第3話 謝罪

―――今僕の前に土下座状態の少女・・・ヴァイスがいる。


遡ること2時間前、帰り道を教えていなかったので、『空間転移テレポート』でヴァイスの近くに現れてみると、ヴァイスは魔物に襲われていた。


「ここ最近魔物は出なかったのにな。」


一瞬で心臓を抜いて殺す。


ありがたい話だ。これで遠出しなくて済む。厄介ごとにも巻き込まれない。



「まるで、おまえを追って来たみたいだ」

「・・・・」



丸腰のまま魔物に襲われて、腰が抜けていたヴァイスは、僕の姿を認めると慌てて立ち上がり、


「・・・おまえじゃないわ。ちゃんとヴァイスお姉ちゃんと呼びなさい!というか・・!追って来たとか怖いこと言わないでよ。」



「心当たりあるけど」とボソッとヴァイスの言った言葉を、少年は聞き逃さなかった。

追及しようとした少年の言葉を阻むように、ヴァイスは文句を言う。


「というか、どうして天国に魔物がいるわけ?」


ことごとく僕の発言を邪魔して、今だに現状把握できていないヴァイスに心で舌打ちをし、淡々と宣言する。


「ここが、天国では、ないからだ。」


「そんなウソには引っかからないわよ。」


自信満々という表情でこちらを見てくる。

論より証拠。『空間転移テレポート』で倒れていたところまで送ってあげた。

装備品は壊れたまま放置されている。

本人も薄々天国ではないと感じていたようで、小一時間ほどで僕が命の恩人だと理解したようだ。・・・・小一時間ほどで。

それからのヴァイスの変わりようは凄かった。敬語を使い始め、試しに『ヴァイスお姉ちゃん』と呼んでみると、壊れたロボットのように平謝り。中でもスライディングしながらの土下座は見ものだった。


―これが今に至るまでの経緯だ。



「なぁ、許すからさ、もう帰ってくれない?」


さすがに炎で焦土化したここで、土下座されているのを人に見られでもしたら大変だ。


「いえ、大変恐縮ではございますが、お礼をさせて頂きたいのです。」

「どんなお礼ができるんだ?」

「うっ・・・それは・・・で、ございますね・・・。」


さてはヴァイス、敬語使ったことないな・・・?


「はっ!思いつきました!でございます。魔物の素材を献上します!」

「自分で採ってこれる。」

「貴方様に採れないものを献上します!!」


僕より弱いのに? という言葉は飲み込んでおいた。


「じゃあよろしく頼むよ。それで無礼はチャラでいいから。」


思考を巡らせる。ヴァイスでも採れる魔物・・・正直植物系の採集でいいのだが・・・本人が魔物の素材って言ってるからなぁ・・・。思い当たる魔物は1匹しかいない。どこにでもいて、かつ最弱の魔物。


「スライム狩ってこい。」

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