自分は何者なのか
Side 真進 ユウト
ロボットマンで戦いに没頭して学校に通えなくなったのは以前も語った通りだ。
残念な気持ちよりも渡りに船と言う気持ちは強かった。
確かに戦いで忙しくて学校に通い続けるのは不可能だったのは現実だ。
だが同時に心が安まらなかった。
自分は元々はあまり友達が多い方ではないし、変な天才科学者の孫息子と言う色眼鏡で見られていたのもある。
おじいちゃんは確かに天才であるのは疑いようもないが、MEが襲来する前は変人のような扱いだった。
そんな知識があるのならもっと世の中に役に立つ物を作った方がいいとかよく言われていた。
勿論そう言う発明もしていたが鉄騎隊のロボットの素体となった巨大ロボットなどの軍事分野に応用できそうな発明品のインパクトが凄いせいもあるのだろう。
話を戻そう。
自分が学校に通わず、今は自衛隊の基地となったロボットマンの格納庫近辺で生活するようになったのは周囲の人間のせいだ。
――いいよな~俺もロボットに乗って戦ってみたい。
――どうしてあいつみたいなのがロボットに乗って戦ってるんだ?
――そもそもロボットマンって言うネーミングってどうよ?
――あいつが出来るなら俺の方が上手く扱える。
これはまだ良い方だ。
――聞いたか? ロボットマンとの戦いで死人が出たんだって。
――じゃああいつ人殺しじゃん。
――あいつが操縦するからそんな風になるんだよ。
などなど。
俺は逃げるように学校を去った。
自宅からも逃げた。
色んな屁理屈を捏ねて戦いに逃げた。
それでも時折思い出す。
そして疑問に思う。
自分は、本当は、何のために戦っているのだろうかと。
世のため、平和のために戦うと言うのが模範解答だ。
だが本音を言えば現実から目を反らしたかった。
自分はあいつらみたいな現実なんてまるで理解していないクソどもより立派な人間でありたいと思った。
だからロボットマンで戦う。
それが自分の正体だった。
☆
「・・・・・・これで満足ですか?」
早朝のロボットマンの基地内。
人気の少ない場所。
そこで大文字 豪さんに全ての胸の内を明かした。
自分は酷い顔をしていると思う。
泣いている。
殴られる覚悟で全て本音を吐き出した。
大文字さんは――
「・・・・・・すまなかった」
大の大人が頭を下げた。
僕は逆に困惑した。
「いや、あの――ここ普通なら一発殴って甘ったれたことを言うなって叱りつける場面ですよね?」
「そう言う人もいるかもしれない。だが・・・・・・今の君を見て自分には出来ない――それに、嬉しかった」
「嬉しい?」
「君はずっと仮面を、本心を押し殺して戦い続けてくれた。増長することもなく、ずっと役目を果たしてくれた。そんな君が自分に本心を打ち明けてくれた。それがとても嬉しかったんだ」
「はあ・・・・・・」
「大丈夫だ。これまでの戦いの中で君はなんだかんだで誰かのために戦い続けてきてくれた。ユウト君、君を理解してくれている人は君が想像以上に居るはずだ」
「そ、そうかな?」
だけど正直恐い部分もある。
しかし大文字さんの言うとおり自分は確かに何だかんだ言って誰かのために戦い続けた側面もある。
それもまた事実だ。
大文字さんに勇気づけられて僕はある告白をする。
「・・・・・・自分、今休暇中ですから・・・・・・ちょっと住んでいた場所に戻ってみようと思うんです。ちょっと付き合ってくれますか」
「分かった。車を用意しよう」
アッサリとOKが出た。
☆
一応厳重な警備の中で俺は基地から出た。
自分が乗っている車の前後に護衛の車両が。
さらに上にはヘリが。
もっと上にはジェット戦闘機すら待機しているらしい。
「凄い警備ですね」
シートベルトをつけて後部座席に乗る。
隣には護衛の黒服の女性が乗っていた。
黒く長い髪の毛、ゆるふわで優しそうな大人の女性。
ホッソリとした体付き、やや胸が大きめ。
堅そうなスカートからはしなやかそうでホッソリとした太ももや膝の足のラインが丸見えである。
運転は大文字 豪さんではなく、彼は助手席に座っていて同じく黒服の男が運転している。
「これでもまだ控えめなぐらいです。アナタはある意味大国の大統領並かそれ以上の存在のお立場なのですから」
「はあ・・・・・・」
と隣にいた女性が語る。
自画自賛するつもりはないが確かに自分が死ねばロボットマンは動かせない。
そうなればMEの物量に飲み込まれて人類は敗北する。
もっともいずれは時間が解決する問題だろうが。
あの黒いロボットの件もあるし、お爺ちゃんも行方を眩ましながらも人類のために自分にしか出来ないことをやっているのだ。
泣き言を言っている場合じゃないん・・・・・・だけどなぁ・・・・・・
いかん、また泣きそうになってきた。
「どうかされましたか?」
隣の護衛の女性が心配そうに尋ねてきた。
僕は「なんでもない」と視線を逸らす。
「申し遅れました。護衛の担当をさせて頂いています。森川 朱美と言います」
「どうも――」
「それで何処へ向かいますか?」
「・・・・・・家と学校ぐらいしか思いつかない」
「分かりました」
そう言って彼女はイアホンに似た無線機で指示を飛ばす。
本当に自分はとんでもないご身分になったようだ・・・・・・
☆
敷地が広い家はそのままだった。
ちなみに周辺の民家などは国家権力が物を言わせて買い取り、代わりに護衛の人が住み着いている。
こう言う時を想定してくれていたのだろうか。
他にもパトカーや軍事車両が街を走り、物々しさを感じる。
そりゃそうだ。
先日、離れた場所で50m級のロボットが派手に戦いをしていたのだから。
そうでなくてもそう言う事態は予測できる。
それでもまだ地元の人間が住み着いていると言うのはちょっと考えられない事態だ。
ふと外国人の姿が見えるがジャーナリストか観光客か、それともそう言う風に装ったスパイか・・・・・・ともかくこの田舎町の経済は心配しなくても良さそうだ。
「あの子は――?」
ふと気になって――僕は車から降りた。
玄関の近くに人がいたのだ。
クラスメイトの女子二人。
まず一人は長い黒髪の少女。
知的そうで大人びて落ち着いた雰囲気の女の子。
綺麗ではあるが遠目で見ると人形のような感覚になる。
名前は四葉 マリ。
≪軍事企業の娘≫として有名な女の子だ。
もう一人はフワフワしたセミロングの純白の髪の毛。
顔立ちもとても可愛らしく、童話の世界から抜け出たようなプリンセスのような印象を与えてくれる。
名前は秋篠 モミジ。
自分が元居た≪学園一の美少女≫と言えば彼女である。
二人とも私服姿。
平日の、まだ普通の生徒なら学校に通ってなきゃいけない時間帯である。
一体どう言う事だろうかと思いながら車は停車した。
END
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます