして襲ってくるので、

油断はできないがアルヴィンの補助魔法の下にナタリアは剣で、

ルビィは大剣で、ノーラは両手に持った短剣、

メイントは攻撃魔法を駆使してゴブリンを倒していく。


 加えて、さっきはミノタウロスが向かって来ていたから、

焦りもあったので、うまく戦えない部分があったが、

そのミノタウロスは、気絶しているから、当面気にしなくていいようで、

加えてサイクロプスも同様なのと、

イヴがオークの群れを相手にしてくれているので、

ゴブリン達に集中して相手をすることができ、

5人はゴブリンの群れを追い詰めていく。


 そしてイヴが、オークをあらかた倒し終えると、

ミノタウロスがちょうど起き上がって来たので、

アサルトライフルを武器に攻撃を仕掛ける。

因みにタイラントは、少しの間使えない。

あと5人もゴブリンを倒し終えたが、


(このまま逃げてしまっていいのかな)


とナタリアは思う。するとアルヴィンが、


「このまま行っちゃってもいいんですか……」


と迷っているように言う。彼だけじゃなく他のみんなも、

イヴの方をチラチラと見ながら、落ち着かない様子で、

どうも迷っているようだった。

そうこうしている内に、サイクロプスが起き上がってきた。


 ナタリアは、剣を握りしめ、サイクロプスの方を見ながら、


「私は、サイクロプスと戦うよ。他、自由にしていいから……」


するとルビィは、


「私も、残って戦います」


と言って大剣を構えた。


「私も、残るから」


そう言うと両手の短剣を構える。


「俺も残るぜ」


そう言うと、魔法の腕輪をはめている手をきつく握りしめる。


「僕も残ります……」


とアルヴィンは魔法の杖を握りしめながら、決意に満ちた目で答えた。


 そしてナタリアは、


「それじゃあ、決まりね、皆でサイクロプスの相手をするわよ」


この一言に、みんな頷き、

5人は、サイクロプスとの戦闘を開始した。









 廃屋にて、サマナヴィを使い、魔獣達を操っているデリック。

正確には、攻撃命令を下しただけ、

そして、ナタリア達を攻撃している魔獣達を通しての映像を、

サマナヴィのモニターに映し出し、状況を見ていた。


 さて、デリックがなぜ5人を襲ったのか、

それは疑心暗鬼からである。廃屋に籠っていた彼は、

この場所に移ってからも、一人でいる時はビクビクして過ごしていた。

そして夜になると、早めに火を落として静かにしている。


 その日は月明りで、ナナシの用意してくれた食糧の一つであるパンを、

齧っていたのだが、その時、食料袋に入っている何かに気づいた。


(何だ、これは……)


手探りで触れると、それは指輪の様だった。

どうも気になった彼は、明かりを点ける。

その指輪は黒くて、何とも形容しがたい紋章の様なものが描かれていた。


(アイツの物かな)


食料を準備する過程で、間違って入り込んだものだと思った。


(今度、アイツが来たときに、渡してやろう)


そう思ってポケットに入れた。デリックは気づいていないが、

これは、間違ってではなく意図的であった。


 そしてちょうど、指輪をポケットに入れた時に、

アルヴィンが呼びかけを行ったのだ。デリックが冷静なら、

廃屋には裏口があるから、アルヴィンに気づかれずに、

外に出てやり過ごすことは出来ただろうし、

ナナシからも裏口の事を聞いていて、


「何かあったら、ここから脱出すればいいよ」


と言われていたが、この時の彼の思考は冷静さを欠いていて、


(まずい、見つかった。口を封じないと……)


と言う考えに至ってしまい。サマナヴィを起動させて、

特に意味もなくミノタウロスを呼び出し、アルヴィンに嗾けたのだ。

更に、ミノタウロスから送られてくる映像で、仲間がいる事に気づくと、

次々と周辺に魔獣を送り込んだ。


 ただ、サマナヴィを使っていて、


(なんだか調子が悪いな……)


召喚する魔獣達が限られているというか、

最初は、サイクロプスの後も、大型の上級魔獣を呼ぶはずだったが、

どういう訳が、それが出来なかった。

呼び出せる魔獣を探していき、最終的にオーガとゴブリンにたどり着いた。

どちらも群れで呼び出せることがあったが。


 こういう事は、過去にもあったが、その時は上級魔獣を大勢呼び出した後で、


(さすがに使い過ぎたな……)


