敵の正体
Side 真進 ユウト
「ロボットマン!? どうしてここに!?」
出動要請を聞いて急ぎ、基地へと帰投したところで――開けた場所でロボットマンが着地。
そこで護衛の森川さんから通信機を渡される。
『聞こえるユウト君!?』
そこから慌てたようなオペレーターの前川さんの声がした。
「ああ。今眼前にロボットマンがいるんだが」
『こちらでは確認できたわ。勝手に出動して――それよりも聞いて! 今回のMEはここを目標地点に次々と降下して来ているわ! 敵の数は四桁を超えてる!』
「ついに敵も本気になったと言うことか――」
『すでに衛星軌道上では先日出会った黒いロボットが戦っている。すぐに出動して出来る限り数を減らして!!』
「了解――」
と返すとロボットマンから光が照射され、コクピットが開き、そこに体が誘導される。
前川さんが大声で「気をつけて!!」と叫んだ。
僕は「言ってくるよ!!」と返した。
大文字さんが何やら大声で指示を出しているが自分達も戦うつもり満々なのだろう。
☆
『ロボットマンか。数が多い。分かっているな?』
「ああ」
コンビニ感覚で何度も出入りしている宇宙。
そこでロボットマンで辿り着くと先日出会った黒いロボットがMEと戦っていた。
次々と敵を倒しているがいかんせん敵が多い。
MEは倒された味方を盾にして四方八方から白兵戦を挑んでくる。
自分も即刻射撃武器――目や胴体からの光線を長時間照射で敵を落としていき、面白いように敵が爆発していく。
近付いてきた敵は殴り飛ばす。
大気圏外なので周辺の環境に配慮無く音速の速度を出して敵を攪乱し、敵を撃墜していくがそれでも敵の数は多く、次々と地球に降下していく。
そして――
「戦艦型!?」
MEの戦力だろう。
艦首が昭和の悪者メカの頭部っぽい戦艦が数隻現れた。
全高100m全長、250m。
多数の砲門を付けていてそれが数隻現れた。
「どうする!? 地球に降下するか!?」
『今俺達が離れたらこの場にいる連中が全員降下するぞ! 全て倒しきっても被害が甚大になる!』
確かに言いたい事は分かる。
この場にいる四桁近いMEと戦艦が地球で暴れたら降下地点――自分が住んでいる町やロボットマンの基地周辺は焼け野原になる。
それを分かってはいるが「じゃあどうしろと!?」と僕は叫び返した。
『大丈夫。手は打ってある』
そう言うとロボットマンが反応を捕らえた。
『久しぶりじゃな。ユウトよ――』
懐かしい声――おじいちゃんの声と一緒に巨大な物体がワープアウトしてきた。
白い純白の巨大船。
そして見たことのない50m級のロボット達。デザインも今風な感じだ。
それらが現れて状況は逆転した。
次々とMEの戦力が削られていく。
「おじいちゃん・・・・・・」
『まだそう呼んでくれるのじゃな・・・・・・』
「あ、ああ・・・・・・」
上手い言葉が見つからなかった。
『ともかくつもる話は後じゃ。MEは何処かからワープアウトして来ているが・・・・・・恐らくこの太陽系では月面であることが判明した』
「月から地球近くまでワープアウトしてきてたのかよ」
ずっとMEは何処から来るのだろうと疑問に思っていた。
どうして月なのかはともかく、そこからワープして地球圏の近くまで飛び込んで来ていたのだろう。
『今迄は一種の威力偵察に終始していたようじゃが、戦艦まで出してくる辺り本気のようじゃ。ユウトとホークの二人は地球に降下した連中を叩いてくれ』
『聞いたな。行くぞ?』
「ああ」
念のため、僕は司令の藤堂さんや前川さんに判断を仰ぐことにした。
『状況は理解できんが・・・・・・基地周辺では激戦が行われている。鉄騎隊も前線してくれているが長くは保たんだろう――宇宙の状況は博士に任せられるならすぐに援軍に来てくれ』
と、藤堂さんが状況を説明すると同時に話を簡潔に説明してくれた。
「すぐに降下します――」
そして俺とホークと言われた・・・・・・黒い機体のパイロットの名前だろうか? は一緒になって地球に降下した。
☆
個性豊かなデザインが揃う鉄騎隊の戦いを見るのを生で見るのは初めてだ。
戦況の方だが――MEのテクノロジーを導入した兵器――戦闘機や戦車までも投入し、基地周辺は総力戦と化している。
ブルーリベイクを中心とした戦闘であり、見たこともあるロボットや見たこともない新型も混じっている。
それだけでなく、武器を持たせただけの作業用マシンすら投入していた。
今は拮抗しているがこのままではやられるだろう。
僕は迷わず、ブルーリベイクの援護をするように敵を薙ぎ払っていく。
黒いロボットも此方の意図を理解しているのか次々と空中で敵を撃破していく。
と言うか空を飛べたのかあのロボット。
「倒しても倒してもキリが無いな・・・・・・」
『だが敵の生産力も無限ではない。それに奴達にも事情がある。だから勝負に出たのだろう』
「MEのこと、知ってるんだな」
ホークと呼ばれた黒いマシンのパイロットの物言いにふと疑問を覚えた。
戦闘中なのか、素っ気なく彼は『まあな』とだけ答えた。
『すまん!! そっちに敵の指揮官が降下した!』
おじいちゃんから緊急で通信が入る。
その報告に「えっ!?」となった。
「この乱戦下でか!? てかMEに指揮官とかいるのか!?」
確かに以前の戦いでそれっぽい奴はいたが――
『来るぞ!!』
ホークから警告がくる。
横三段の赤いラインが入った顔に二本角の頭部。
白くて刺々しい。
どこか昭和の敵ロボ感漂うがこれまでとは違う雰囲気を持っているのは一目で分かった。
双方ともに戦闘も一時中断され、新たに現れた新手のMEに僕達地球人は注視した。
『いやはや。この星にもいたのか、ロボットマン――』
と、敵が流暢な日本語で語りかけてくる。
スピーカーなのだろう。
それよりも喋った事に驚いた。
「アイツもMEなのか?」
『エムイー、この地球ではそう呼ばれているのだね。私はバルジア。無能な部下に変わってこの星の侵略に来たエリート戦士だ』
と、丁寧に自己紹介する。
新たに判明した情報を聞いてちょっと頭がこんがらがってきた。
『本来ならば地球の侵略はとっくの昔に完了していなければならないのだが、全く困ったものだ』
「侵略ってただの虐殺じゃねーか!?」
『それは仕方ない。知的生命体はバカだからね。同じような過ちを何度も何度も繰り返す。そう言う教育が必要なのさ』
「そう言う教育って・・・・・・」
他の面々も絶句しているか同じような感情だろう。
まさか敵性宇宙人とのマトモなファーストコンタクトがまさかの民族浄化とか虐殺宣言だったのだろうから。
『想像はしていたが改めて聞かされると辛い物があるな』
とホークも漏らしていた。
『地球人は我々が危惧した典型例のもっともな形さ。君達は宇宙、外宇宙に飛び出してもきっと争いの種を蒔き続ける。それを刈り取るのが使命さ――』
「ああうん。それに関しては同意するわ」
『お前――そこは言い返す場面だろう?』
ホークにそう言われたが、今の世界情勢を見ると強く言い返せないわ。
そう言うのはどっかの漫画だかラノベのヒーローだかに任せたわ。
『ロボットマンのパイロットは中々物分かりがいいね』
「確かにアンタの言い分は一定の理はあるがお前らのやってる事は大義名分を掲げて殺し回ってるだけじゃねーか」
確かにこのロボット、バルジアの言う事はムカツク人もいるだろうが間違いとは言えない。
人間は産まれや身分、肌の色や思想などで争いを起こしてきた生物だ。
それはきっとこの先も変わらないだろうがMEのやってることは"争いの種を刈り取る"と言う大義名分を振りかざして無差別に侵略活動しているようにしか見えない。
『我々に意見すると?』
「根本的に気にくわないんだよ。偉そうに上から目線で語りやがって。自分達は神に選ばれた存在だとでも? それとも自分達が神かその代理人だとでも? 思考回路がイカれた機械の集まりじゃねーか」
『それが遺言かね。ロボットマンのパイロット』
「俺の名は真進 ユウト――お前を倒す物の名だ。覚えておけ」
それが戦闘再開の合図だった。
☆
僕はバルジアとタイマンを張っていた。
空中を飛び回り、時に接近戦、時に光線が飛び交う戦い。
『このロボットと戦うのは惑星テスラとの戦い以来だ』
「惑星テスラ?」
ロボットマンと戦った事があるのにも驚いたが、惑星テスラと言う単語に疑問が生じた。
『おや? 君もテスラ人だろう?』
「なんだと?」
『スキャンした結果、間違いない。DNA構造は間違いなくテスラ人の物だ。まあ地球人とあまり変わりがないから分からぬのも無理からぬことだがね』
(つまりおじいちゃんと俺はテスラ人で、地球に逃れた生き残りと言う事か)
このタイミングで自分の出生が明らかになるとは間が悪いと思った。
『それにしても惑星テスラもこの地球とよく似ている――あの星もこの星と同じく争い合っていた――まあ我々が現れた事で同族同士の争いをやめたようだがその時にはもう遅かったがね』
(嘘は言ってないんだろうな・・・・・・)
テスラ人はスパ○ボの地球のように侵略者が現れても同じ星の人間同士で戦い続けていたんだろう。
それも手遅れになる段階まで。
おじいちゃんが地球人に対してロボットマンのような戦闘ロボットを作らず、軍事技術を中途半端に放出していたのはこの辺りが関係していたのかもしれない。
ロボットマンと言うダサいネーミングを付けたのも兵器としてではなく、平和の使者として完成させたかったのかもしれないと考えるのは間違いだろうか。
『ロボットマン――テスラ人の遺産――中々興味深い。これをもっと早く完成させて投入していればテスラの運命は変わっていたかもしれない――』
聞き出せる情報はここまでだろう。
十分過ぎる程だ。
「なあおじいちゃん。正直言うと、心の奥底でロボットマンに乗せられたこと、ずっと憎んでたよ。どうして俺がこんなことしなきゃいけないんだって・・・・・・でも――」
『なんだ?』
僕の突然の語りにバルジアは警戒した様子だった。
構わずに僕は続ける。
「明日世界を滅びるならどうしたいかって――」
マリとモミジの顔が頭に思い浮かび、彼女たちの言葉が頭の中で響き渡る。
そして――
「まだマリとモミジに答えは出せていないんだ!! 未来を切り開いて答えを告げる! それが僕の――ロボットマンで戦う理由だ!!」
『急に動きが――』
相手の光線を真正面から受け止め――バリアを張って一気に近寄り、殴り飛ばす。
そして追い打ちに双眼からレーザー、胴体から光線を放つ。
『ちっ調子に乗るな!!』
諸に攻撃を浴びても、地面に着地。
しかし俺は――
『残像だと!?』
『マッハ二十のスペックは伊達じゃない!!』
バルジアの周囲に残像が浮かぶ。
マッハ二十の超スピードで産み出した――ワケではなく、これはハッタリで実はVR技術を応用して周囲を高速で旋回し、敵を攪乱しているに過ぎない。
しかしバルジアのセンサーの攪乱は成功したようで分身に無闇やたらに攻撃を開始する。
『僕はここだ!!』
『ぐぬぅ!!』
僕はバルジアを頭上から殴り倒した。
怯んだその隙に僕は離脱する。
「僕にばかり集中しすぎたのが敗因だバルジア!! 前川さん!!」
『はい!! 全機、敵指揮官機に攻撃開始してください!!』
オペ―レーターの前川さんの合図で地上に展開していた鉄騎隊がボロボロな体を引き摺ってブルー・リベイクを中心に敵指揮官機に集中攻撃をかます。
『まさかロボットマンは囮!?』
バルジアはようやく気づいたようだ。
賭けの要素もあったが――僕とバルジアが直接対決していくうちに、他の皆で周辺に降下したMEを撃破。
バルジア一体――もしくMEの戦力が残り僅かになったところで総攻撃を仕掛ける。
そう言う作戦だった。
この時点で脱落したロボットや兵器もいるがそれでも想像以上に残っていた。
そこにホークが乗る黒いマシンも攻撃に加わる。
『地球人を舐めるなよ!! ME!!』
ブルーリベイクのパイロット、大文字 豪さんが力強い声をあげて相手が怯んだところを他のロボット達と一緒に接近戦を仕掛ける。
『バカな!? たかが辺境の星の――こんなガラクタロボット如きに!?』
『これは今迄死んでいった地球人の恨みだ!! 受け取れ!!』
そして大文字さんは――自分が乗るブルーリベイクの角からリベイクサンダーを直接バルジアに流し込む。
『ギアロスのエリート戦士である私が、辺境の星の人間に敗れるだと!? こんな事が――こんな事があってたまるか!?』
(ギアロス。それが奴達の本当の名前か・・・・・・)
ブルーリベイクが飛び引き、そしてバルジアが爆散した。
☆
この一日で様々な出来事が起きた。
様々な真実が分かった。
それよりも僕は――
「おじいちゃん――」
「久しぶりだなユウトよ」
僕は基地でおじいちゃんと再会した。
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