第4話 桜の散る公園で

 私とさくらは小学校からの親友だった。毎日一緒に学校に通い、毎日互いの家を行き来した。

 将来の夢を語り合いながら中学、高校も同じ学校に進んだ。


「先生になりたい」


 そう言う私に、「葉子ならなれるよ」と励ましてくれる。そしてさくらは、「自分も葉子と一緒に先生を目指すから」と言い、毎日どちらかの部屋で、いつも隣にくっついて勉強を一緒にした。


 そして高校2年の3学期、私の成績は伸び悩み、期末テストは惨憺たる結果だった。そして桜が咲き始めた桜並木の公園脇の土手を、私は希望の大学に行けそうもないとメソメソと泣き、さくらに肩を抱かれ励まされながら歩いた。

 途中の公園脇にあるベンチに腰掛けて、すっかりさくらにもたれて泣く私。さくらは私を両腕でギュッと抱き寄せ、「まだ一年ある。大丈夫」と言いながら左手で私の頭を引き寄せた。

「でも、自信ないんだよ」と泣きながら私がさくらの顔を見上げたとき、突然さくらが私に顔を近づけたかと思うと、私にキスをした。


 あまりに突然で私は抵抗もしなかった。いったい何が起こったのか考える余裕もなく、桜の舞うベンチで私は抱きしめられ、さくらの柔らかい唇にまだ経験のない唇を奪われながら黙って目を閉じていた。

 どれくらいそうしていたのか、私が少し目を開けると、そこを通りがかった幾人かの人が、桜並木の下の女子高生のキスシーンに驚いたように遠巻きに見ながら通り過ぎて行くのが見えた、ふと我に返った私は、そっとさくらを押して離した。


「あっ、ごめん」

 さくらはそう言って私を見つめる。

「なんで?」

 そう言うことが精一杯の私。

「そうじゃなくって。あのね、そうじゃなくって」

 慌てたようにさくらは言った。


 それから私たちは家に帰ったんだ。いつもは手を繋いで帰る道を、少し離れて歩きながら。


 

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