ロボットマン・出動不能

 Side 大文字 豪


 俺は――ロボットマンの基地とは違う場所にある極秘施設。

 強いて言うならば超巨大格納庫と巨大研究施設。


 そこで俺は戦う準備していた。


 なぜなら想定できる範囲の中で最悪の事態だ。


 ロボットマンのパイロット、ユウト君が倒れたからだ。


 政治か連中の中には薬を投与してでも戦線に立たせろと言う声があるが――そんな方法で勝ち取った平和など意味があるのだろうか?


 もっとも平和の意味など考えもしない人間が多いのも確かだ。


 自衛隊だって全員が全員、真っ当な自衛官ではない。


 国防のためではなく、自分の将来や生活のために入った人間や、酷い例だと風俗やギャンブルで破滅する自衛官だって少なからずいる。


 だがこれは自衛官云々ではなく人間としてどうなのかと言う問題だと俺は思う。


 それに、言い訳がましくなるがたった一人の少年に地球全体を守らせるのなど、無茶があったのだ。


 だけどそれが今まで出来てしまっていたからこうなるまで止められなかった。


 その一方で世界中の誰もがこの最悪の事態を予期し――戦後の権力闘争も考えているとは思うが――世界各国は総力を挙げて対抗手段を作り上げていた。


 幸いにしてロボットマンの――真進 ユウトの活躍で地球経済はまだ致命的なダメージにはなってない。星間戦争している現状を考えればこれは奇跡であり、偉業と言っていい。


 十分に活躍してくれた。


 今度は俺達が血を流す番だ。

 

 もっとも、大人の意地だとかエゴだとか言われたらそれまでだろうが・・・・・・


 眼前の巨大格納庫には真進 ユウトの祖父、真進 真太郎博士が残したロボットの素体を改良した物やそれを運搬する輸送機が並んでいた。


(皮肉なもんだ。あれだけ無用な物だと叫んでいた物がこうして実戦に投入されるとは――)  

 

 実はと言うとXデイ――MEの襲来の時から既にロボットは存在した。

 真進 真太郎の博士が開発、製作したものだ。

 世間からの反応は凄まじい物だったが、一方で政治家や官僚、軍人達からは『科学者の娯楽』として一笑されたものだ。

 まあそれでも世界各国は購入したりして一悶着があったが――


 だがMEが襲来、そのロボット工学を順調に取り込んでいって従来の戦闘機や戦車などにそのテクノロジーを導入し、そして遂には博士の置き土産の【改良】に着手し、実戦運用可能なレベルまで導入できるまでになった。


 俺はそのロボットのパイロットになる。

 

(我ながら正気じゃないな――)


 つい先日まで宇宙人と戦うなんて夢物語でしかなかった。

 今はこうして巨大ロボットのパイロットにまでなっているのだから。

 

 そこでコールサインが来た。


 どうやら俺達――鉄騎隊の初陣らしい。


 

 夕日の空の下。


 戦いの場はロボットマン基地の周辺。


 初陣がここだとは皮肉な物を感じた。


 既に戦いは始まっており、試験型戦闘機、戦車が実戦投入されている。


 そこに輸送機から各一機ずつ、次々と鉄騎隊のロボット部隊が降下していく。

 

 だが色々と手探りで様々な形状や、AI制御や遠隔操作型のロボットまでも投入されている状態だ。

  

 俺はその中の一つ。

 青いヒーローロボット然とした全長50mの巨大ロボットに搭乗している。

 顔はニホン角にツインアイ。

 背中の大出力ウイングブースター。

 足にも大出力のブースターが内蔵されている。

 力強い豪腕にマッシブな印象を与えるショルダーアーマー。

 全体的にマッシブなシルエットだが今風のロボットアニメに出てくるような感じで関節などの配置が工夫されている。

 

 名前はブルーリベイク。

 リベイクは焼き直しと言う意味だ。


 見てくれはいいが開発者によるとロボットマンの四十%の戦闘力を出せれば良い方だと言われた。

 

 それを聞いて(成る程な)と思った。


 ロボットマンの戦闘力は高い。と言うかアレが異常なのだ。

 こうして現在敵のロボットとド突き合いしているから分かる。

 

 世界各国が秘密裏にロボットマンを欲するのが分かると言う物だ。

 

 今はそれよりも敵だ。

 

(味方の援護がいい。戦況は優勢だが――ロボットマンがいないだけでこうも変わるのか・・・・・・)