と思うくらいであったから、違和感はしなかった。

しかし、今は二体しか呼び出していないのに、この状況。

明らかに、いつもとは違っている。


 しかし、今のデリックは、ナタリア達の口封じを優先としていて、

その事に関して、深く考える余裕は無かった。更に、


(何で、このオートマトンが……)


ちなみにデリックは、イヴの事をハダリー顔の戦闘用自動人形として、

以前から、知っている。アステリオスとの戦闘の後、

ナナシからイヴが、和樹こと黒騎士の従者である事を聞いていた。


「黒騎士……」


その後のイヴの活躍から、彼女自身ではなく、

主人である和樹に一方的な色恋からくる恨みの感情もあり、怒りが湧きがって来た。


(そういや、こいつら、あの時、黒騎士と一緒にいたな……)


アステリオスを嗾けた時のことを思い出す。


 すると、さっきまでは、口封じ為に彼らを襲わせていたが、

和樹の関係者だと気づくと、今度は憎しみを抱くようになった。


(殺す、絶対に殺してやる!)


これまでも、殺意はあったが、

それは、自分の居所が知られて、捕まってしまうと言う、

不安から来るものだったが、今は違って恨みがこもっていた。


 そしてゴブリンとオークが全滅すると、

召喚できなかった大型魔獣ができる用になったので、

それでも、数は限られていたが、呼び出した。

しかし、召喚まで時間がかかるというメッセージが表示され、

デリックを苛立たせるのだった。









 イヴは、銃器による射撃と時に大剣「斬竜刀」による斬撃で、

ミノタウロスを追い詰めていく。

その一方で、ナタリアたちも、サイクロプス相手に善戦する。


「セイッ!」

「フンッ!」


と言う掛け声とともにナタリアは長剣を、ルビィは大剣を振るい、


「………」


ノーラは、無言で両手に持った短剣で攻撃する。

しかも戦っているときは、無表情になるので怖い。


 そしてメイントが腕輪をつけた右手の掌を開けた状態で、

サイクロプスに向けて、


「サンダカノン!」


魔法陣と共に雷を纏った光弾を撃った。


「グガァァァァァァァ!」


と苦しそうに声を上げる。サイクロプスの弱点は雷なので、

効果は抜群のようだった。


 一方、アルヴィンは、少し離れた場所で、杖を手に待機している。

彼はサポート専門なので、状況に応じて、補助魔法、

怪我をした際は治療魔法を使う。


「………」


アルヴィンは、無言であったが、魔法陣が出現し、

全員に補助魔法を使った。直後、メイントがサンダカノンを使った時、


「あれ?」


先に放ったのと、威力が上がる形で変わっていたので、

思わず声を上げてしまう。そしてアルヴィンに向かって


「おい、バフ使うなら一言言ってくれよ。勘違いするだろ」

「すいません」


 なお、彼は持ち前のスキルの影響もあって、治療魔法もすごいが、

バフやデバフもすごい。

ただアルヴィンは、これらの魔法を無詠唱で出せてしまうので、

メイントだけでなく他の皆からも使うときは、一言いう様に言われている。

自分の実力を誤認しないためとの事。

それと、日によっては使えないことがある。

今日は、バフは使えるが、デバフは使えない。

和樹と初めてパーティーを組んだ日やダンジョンに行った日は、

両方使えない日だった。


 この後、


「補助魔法使いましたから!」


と声を上げるアルヴィン。戦闘中なので前線の三人からは返事はない。

そして彼が使ったバフの影響もあったのか、

ナタリアたちは、これまで以上に、善戦する。


  

