第2話 いざ天国へ
目を開く――
どうやら小屋にいるようだ。天井が見える。痛みはなく、視界は良好だ。隣を見ると、花瓶に1輪だけ飾られた、たんぽぽがある。小屋は雑な作りのようで、隙間風がひどい。
「天国のくせに質素ね。」
「天国はお花がいっぱいで、望むものがなんでも手に入ると聞いたのだけど。」
独り言を言いながら、たんぽぽを眺める。それにしても・・・たんぽぽ1輪だけとは。
「何言ってるの?」
「うわっ!?」
突然声を掛けられ驚く。――男の子が上からのぞき込んでいる。
・・・ため息が出るほどの美少年だ。腰には剣を提げている。その剣の
―――さすが天国ッ! 居るのは普通の人ではないと思っていたけど、顔面偏差値高すぎッ!!
「でもね?」
ごほん と咳払いをして続ける
「天国にはちゃんと一面にお花を咲かせなくてはダメなのよ?これは皆の夢なの!美少年だろうと、そこだけは譲らないからね!」
少年は真顔でこちらを見つめている。
えーっと? どういう意味かしら。
・・・・・・なるほど。下っ端の者が口出ししたら天使か神様に怒られちゃうのね!
「大丈夫よ!私もついて行ってあげる!」
神様見てみたいし!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――こいつは何を言ってるんだろうか。
僕がこいつを拾って来て1日が経った。
家の近くの魔物を狩りすぎて、魔物が寄り付かなくなってしまったので、仕方なく遠出したところでこいつを拾った。
森が燃えていたので、興味本位で近づいたら炎の中で倒れていた。
近くにはワイバーンがいたが、今にも少女を殺しそうだったのですぐに処分した。
飛行されたら厄介だったが、既に翼はボロボロだった。少女がやったに違いない。
死にかけだったので、放置するわけにもいかず。かといって回復魔法も使えないので、家に連れ帰ってきた。家になら回復薬があるからね。
そして今。1日僕のベッドを占拠した挙句、『質素ね』だとぉ!?
「あのさ、おまえ何勘違いしてるのか知らないけどさ、お礼とかいらないから出て行ってよ。」
「・・・・」
ぽかん とした表情で少女は双眸を僕に向けている。
おいおい、自分の状況分かってんのか?まさか天国に行ってるとか、本気で思ってないよな?
こんな狂人やっぱ見捨てときゃ良かったかな・・・。
『見捨てる』か・・・
一瞬記憶が蘇る。それは、唯一無二の友との死別の記憶。
やっぱ見捨てられねぇわ。
「・・・・おまえじゃないわ。」
唐突に声がした。
「・・・は?」
え、何言ってんの??
「私はヴァイスよ。ヴァイスお姉ちゃんと呼んでいいわよ。というか呼びなさい。一度でいいから美少年を弟にしてみたかったのよねーー!その夢がここで叶うなんてーー!天国サイコー!いや別に私の弟たちが可愛くないわけじゃないのよ?ただ、それとこれとは話が別なだけでぇ―――」
訳が分からない。なんだこの女は。
とにかく、さっさと帰ってもらおう。
「ソウナンダー。ワーイ。ヴァイスオネーチャーン。ボクイソガシイカラ、マタコンドキテネー。」
「うんうん!もちろん!今度来たらもう帰らないから!じゃあね!」
バタン と扉が閉まる。
「ふう。台風みたいな女だったな・・。」
「あ・・・。」
「帰り道教えるの忘れてたな。」
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