第8話 勇者カッピー港町を目指す。

 



 前回、女神様に与えられた能力により、助っ人を呼び出すことに成功した私達。


 さて、そんな私達、勇者パーティーですが、その助っ人さんの活躍により、ものの数分で盗賊団は血祭りにあげられてしまいました。


 筋肉モリモリマッチョマンのメガネさん、メガネに似合わず強すぎです。剣を一振りして人がゴミのように飛んでいく様はもう無双か何かかと思いました。


 え? 私達の視聴者強すぎない? クッソワロタ。


 味方でよかったと常々思います、あの人が敵とか私達、蹂躙されてしまいますからね。



「あ、ありがとうございます…えっと…」

「某はGとお呼びください、カッピー氏! いやはや、間に合って何よりですな!」

「いやぁ、助かりましたGさん!」



 そう言って、満面の笑みで感謝を伝えるナッチー。


 何というか重量感ある剣を携えていらっしゃるので圧が凄いです。でも、優しげな雰囲気がある方でよかった。


 いや、本当にピンチでしたしね、女神様の能力がなかったらどうなってた事か。


 とりあえず、私は召喚したGさんと握手して改めて感謝を伝える。



「ありがとうね! Gさん!」

「いやはや! こちらこそ! カッピー氏の柔らかい手に触れられて感激ですぞ!」



 そう言って、満面の笑みで答えてくれる視聴者Gさん。


 すると、Gさんの身体がだんだんと光の粒子になって消えていく、どうやら、戦闘を終えると召喚された人は自動的に元の場所に送還されてしまうシステムのようだ。


 あっ、あっ、も、もっと本当は感謝の気持ちを伝えたいし、お礼がしたいんだけども。



「おや、時間みたいですな…ふっ、またピンチの時は呼んでくだされ、いつでも駆けつけますぞ」



 そう言って、戦士は華麗にさるぜとばかりに踵を返して告げるGさん。


 うーん、こんなに貢献してくれたGさんに何か出来ないかな? …あっ! そうだ!


 私は何か閃くと、消えかけているGさんの元に駆け寄っていく、よし、消えるまでまだちょっと時間はあるみたいだ。



「およ? カッピー氏? どうなされた?」

「Gさん! Gさん! ちょっと屈んで?」

「ん? こ、こうで御座るか?」



 そう言って、私に言われるがまま、少しだけ屈んでくれるGさん。


 すると、私は笑みを浮かべると、屈んでくれたGさんの頬にチュッっと優しく接吻してあげる。


 ちょっと、今はちゃんとしたお礼は出来なかったから代わりと言っちゃなんだけども、ほっぺキスくらいしか思いつかなかった。


 すると、この私がとった行動でコメント欄はもう凄いお祭り騒ぎになっていた。



『うおおお! G氏! 羨ましいぃ!』

『カッピーマジか!』

『これは次回、俺の出番かもな』

『クソー! ちょっと鍛えてくる!』



 視聴者Gが受けた頬キスに狂喜乱舞である。あ、これ多分、炎上したりしないよね? 大丈夫だよね?


 すると、消えかけているGさんは涙を流しながら親指を私の方に立てて、まるで、某機械兵が溶鉱炉に沈んでいく時のようなサムズアップをしてくれた。


 あ、い、いや、泣くほどだった!?


 そして、Gさんは感動のあまり、言葉に詰まりながらもこう告げてくる。



「あ…ありがとうカッピー氏…、アイルビーバッグ…!」

「うん! じゃあまたね!」



 そして、Gさんは光の粒子となって消えていった。


 そんな光景を目の当たりにしていたナッチーとシーちゃんは何故か顔を真っ赤にしてこちらを見つめてきている。


 あ、あれ? 私、なんかまずい事しちゃったかな?


