2「魔輪襲撃」

 二つ魔輪は、小さいが、周囲の木々をなぎ倒すほどで、

中々の切れ味。時に、地面にある大きな岩とかを切り裂きながら、襲ってくる。

しかし、クラウは丈夫なので、刃で防ぐことができた。


 しかし小さく素早いので、「習得」から来る。

回避か、剣で防ぐ、遠距離の奥義や、スキル「風撃」、

バーストブレイズも使ったものの避けられてばかりで、防戦の一方となった。


《使い手を潰せば、早いのですが……》


魔装は転移を持ってるが、あくまでも主人の元に戻る時か、

付きまとう時以外は使えず、それ以外では、移動は出来ない。

だが魔輪は、最初こそ、投げると言う動作が必要だが、

投げてしまえば自由自在に動けると言う。

そして、使い手から遠く離れた位置でも、動き回れるので


《どうも、私の感知の範囲外にいるみたいなんです》


居所を探ることは出来ないらしい。


 そして、何故俺が狙われているかと言うと、

俺が七魔装を持っているから、恐らく七魔装の気配を狙って、

飛んできていると思われる。


 本来、七魔装を持つものは、戦う定め、

いわばバトルロイヤルをしてる状態だと言う。

この前の、シルヴァンはそう言う気配は無かったが

一応トールは、俺が七魔装を持っていた事を話していたらしいが、

きちんと話を聞いてなかったらしい


 なお破壊された七魔装は、破壊した七魔装に吸収され、

最終的には一つになると言う。

まあスキル「融合」で行われてる事で、俺がやって来たことであるが、

実は、融合スキルには、俺が書きかえで消した条件があった。

それは、使い手の殺害である。したがってクラウの場合、

或いは融合後の魔装たちも、同じであるが、魔装を破壊するだけ、

その魔装を取り込むことができる。


 しかし、他の魔装たちは、魔装だけでなく使い手も殺さないと

融合できないので、他の使い手たちは、七魔装の使い手である俺を

狙う訳である。


 さて、魔輪に対し防戦一方の俺だが、後で思えば、

クラウの時の様に、手でつかめばよかったのだろうが、

物凄い速さで襲って来る魔輪に対し、そこまで頭が回らなかった。


 ここで、


<奴の動きは読めたわ。アタシを使って!>


言われてみれば、飛びまわる敵に対し、剣や槍、ハンマーは、

やりにくく、奥義を使ってたとしても上手く行かない。

飛び道具には飛び道具だ。フレイに切り替え、「分身」を使って二丁拳銃にした。

そして弾は、


<アタシの見立てじゃ、このままでいいわ。>


特に変更せず、基本の通常弾で、スキル「誘導」に加え、


<あと『風撃』を付与して>


こうする事で、敵の速度に追いつく。そして、俺は、魔輪に対し攻勢に打って出た。

打ち出された弾が命中すると、相手の動きがおかしくなるので、

効果があるように思えた。


 しかし、一つ問題があった。それは、「習得」から来る動きだ。

この前のラウラの時までは、とく問題は無かったが、

今回のチャクラム相手では、少し遅れを取っていると言うか

クラウの時は、余裕を持った回避が出来ているが、


「うわっ!」


武器をフレイに切り替えた時は、回避がギリギリとなったうえ、

時には、転びそうになったり、妙なポーズを取ってしまったり

結構マヌケな動きをすることもあった。

相手の動きが、早く妙にトリッキーと言う事もある。

回避の時だけ、別の武器と言うのも面倒だ。


 あと、その早さとトリッキーさが相まって、誘導と風撃をもってしても

上手く当たらない事も多かった。特に正面から当てると、

弾自体が切り裂かれてしまう。効果があるのは側面に命中した時だけ、

射撃の腕が全くない俺としては、言うまでもないが、「誘導」に

頼りきるしかない。しかし、「誘導」を持ってしても当てられない事がある。


 他の武器なら、防戦一方な事に比べ、フレイなら攻勢に出ることができたものの、

本人には、悪いけど代償として妙に苦戦している様な気がした。

しかし、唯一攻勢に出れるわけだから、仕方ないのだが、


(銃撃に奥義があればな……)


まあ剣とかと違って、射撃に奥義的な物がるかは不明だが、

少なくともフレイの「習得」には、それは無かった。

しかし、銃に奥義的な物があれば、スキル付与ではあるものの、通常攻撃でも、

一応、魔輪に当てられているわけだから、

もっと強力なダメージを、当てられるのではと思った。


<悪かったわね!>


俺の心が読まれ、不機嫌な声を出すフレイ。


<どうせ、アタシは実力不足よ!>


と不貞腐れた声を上げた。


 機嫌は悪くなったものの、彼女のコントロール化にある誘導を、

切られたりとかは無かった。でも申し訳ない気分にはなった。

実力不足と言うか、彼女の「習得」が見劣りするのは、

長年、魔獣の腹の中だったからで、

今になってようやく、使われだしたからであるから、

彼女を、責められないんだけど。


 その後も、攻撃はあてられてるが、回避がギリギリと言う状況が続く。

魔輪は小さいが、やはり七魔装なだけあって、丈夫な様だった。

他の属性スキルを重ねるか、他の弾丸はどうかと思ったが


<駄目よ。どれも命中率が下がるわ>


結局、地道にやるしかない。


 そんな中で、


(ベルが居なくて良かったな。こんな格好、他人に見せられないぞ……)