 そしてメイントの魔法攻撃で、サイクロプス大きくひるみ、

更に、ルビィの大剣、ノーラの短剣による斬撃で、切り裂かれ、

そして、ナタリアの剣による奥義が炸裂する。


「ライティ・スラッシュ!」


雷を纏った剣による斬撃が、サイクロプスの胴体を斬り裂く。


「グガァー!」


と悲鳴を上げて倒れ、動かなくなったかと思うと消えた


 ミノタウロスの方も、


「グォォォォォォ!」


咆哮を上げ、倒れて、そのまま消えていった。

そして戦いが終わると同時に、ナタリアたちの方も限界が来たらしく、

その場に座り込む。


「ヒール!」


アルヴィンは急いで駆け寄り、回復魔法を使っていく。


「ありがとな」


と礼を言うメイント。


 だが直後、


「ゲッ!」


という声を驚愕の表情を浮かべながら言った。

その視線の先を見ると、


「トロール!」


醜悪な顔つきをした巨大な魔獣がそこにいた。

更にノーラが、


「キマイラ!」


と声を上げた。トロールの対面方向に、

ライオンの頭に、山羊の胴体に背中には山羊の頭、

毒蛇の尻尾を持つ巨大な魔獣がいた。もちろん上級魔獣。

これらに加えて、空から降り立つように現れたのは、


「ワイバーン!」


と声を上げるナタリア、これらに加え更に魔獣は現れる。


「あれはクイーンアラクネ!」


と声を上げるルビィ。

蜘蛛の様な下半身に人間的の上半身がある魔獣アラクネの上位種。


 これら四体の巨大魔獣が、イヴとナタリア達を囲むように現れた。

イヴは、まだ余裕そうであったがナタリア達は、

アルヴィンの回復魔法で回復できたものの、

大型の上級魔獣が4体となると分が悪い。


「あはは……」


ノーラは冷や汗を流しながら、もう笑うしかないという感じである。

ルビィは、


「これは、まずいですね……」


と真顔で呟く。メイントは、苦しそうな表情で


「いくらなんでもなぁ……さすがにこの数はきついぜ……」


と呟く。


 そしてナタリアは、


(これは、まずいね。あのオートマトンの助けがあっても、切り抜けれるかどうか)


と不安を感じつつも、


「アルヴィン、煙幕を張って!」

「はい!」


因みにアルヴィンが使う煙幕は、魔法によるもので魔獣の視界や感覚を遮断する。

ただ大型魔獣には効果があるが、

ゴブリンや、オーク、サイクロプスには効果がないので、

効果があっても、耐性ができるので、ミノタウロスにも意味がなかったので、

さっきは使わなかった。

しかし今回は、全員効果がある魔獣なので使用する事にした。


 しかし使った直後、突風が吹いて煙が吹き飛んだ。


「クッ!」


それは、ワイバーンが起こした風であった。煙幕はワイバーンにも効果があるが、

風を起こせば吹き飛ばせてしまうのである。

煙幕は、無力化されるので逃げられない。万事休す。


 だがその時、


「バーストブレイズ!」


炎魔法がトロールに命中し、ひっくり返った。

そして魔法が飛んできた方に居たのは、


「アンタは、ダンジョンに居た」


と声を上げるナタリアであった。


 




 


 俺は、ナタリアの元にたどり着いた。


(どうにか間に合ったな……)


途中まではカオスセイバーⅡで来たが、森なので降りて、

宝物に仕舞い、後はベルと駆け足で来た。

鎧は、白銀騎士の方を着ている。場所は鎧の周辺把握もあるが、

そもそも戦闘の音で直ぐにわかった


 到着した俺は、トロールにバーストブレイズをぶち込み、


「どうして、アンタがここに?」


黒騎士としてもそうだが、鎧を着ているから俺だと分からない様子、

まあ、この鎧姿でダンジョンで会ってるから、面識はない訳じゃない。


「ただの通りすがりだ。早く逃げた方がいい」


なおトロールを倒したのは、森の出口への道をふさいでいたからである。


 そして俺は、魔獣たちの方を見る。

トロールは、倒したと言っても死んではいない。

直ぐに起きてくるはず、そしてほかにも魔獣がいて、計四体いる。


(まあ、面倒だけど、どうにかなるか)


すると、


「私も手伝うわよ」

「シスター……」


突然、シスターナイが姿を見せた。どうも転移で現れたようである。


「どうしてここに?」

「あたりを付けてたのよ」


と言いつつ、彼女は左手に、赤いオートマチック式拳銃と

右手に、銀色のリボルバー式拳銃を装備していた。


 そして、ベルもメタシスの拳銃形態を装備している。

イヴは既に臨戦態勢である。

俺もクラウ抜くと4人で、魔獣たちに向かっていった。

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