10「悪魔と対決」

 早速俺は、


「バーストブレイズ!」


攻撃は全弾命中し、


「グウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


と言う咆哮を上げる。さっきまで普通に話していたが、

これ以降は、話しては来ない。あと最初は、怯んだが、

その後は、攻撃が当たっても、怯まず向かってきて、

その巨体で思いっきりぶん殴って来る。


「アブね!」


デカい割には、サタニキアの動きは速かった。

俺は避けつつも、無意識にトールに切り替え、

その手に思いっきり打ち付ける


「グウオ!」


と声を上げる。そして俺は、間合いを取り、武器をこれまた無意識にフレイに、

切り替えていた。そしてこの時、DXMを使う大十字の姿が頭に浮かんだ。


「聖水」


シリンダーが「カチッ」という音立てて動く。


(いけるんかい!)


悪魔と言えば、聖なるものが弱点、そこから聖水と言う感じで、

思い付きで言ったが、いけるようだった。

更に分身もいけて、二丁拳銃で、撃ちまくる。

その弾丸は聖水が込められた弾の様で、着弾と共に破裂し、その体にかかる。


「グア!」


かかった部分から煙のような物が出る。強酸を掛けたようだ。

その後も撃ち続ける。効果はなかなかで、

当たると、相手が怯む。ただ撃ち尽くすと、


<この弾は、再装填には時間が掛かるわよ>


ここで、武器をクラウに変更する。分身は消える。

再びバーストブレイズを撃ち続ける。

怯まないとは言っても、敵の体は焼けて、

見た目的にもダメージはありそうだし、


《効果は出てますよ》


と言うクラウが太鼓判を押す。


 バーストブレイズに加え、「習得」を発動中なので


「雷撃剛煌斬!」


と剣を振るうと雷を纏った三日月様な形をした気弾が飛び出すと言う奥義が、

勝手に出た。


「グア!」


と言う声を上げ怯んだので、効果はあるようだった。

ただしバーストブレイズ同様、二度目以降は、怯まなかった。


 遠距離攻撃は、基本、一撃目は怯むが、二発目以降は怯まない。

例外は聖水だけ、なお近距離攻撃は、効果があれば怯む。

敵の攻撃は、何故か近距離主体


《私の知る限りでは、遠距離魔法も使ってくるはずですが》


との事だが、今のところ、こっちは、バーストブレイズ等で、

遠距離攻撃をしつつ、距離を縮められたら、

攻撃を避けつつもクラウやトールの近距離攻撃や、


「紫電一閃!」

「炎龍断!」

「暴風破斬!」


と勝手に出る奥義で打ち込み、怯ませたところで、間合いを取り、

遠距離攻撃と言う繰り返し、途中、


〔わたしも使ってよぉ〕


とミニアからの催促はあるが無視しつつ、俺は攻撃を続けた。

途中、


《マスター……怖い……》


と言うクラウの声が聞こえた気がした。


 この直後、雷のような物が、俺を襲って来る。


「!」


敵の側に魔法陣があり、そこから発生していた。


《どうやら、遠距離攻撃を使いだしたようですね》


と言った後、


《そろそろ、洞窟が限界です。このままでは落盤が起きます。

そうなったら本気でないと脱出は出来ません。移動しましょう》

「分かった」


俺はこの場から移動を始めた。審問官が来ている状況での、

フルパワーは危険だからだ。


 なお「周辺把握」によると、ここは、町の地下で、

村長の館と繋がっているらしい。

ちなみに、俺たちが戦闘を始めた時点で、村長を含めた村人たちは逃げていた。

あとサモンドールも、持って行ったようである。


 さて移動を開始すると、当然サタニキアも追って来る。大きさの所為か

洞窟を壊しながら向かって来る。

俺はフレイで再装填できた聖水弾を撃ち、相手を怯ませて動きを鈍らせながら

洞窟を進んだ。追いつかれたら落盤に巻き込まれて、

フルパワーにならざるを得ないからだ。


 途中で扉があった。鍵は掛かっていて引きともしない。

バーストブレイズで破壊しようとすると。


《待ってください。この扉は、魔法耐性があります》

「えっ?」

[ご主人、ここはアタシの出番っすよ!]


俺は、武器をトールに切り替え、


「こんちくしょ!」


思わず出た掛け声と共に、扉を、ぶち壊した。

その後は、聖水弾を使う関係でフレイに切り替えつつも、

再び、時折、敵に弾を撃ち込みながら、先に進む。


 洞窟の先には階段があり、そこを上がっていく、周辺は把握によると、

上の方即ち館には、人が集まっているようだった。


《上の方では、何やら揉めているようですか》


大方、審問官と村人たちが揉めているのだろうが、


(知ったこっちゃねぇや)


そんな事を思いながら、階段を登りきると、


「壁?」


周辺把握では、この先は廊下になっている。


《隠し扉ですね》


扉は、魔法耐性の他、サーチ除けもしてるが、クラウの感知は

防ぎきれてないとの事、開閉は機械仕掛けになっていて、

機械の方は、魔法で動く感じらしい。


 さっきのような鍵のかかった扉みたいなものなので、

俺は、トールに切り替えると、


「おりゃ!うりゃ!こんちくしょ!」


叩こうとするごとに、俺は無意識に掛け声を上げていた。

先の扉と違い、こっちの扉は、硬く、その為、三回くらい叩き破壊した。

壁の向こう側には、村人とガサ入れ中の審問官らしき奴らがいた。

俺が壁をぶち破って現れたものだから、みんな驚いた顔をしていた。


「何だお前は?」


と審問官らしき奴に言われたが、


「逃げろ、サタニキアが来る!」


と言って、その場から移動し、


「おい待て」


と言う言葉が聞こえたが、無視して窓を見つけると、ぶち破って、

外に出て、走り出す。背後で物凄い音が聞こえたので、振り返ると、

サタニキアが、館を壊しながら外に出ていた。

なお俺の警告が効いたのが、それともサタニキアの気配の所為かは不明だが、

「周辺把握」で確認したが、館の中にいた奴らは全員外に出て無事なようだ。


 ヤツは羽を広げ、空を飛び、雷で攻撃しながら

こっちに向かって来る。俺は避けながら戦いやすい場所を目指して、

走っていた。「周辺把握」で丁度いい場所をいい場所を見つけていた。


《農場ですか、確かに開けていて戦いに適してますね》


それだけじゃない。この村の収入源はここなのは、

この村に来て、依頼内容の説明を受けた時に、聞いていた。

魔獣の根がここに到達して困っていると。

この時、どす黒い衝動に駆られていた俺は、ここで戦えば村人が、

村人たちが困るはずだと言う思いもあった。


 俺は、農園の真ん中あたりで、雷を避けながらも、奴を待つ

ここで不安な事が起きた

「『周辺把握』の調子が」

「こっちも感知の調子が悪いです」


ナナシの仕業だろうか。そんな中、奴が、急降下で、降りてきた


《来ますよ!》


俺は、その急降下による一撃を、避ける。

上空であるが、近かったのでクラウは察知できたとの事。

なお奴の降りた所には、大きなクレータ―の様な物が出来た。

そして、ヤツは俺の方を見ると、

周囲に、沢山の魔法陣が出来て、火、氷、風と様々な属性攻撃が

飛んでくる


「メキドレインか」


だが主体は、雷の様だ。なお属性攻撃の雨あられの中でも、

近接攻撃を繰り出してくる


 遠距離攻撃が加わる事で、辛くなってきたが、

基本は、さっきと同じ、遠距離攻撃を繰り出しつつ、時折、接近戦

それに外に出る事で仕える攻撃もある。


「レインボミング!」


この直後、雨が降り出す。これは魔法によるもので、俺や周辺にはただの雨

だがサタニキアはとっては


「グギャアアア!」


雨が当たると、その場所が爆発し、煙のような物が上がる。




「レインボミング」

漆黒騎士の鎧の専用魔法。

一定時間、触れると爆発する液体の雨を降らせる

属性は水なので炎は伴わないものの、強い熱と衝撃波が起きる。

効果は使用者が選んだ対象にのみ、それ以外にはただの雨。

そして、屋外でしか使用できない上、一日一回しか使えない





白銀騎士の鎧は、漆黒騎士の完全なコピーだから、当然使える。

なお邪神との戦いで、初めて使った。そして今回、対象はサタニキアのみ。

しかし最初こそ怯んだが、体中のあちこちが爆発しながらも、

向かって来る。あとレインボミングは、

水系なので炎系の属性を打ち消すことがあるが

こっちの攻撃は打ち消さないので、バーストブレイズは使えた。


 相手の攻撃も、他の属性攻撃が打ち消されないので、

避けるのが大変なのには、変わらない。