  

 アイスラッガーがついたツインアイの古くささを感じる遠隔操作型の巨大ロボ、メタリオン。 


 無人型のどう見ても敵メカにしか見えない銀色の巨大ロボ、サイクロプス。


 さらには緑色の炊飯器に手足をくっつけて重火器を搭載したようなガンボルトや体が赤いカラーで両腕のドリルが特徴のクラッシュドリラー、黄色い作業型ロボットに戦闘に耐えうるように各部調整や装甲を取り付けた奴までも投入している。


 俺は敵の一体を角からのリベイクサンダーで撃破。

 さらには胴体や肩に仕込まれた光線兵器を直撃させる。


 戦いは順調に見えるが――


『クラッシュドリラー戦闘不能!!』


『ガンボルト大破!! サイクロプス大破!!』 

 

 悲鳴のようなオペレーター達からの報告を耳にする。


『基地守備隊被害拡大!!』


『試験戦闘機隊も被害が広まっています!!』


 味方の巨大ロボットが倒れたことで加速度的に被害が広がっていく。

 

 どうすれば――と思うが――


『敵増援!!』


「クソ!! このままでは!!」


 打つ手無し。

 

 ユウトをむりやり起こしてロボットマンを投入するか?

 

 そんな悪魔の囁きが頭を過ぎった。

 その時だった。


『巨大飛行物体と一緒に米軍が急速接近中!! これは!?』


「なに!? 米軍が!?」


 そんな時だった。


『こちらアメリカ軍――アイアンレギオン隊のオリバー・ランスだ。協定により、手を貸すことにした』


「アメリカ軍が!? いや、今はありがたい!! 加勢してくれ!!」


『了解』


 五十m以上はあろうかと言う銀色の巨大戦闘機だった。

 近くで飛んでいるのは遂先日まで自分が乗っていたような外宇宙テクノロジーを導入した戦闘機だろう。

 

 敵の一体に狙いを定めて機体の各部から光線や機銃、ミサイルを放ち、敵を爆散させる。

 しかし通り過ぎた後を追うように敵が群がるが――


『トランスフォーム!』


「なに!? 変形を!?」


 そしてアメリカの新型は変形。

 ややスマートなフォルムで背中に航空機を背負っているようなシルエットの人型になった。

 両手からビームの刃が発生させ、それで敵のMEを切り裂いている。


『これがアメリカの新型ロボット、シルバーソードさ!』


「アメリカは飛行だけでなく変形機能を持つロボットを完成させていたのか!?」


 流石はアメリカだと思った。

 今は斜陽気味だが技術立国として呼ばれた日本人としては少々悔しくもあるが今は頼もしい存在として切り替えることにした。

 


 米軍の助けもあって戦いは優勢に進んでいく。


 だが無傷とはいかず、俺の機体――ブルーリベイクは右肩から右腕が吹き飛んだ。

   

 全体の何かしらの部分が損傷しており、どうにか騙し騙し戦い抜いた。


 全てが終わった時はすっかり夜になっていた。


 彼方此方で騒がしく復旧作業などが進んでいく。


 同時にほぼ無傷な事が多かったロボットマンの戦闘力の異常性を改めて再認識した。


『日本も中々やるじゃないか』


 と、オリバーは疲れ気味にそう言う。

 シルバーガンもあちこち損傷していて、彼と行動を共にしていた戦闘機も何機か落とされた。

 

 理由はどうあれ、「いや、そちらこそ――アナタがいなければ危なかった」と返しておいた。


『これから本国でトンボ帰りだろう。ロボットマンのパイロットによろしくな――』


「うむ――」


 自分のようにある程度リアルタイムでデーターは送信されているだろうが、念のため本国にデーターを持ち帰るのだろう。


 それに修理だけでなく改修も考えると本国に戻るのも納得だ。


 こうしてシルバーガンとそのパイロット、オリバーは帰還した。 


「ともかく・・・・・・自分達も帰還せねば――このままでは力不足だ――」


 ふと真進 ユウトの事を考える。

 彼は今薬などで強制的に眠らされている筈だ。


 今回の一件を知ったらたぶん、愚痴は言うが「仕方ないな」と納得するんだろうなと思った。


 あの子は賢い子だ。


 逆に怒ってくれた方が精神的には楽なのだが――とも思う。

 

「大変だな。大人というのも」


 ともかく今乗っているブルーリベイクをどこに運べばいいかと考える。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る