と思った。先も述べた通り、回避がギリギリな上に、

結構無茶な動きをするので、かなりおかしなポーズを取る。

人様に、見せたくない格好。なお俺の意志じゃなく、「習得」による回避だ。

とにかく武器であるクラウ達はしょうがないにしても、

他の連中には、絶対に見せたくないと、戦いの中であるが、そんな事を思っていた。


 するとフレイが、


<そういや、あのベルって女、『遠見』が使えるんじゃなかったっけ>


さっきの事への、意趣返しなのか、フレイが妙に意地の悪そうな口調で言った。


(そうだった……)


彼女の言葉で、ベルに見られているかもしれないという事に気づき、

顔が赤くなるのを感じた。今更、妨害魔法は意味が無い。


(ああ!もう!さっさと終わらせるぞ!)


俺は、自棄になって、ひたすら銃を撃ちまくった。


 すると、撃った弾の何発かは当たったが、

その内の二発、それぞれの魔輪に一発ずつ、同時に当たったのだが、

この時、動きに変化が起きた。急に動きが、ふらふらとおかしくなって、

やがて互いにぶつかり合い、きりもみ状態になりながら

無茶苦茶な動きを始め、俺のいる場所とは、違うところに飛んでいく。


(何だろ、殺虫剤を掛けた蠅みたいだな……)


と思った。


<限界が来たみたいね。次で倒せるわ>


恐らくダメージが蓄積し、今の一撃で限界を迎えたという感じだろう。


 正に好機なのだろうが


(こんな時に弾切れかよ)


この状況でも、相手の動きは速いから、他の弾じゃダメらしい。


<アンタが、撃ちまくるからでしょ!>

「お前が、変なこと言うからだ!」

<なによ、事実を言っただけじゃない!

だいたい、アンタがアタシの事を役立たずみたいに思うから……>

「人の心をいちいち読むなよ!」

<読めちゃうんだから、仕方ないでしょ!>


この時、魔輪から注意が逸れて、右手の、

分身じゃない本体の方の銃に向かって話しかけていた。


 そしてクラウが


《ちょっと、魔輪が向かって来ますよ!》

「えっ!」


魔輪が斜め上から、こっち向かって来てて、

俺が気づいたタイミングで、急にスピードを上げてきたので


「うわっ!」


俺は自然と、斜め後ろに飛び上がる様に避けたが、


「!」


しかし、無茶な飛び上がり方をしたようで、空中でバランスを崩して、

背中から落下した。


 鎧越しだったから、特に痛みがなかった。地面に落ちた際に


「バキッ!」


という音がした。


「ん?」


何かを下敷きにしたみたいで、立ち上がり確認すると


「あっ!」


魔輪が割れていた。

なんとも、あっさりとしていて滑稽な結末だった。


 そして「融合」が発動し魔輪の残骸は、光となって、

フレイに吸収された。早速、切り替える。

円状の刃で、持つ場所を、気を付けないと、怪我しそうな気がした。

見た目は黒く、趣味の悪い妙な絵柄書いている。

刃条の趣味だろうな。


 そして妙に可愛らしい声が聞こえてくる。

口調は、妙に堅苦しい。


〖〘我らは七魔装、〙〗


と最初は声がハモっていたが、ここからはそれぞれが


〖我は、魔輪センリ〗

〘我は、魔輪エイリ〙


と言った後、


〖〘二人そろって、マリーンズで~す!イエ~イ〙〗


いきなり口調が変わったので、ズッコケそうになった。


「なんだ、どこぞのアイドルか!」


俺のツッコミに答える事なく、


〖〘今後ともよろしく。マスターさん〙〗


ここで、思いっきり疲れが襲ってきて、返答する事もなく、

クラウに戻すと、鎧も脱ぎ、その場を後にした。


 その後、家に帰る途中、ベルと会った。


「和樹さん!」


と彼女は駆け足でやって来た。


「どうしたんだ?」

「探したんですよ!どうして遠見の妨害魔法なんか使ったんです」


ベルの話では、「遠見」で俺の事を見ていたらしいが、

ちょうど、ベルが魔輪を捕捉した頃から、「遠見」が妨害されたらしい。

見られていたのは、ドン引きだったが。


「魔法は使ってないぞ」

「えっ?」

《確かに、マスターは使っていません》


とクラウが証言し、俺は、魔輪との事を話した。


「その様な事か……それでは、『遠見』を妨害したのは、まさか……」

「こんな事をやる奴は、アイツしかいねえ」


そうナナシだ。まあ、おおかたベルが助けに来るのを防ぐためだろう。

そもそも、魔輪が襲って来た事にも奴が関与しているのかも、

まあ、奴に見られたかもしれないが、

身近な奴に、あの醜態を見られることを防いでくれた事には感謝した。

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