そして再度接近された時、剣とかではなく、相手の拳を避けつつ

その腕に手のひらを当て、近接魔法を使った


「テンペストパルム!」


次の瞬間、敵の腕が吹き飛んだ。





「テンペストパルム」

漆黒騎士の鎧の専用の近接魔法

手のひらに、強力な風を発生させ、それを圧縮し、

前方に向けて放出する。なお使用者へは多少の衝撃はあり

発動後に隙を作る事はあっても、怪我をするほどの負担はない。

なお威力は強いが攻撃範囲は狭い。


これも、邪神戦で初めて使った。威力はバーストブレイズよりも強いが

あまり使う機会が無かった。


 なお腕を吹き飛ばされたサタニキアは、


「ガアアアアアアア!」


と咆哮すると、破壊された腕が元に戻る


「再生か」

《ご安心を、ダメージは蓄積されています》


俺は、引き続き、これまでと同様の攻撃を続けた。

バーストブレイズでの攻撃を主体にしつつ、ときおり奥義

接近されたら、クラウかトールの奥義も含めた近接攻撃。

サタニキアは、聖水以外、これと言った弱点は無い。

しかし、聖水弾は、再装填に時間が掛かるから、必然として

地道な攻撃しかない。

ただ遠距離攻撃を避けながらなので、少し大変だった。


 そんな中、敵の近接攻撃を避けた際に、腕ではなく足に向かって

テンペストパルムを使った。敵の足が吹き飛んだわけだが、

その際に敵が倒れ、俺はある種の衝動に駆られた。

それは、敵の属性攻撃のおかげで、邪魔され、

そうこうしている内に、足が直ってしまった頃で出来なかったが、

俺の、どす黒い衝動と結びついて尾を引く事になった。


 クラウが言うには、敵は弱っていて、

確かに見た目的にもボロボロになっているが、その動き、攻撃に変化はない


「本当に弱ってるのかよ。感知の調子、悪いんだろ」

《近距離ですし、調子が悪くなる前の事を考えても確かです。ただ……》


何でも悪魔と言うのは、瀕死になるまでは、元気なのだという


《聖なる攻撃を続けていれば別ですが》


あいにく、聖なる攻撃は聖水弾のみ、これを延々と撃ち続ければ

動きや攻撃を弱らせることができるが、

あいにくそれは出来ない。


 ここで突如として、敵の攻撃が止んだ。


《変ですね、まだ余力があるはず》


次の瞬間、サタニキアは、飛翔し、空中で動きを止めた。

そして巨大な魔法陣が浮かび上がる。


《まずいですよ。超高威力の魔法です》


クラウにとっても初めて見る魔法ではあるが、

魔法陣から予測がつくらしい。


《村や森を含めたこの辺一帯が、吹き飛ぶかと》

「えっ!」


この時の俺は、村人はどうなってもいいという思いがあった。

でも子供達や、森もとなれば、ランドルフさんも、

今は審問官たちもいる。


(止めなきゃ)


そう思った俺は、バーストブレイズを撃ちまくった。


《駄目です。阻止するには怯ませなければ》


 近接攻撃は届かない。飛行魔法は役に立たない。

遠距離攻撃は、出し切った感がある。

あとオープンパンドラは、まだ使えない


<私の必殺技を使って!>


確か、フレイの必殺技なら届くし強力、迷ってる暇は無かったので、

俺は、直ぐにフレイに変更し


「セブンスブレッド……」


発射準備に入り高速回転を始めるシリンダー、

直ぐ撃てるように、敵に銃を向ける。

やがてサタニキアの元に光が集まって来る。

見るからに危ない


(早く、早く……)


気持ちが逸る。たぶん発射前じゃないとマズイはずだ

そして光が最高潮に達そうとした時、

シリンダー動きが停まり、俺は引き金を引いた。


(頼む!)


あとで考えれば滑稽な話だが、うまくいくように

俺はこの時、神に祈っていた。俺自身が、神なのに。


 発射された弾は、「誘導」によって、敵に向かって真っすぐ飛んでいき、

命中、次の瞬間、夜空が真っ白になって、物凄い音がしたが、

それだけだった。


《魔力の放出を確認、どうやらうまくいったようです》


魔法の発動に失敗し、本来使う筈だった魔力を無駄に放出したとの事

そしてサタニキアは、地面に落ちていった。


《当分は使ってこないでしょう》


あと魔法の阻止は、更なる幸運をもたらしてくれた。

サタニキアは、落下した後、直ぐに起き上がり、俺の方に向かってきたが

魔法攻撃は使わなくなった。魔力の放出の所為と思われる。

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