第149話 追憶
魔導図書館にある司書長室。
そこで、トイロトの持つスキルでニコたちのスキルを検証することになった。
スキルの詠唱方法を調べるのだ。
トイロトの持つスキルは特殊な代物だ。
スキルの権能を調べるスキルではない。
対象者の記憶を覗くスキルだ。
覗くと言っても、トイロトが見るわけではない。
要は、自動筆記のスキル。
対象者の深層の記憶を、スキルが取り出して書き出すスキルだ。
そのスキルを使って、彼女たちの深層にあるスキルの呪文を書き出そうというわけだ。
呪文が書き出されないスキルは、自動発動型のスキルというわけだろう。
演武祭でムウちゃんはミキュロスの魔法を打ち消していた。
おそらく、それは自動発動型のスキルだからだ。
まずはライカからだ。
彼女も例のごとく、二つの強力なスキルに三つの未知のスキルを持っていた。
彼女の持つスキルは五つ。
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自分の移動速度を底上げするのが、この
戦士系のジョブを持つ人間が発現させるが、元来珍しいスキルらしい。
これは自動発動型のスキルだ。
演武祭の帰り、ライカが一瞬で帝都の騎士たちをやっつけていたが、その時にもこのスキルは起動していたのだろう。
ライカの足がめちゃくちゃ速いのかと思っていたが、これはそういうことらしい。
そして、
このスキルを持っている人間は早死にする。
そんなワケありのスキルだ。
その謂れは、このスキルの権能に由来する。
仲間に向けられた魔法のターゲットを自分に変えてしまうスキル。
それはつまり、騎士なら盾役として重宝される反面、敵からの集中攻撃に遭うということを意味する。
このスキルを持つ騎士の数は少ない。
戦場で生き延びるのが難しいからだ。
それでも、相手の目標を一点に絞れる意味で戦場においては大変に重宝されるのも事実だ。
まさに、前線のタンク役にはうってつけのスキル。
そして、トイロトの自動筆記により、残る三つのスキルの呪文が明かされる。
その呪文とスキル名から、ある程度のスキルの権能は見えてきた。
中でもわかりやすかったのは、
これは、
前線を受け持つ被ダメージの多いタイプの兵士としては、破格の性能を持つスキルと言えるだろう。
もっとも、その抜きん出た素早さからダメージを負うことが少ないライカには相性の良いスキルとは言えないかもしれないが。
それでも、
スキルの構成としては、やはり前線を受け持つタイプと言える。
呪文がわからない以上、どんな権能かは推測の域を出ない。
もうすでにライカは使いこなしているのかもしれないし、
ひとまず、その二つのスキルは要検証ということで、ムウちゃんのスキルを調べることにした。
ムウちゃんのステータスプレートには、彼女のステータスとスキルが刻まれている。
その銀盤の名前の欄には、ムウちゃんと刻まれていた。
ニコとハティナによると、彼女には元々名前が付けられてなかったのだろう。
そして帝都でイズリーに無理矢理、名付けられた。
それが真名として定着したようだった。
つまり、大陸一のアホの娘であるイズリーが名付け親というわけだ。
……不憫である。
ムウちゃんの持つスキルも五つ。
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搦手としては最高峰のスキルだそうだ。
そして、
自分で起こした衝撃を飛ばしたり、その場に留めたりすることが出来るらしい。
見えない衝撃を滞留させておくことで、地雷のような罠を仕掛けられるのだ。
とある大国の軍隊が、このスキルを持つ敵の魔導師によって森林でのゲリラ戦に持ち込まれて壊滅した、なんて逸話もあるらしい。
トイロトが
ムウちゃんの持つ残りのスキルのうち、一つは自動発動型だった。
おそらく、ミキュロスの魔法を打ち消したスキルだろう。
そして、残りの二つもかなり強力だった。
このスキルは、自分の分身を創り出すスキルだ。
その数は、おそらく十体。
お前は忍者か。
なんて僕は思ったが、このスキルのヤバいところは、その十体の分身体もスキルや魔法を使えることだ。
魔法を打ち消す術者が全部で十一人になるわけだ。
数の暴力にも程がある。
最後に、
これは、相手から視力を奪う権能を持っていた。
視力を奪うというより、こちらも相手に幻影を見せる力に近いだろう。
相手の視界を暗闇で塗り潰してしまうのだ。
弱いはずのない権能である。
しかし、ムウちゃんの持つスキルは
舌の無い彼女は言葉を紡ぐことができない。
要は、宝の持ち腐れなわけだ。
僕はムウちゃんのチート能力を惜しんでいると、ニコが冷静に呟いた。
「わたくしの
「その手があったか!」
僕は静寂の立ち込める魔導図書館で盛大に叫んだ。
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