6「地下二階・パズルと殺人鬼たち(2)」

 次の部屋と言っていいのか、扉には数字の2と翻訳される異世界の文字。

中は、家具類は、さっきの部屋と、あまり変わらないが、

壁にはパズルは無くて、代わりにテーブルがあった。

テーブルの上には、長方形のくぼみ、更に部屋中に、何かが散らばっている。


 一つ拾ってみると、


「これは、パズルのピース……」


くぼみを一瞥し、


「ジグソーパズルか」


ラウラは言っていた。


「2と3の部屋は、実際に扉を開けるまで、どんなパズルかは決まっていません」


つまり、どんなパズルが置いてあるかは、ランダムであると言う事。

今回、2の部屋は、ジグソーパズルらしい。もちろん苦手だが、やらない訳には、

行かないのでピースを集め出すが、

ピースが、部屋中に、散らばってる関係上、探すだけでも手間だ。


 取り敢えず外側のピースを探していると


<捕捉弾を使って>

「何だそりゃ?」


初めて聞く言葉だったが


<いいから!>


俺は、半ば押し切られる様に、捕捉弾とか言うのに切り替えた。


「どこを撃つんだ」

<どこでもいいわ。適当に撃って、後は私が誘導するから>


と言われたので、適当に撃つ。少しして俺の元に何かが複数、飛んできて

俺の目の前に浮かんだ。




「捕捉弾」

殺傷性はないが、命中したものを、撃った者の元に引き寄せる弾。

大きいものだと、一体までだが、

小さいものなら一発で複数、引寄せられる。



 引寄せられてきたものに、手を近づけると、それらは手の上に落ちた。


「パズルのピース……」

<それは、外側のピースよ>


丁度探していた外側のピースで、並べ替えに、少し手間取ったものの、

実際に、はめてみると彼女の言う通りだった。


<部屋に落ちてあるパーツと、はめ込む場所は確認してるわ

あと捕捉弾を使ってくれれば、『誘導』で、あなたの必要なパーツに

当ててあげるから>

「フレイ……」

<言っとくけど、アタシは、アイツらに負けたくないだけだから、

別にアンタの為じゃないんだから、勘違いしないでね!>


彼女の言葉に


(やっぱりツンデレだな……)