 すると、ナッチーはスパンっと軽く私の頭を叩くと顔を真っ赤にして動揺しながらこう告げ始める。



「な、何やってんの!? 嫁入り前の娘が!! ほ、ほっぺにチューなんて!!」

「あぅ…で、でも、他にお礼する物も無かったから…」

「少しは考えろ!? 視聴者とはいえ初対面の人間だろっ!」



 そう言って、お二人からお説教を食らってしまいました。


 う、うーん、でも善意からの感謝を込めたつもりだったんだけど、まあ、ほっぺにチューなんてそんなに気にする事でも無いと思うんだけどなぁ、良い人そうでしたし。


 でもまあ、確かに距離感考えろって言う二人の意見もわかるにはわかる、うん、次からは気をつけよう。


 そして、リーンさんはニコニコしながら動揺している二人を宥めるようにこう告げる。



「まあまあ、反省してるようですから…今回は多目にみましょう? ね?」

「……確かにGさんのおかげで助かったのは事実だしね…感謝はしてる」

「真っ先に駆けつけてくれたから多少はね? ほら、そういうわけですよ」



 そう言って、リーンさんに便乗して私もナッチーを宥めるように気をつけながらそう告げる。


 私の事を思って言ってくれてるんだろうしね、うん、今度はほっぺにキスはしないでおこう。あれは今日限定です。


 まあ、でも視聴者さん達は実に嬉しそうではあった。


 元々、画面の向こう側で距離があった私達と関わる事ができるというのは本当に彼らにとっては夢に近いものがある。


 それに、Gさんのアカウントをよくよく見てみたら、私が初期の初期、Vduberとして始めたばかりの頃からよく見て応援してくれていた古参中の古参の方だったらしい。


 うん、それならほっぺにキスくらい安い物である。真っ先に駆けつけてもらったしね。



「まあ、何はともあれ、イシューはクリアしたんだ。先を急ごう」

「問題解決ね、問題解決」

「あ、う、うん、コホン!…そうとも言う」


『意識高いっすなぁ』

『サンキューナッチ!』

『ナッチー(職業:翻訳家)』



 そう言って、ナッチーの指摘に顔を赤くしながら視線を逸らすシーちゃん。


 まあ、コメント欄の皆もシーちゃんのキャラを大体分かってきたようだ。うん、そうなんだ、悪い子じゃないんだよ、ちょっと変わってるだけで。


 それも一種の個性だよね、シーちゃんらしさが出てて私は良いと思う。


 そして、再び原付バイクに跨る私達、目指すは港町シーランドだからね、先はまだ遠い。


 それから、原付バイクを走らせた私達はまた視聴者さん達と他愛のない会話をし始める。



「さて…、あれだね、原付走らせてるだけなのもなんか見栄えしないから質問コーナーでも読んでみよっか」

「おっ! 良いね! 面白そう」


『お! どんな質問やろ!』

『おっす、帰ったぞ』

『あ、お帰りGニキ、お疲れ様』



 そう言って、Gさんもどうやら戻って来たみたいだ。


 さて、良いタイミングで来たところで早速、質問の方を読み上げていこうかな? よし、まず一つ目からいってみよう。


 原付バイクを運転しながらナッチーはデジタルで表示されているコメント欄の脇にある質問ボックスから質問を読み始めた。



「んー、なになに? …質問です! カッピーの今日のパンツは何色ですか!」

「おわっ!? ま、また凄い質問が来ましたね…」

「えー、カッピーのパンツはねぇ…私も今日チラッと見たんだよね」

「あー! あー! ナッチーダメです! おやめください!」


『!?』

『ほほう、詳しく聞こうか』

『音声録画した』

『パンツ脱いだ』



 ほらー! そんなこと言うからみんな興味津々ではないですか! なんで私の下着にそんなに食いつくんですかね!


 というか、私の視聴者いっつもパンツ脱いでるな…、風邪ひきますよ? 本当に。


 というか私のパンツ見たっていつ? 戦闘中かな? 確かにスカートだけども、そんなに激しく動いてないように思うけど。


 私がそんなことを考えてるとナッチーはニコニコ笑顔でこう告げて来た。



「ウィリーした時に見えたよ、良いパンツだった、ご馳走様」

「うわー! あっ! あの時っ!? もはや事件ではないですかっ!?」


『盗賊顔面ウィリー事件』

『黒歴史でワロタw』

『ロー入っちゃって、もうウィリーさ!』

『カッピーパンツウィリー事件』

『草』



 コメント欄は大歓喜に包まれた。こんな賑わい方は見たくなかっだぞ、おい。


 どうやら私が原付バイクをウィリーさせた時に見えたらしい、ちくしょう! こんなんなら下にジャージ履いとくんだった! もう遅いけど。


 ニコニコ上機嫌のナッチーはもはや、カミングアウトになんの躊躇も無いのかこう告げる。



「可愛い水色だったわね、あんなパンツ履くんだ? カッピー?」

「あー! ついに言ったなー! 言ったなー! 覚えてろよー!」


『水色か…』

『ふぅ……』

『クソっ! あともうちょい早く召喚されていれば!』

『無念だったなGニキ』

『水色とはやりますねぇ!』



 そう言って、大盛り上がりのコメント欄。


 何というか、みんな欲に忠実なんですね、ここまで来るともはや感心というか何というか色々凄いですよ。というか、私のパンツを見ようとすな!


 そんな中、皆が騒いでる中、衝撃的な核弾頭が意外な人物から投下される。



「あら? カッピーちゃんは水色なの? 私は黒のTバック履いてるわよ?」

「お、お姉ちゃん!? ちょっとっ!?」


『ファッ!?』

『強い(確信)』

『リーンさんマズいですよ!』

『決めましたリーンさんのファンになります』

『これはナッチーも履いてるな』


「履いてないわ!!」



 なんと、リーンさんが自分の履いてる下着をカミングアウトしたのである。


 これにはナッチーも動揺せざる得ない、いや、リーンさんメンタル強すぎでしょう。なるほど、これが大人の余裕という事か。


 というかそんな過激な下着なんて付けてもいいんですか…。勇者より勇気あるぞこの人。


 さてさて、そんな話を繰り返しながら、走る事数時間。


 話してると時間が過ぎるのって早いですよね? もうだんだんと日が暮れ始めて来た頃でした。



「あ、アレ! 見てよみんな! 灯がついてる!」



 海岸に沿うように点灯する街明かりが目に飛び込んできました。


 あれは間違いない、おそらくは港町シーランドの街明かりだろう。しばらく走ってたので、もうお尻も結構やばい、うん、誰だ原付で5000kmも走り切ろうとか言った奴は。


 あ、私だったわ、ブーメランが刺さるンゴ。


 何はともあれ、こうして、盗賊を退けて無事に港町まで辿り着けたのは良かった。


 宿でゆっくりステータスも確認できるしね。


 私達は街に着くとすぐに宿を原付バイクで周り、探しはじめる事にした。

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