と思いつつ、あと彼女の言う通り、捕捉弾でパーツを取り寄せながら

くぼみにはめ込んでいく。先も述べた通り、並べ替えは、少し面倒であったが、

場所は、目星が付くので、実際にピースを探すことに比べれば、楽であった。


 その後、パズルは完成させていくが、順調という訳じゃなかった


〔敵が来たわ〕

「!」


こっちも、「周辺把握」で確認していた。ソイツはドアの近くに、突然、現れた。


 俺は、パズルから離れて、弾を鳥もちに切り替え、扉の方に向けて銃を構えた。

そして直ぐに、ソイツは扉をデカい斧で壊しながら入って来て、俺を睨みつけた。


「ヒッ!」


その剣幕が、恐ろしく思わず声が出る。


 入って来たのは十代後半くらいの少女で、服はさっきの少女と同じく

ボロボロ、髪はぼさぼさなショートカットで顔は、決して悪くはないが、

その表情は、正に憤怒で、恐ろしい


「………」


さっきの少女とは違い、無言で、これまたデカい斧を

軽々と振り回し、襲って来る。


 その姿に俺は、恐怖を抱きつつも鳥もちを撃ち込み。

相手の攻撃を封じた後、部屋を飛び出し、走って次の部屋に向かった。


《賢明な判断ですよ》


とクラウが、どこかフォローするように言った。


 次の部屋、ここも扉には数字に翻訳される文字があった。ちなみに数字は3。


「随分と、殺風景だな……」


部屋には机があるだけ、机の上には一つ一つに文字が書かれた。

薄いブロックの様なものが書かれている。

それぞれ文字は、「翻訳」によると、数字と数学記号になっていた。


「電卓?」


壁には、文字が並んでいる。そして右上の文字だけは変化を続けている。


 そして翻訳によって浮かび上がってきたのは


「数式……」


そこには、答えまで記された数式が、書かれていて、更に、一列、一列、違う数式。

ただ、どの数式も所々、抜けている。


「虫食い算、小町算もか……」


つまり、数学パズルである。テーブルの石は入力装置と思われる。

そして、変化を続けている文字は、翻訳だと数字で、

カウントダウンしていて、ゼロになると壁中の文字がすべて変化する。


「制限時間付きか」


なお制限時間は60秒である。


 ちなみに俺は、数学は、かなり苦手である。すると


〔計算なら、私に任せて〕


ミニアが名乗りを上げ、彼女が計算し、俺が答えを入力する。

石に触れると、石に書かれている文字が抜けている部分に出現する。

最後まで、入力すると、一番上の数式が消えて、二番目の数式が、上に上がる。

あと、カウントダウンの部分は消えないが、答えると、再び60に戻るので、

どうやら全体ではなく、一問一問の、制限時間らしい。


 計算は、ミニアが行ってくれるものの、入力も大変。

彼女が計算結果を出せたとしても、入力にもたついて時間切れになることもあるし。

焦って入力を間違えることもあった。しかも、間違えたら、問題が変化し、

やり直しになるので


〔ひど~~~い〕


とミニアから言われることも。せめてもの救いは、既に解いた分は、

やり直しにならない事。でも殺人鬼どもが、やって来た場合は別なんだろうが。


「!」


 その殺人鬼がやって来た。ただ「周辺把握」によると、

既に部屋の中にいるみたいだが、周りを見渡しても、敵の姿は見えない。


《マスター、敵は天井裏に居ます》


鎧の「周辺把握」では、館の見取り図みたいな物に、敵の位置が表示されているから

天井裏とか、床下とかは分からなかった。


 俺は、一旦入力作業をやめた。


〔それじゃあ、私も一休みね。でも、ご主人様、戦いは別だから、私も使ってね〕。


と言われたが、武器を切り替えるつもりはない。俺は、天井に向けて、銃を構えた。

敵は、丁度、俺の真上に移動した。


《マスター!敵は床下に移動しました》

「えっ!」


その言葉を聞いて、思わず飛び退いた。

次の瞬間、俺がさっきまで居た場所から、ソイツは、飛び出してきて


「ウフフフフフフフフ」


と笑っていた。


 現れたのは、さっきの二人よりも背が高いというか、

二人とは違い大人の女性であった。ボサボサのセミロングの髪にボロボロの服。

手には大きな鉈を持っているが、先の二人に、比べると、アンバランスな所がない。

表情は、最初の少女の様に笑顔であるが、表情自体は不気味ではない。

ただし、笑顔で鉈を手に襲い掛かって来る姿は、やはり怖かった。


 真下からの奇襲は、避けられたものの、それでも近距離だったので、

攻撃を避けきれず


「グッ!」


少女の時の様に腕で防ぎ、同じ様に押し返そうとしたが、


(重い……)


大人だからか、最初の少女よりも一撃が重く、押し返すのに手間取った。


「うおおおおお!」


掛け声で気合を入れて、どうにか押し返し、鳥もちを撃ち込んだが、

敵の力は他の二人以上で、一発だけでは動きを抑えきれず、

更に二発撃って、敵の動きを封じ、部屋を飛び出し、次の部屋に向かった。


 そして次の部屋、扉には4に翻訳される文字が書かれている。

この部屋も殺風景で、部屋の中央には、複数のロープがつり下がり

がんじがらめになっていて、巨大な結び目となっていた。


「知恵の輪だな」


ラウラの話では、この結び目を解けばいいらしいが、


「どうやって解けばいいか、私にも見当がつきません」。


との事。


 実際に、触ってみたが、結び目は硬く、どうやって解けばいいか見当がつかない。

そしてクラウ達も、何も言ってこないので、彼女達も、同じなんだろう。


(結び目……)。



 結び目を解こうと、ロープを弄っていると、

何か引っかかりの様な物を感じ、同時に大十字の顔が、頭に浮かんだ。


(あいつ、結び目がどうとか言ってたような……)


内容は思い出せないし、そもそも結び目以外に、

今回の事に関係があるのかどうかも、分からなかった。そうこうしている内に、

扉を破壊しながら、斧を持った少女が現れたので、鳥もちで、動きを封じ、その場を後にした。

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