第2話 悪魔

 彼女からフラレた樹は高輪ゲートウェイ駅に遊びにやって来た。

 JR東日本ステーションサービスが駅管理を受託している品川駅管理の業務委託駅。島式ホーム2面4線を有する地上駅。


 駅舎は主に鉄骨造で地上3階、地下1階の橋上駅舎を有する。高さは約30メートルあり、1階がホーム、2階が改札・街への出入口・イベントスペース、2・3階に店舗が入る。ただし、コンコースの品川寄りは2020年の暫定開業時には整備されず、本開業の2024年度以降にオープンする予定。駅舎のデザインは国立競技場や渋谷駅などで実績のある隈研吾が担当し、折り紙を模した大屋根が特徴。照明デザインは面出薫が担当。駅正面看板のフォントには明朝体が使用されている。次世代の駅へ向けての実証実験開催駅となる。


 JR東日本は、新しい技術を導入するショールーム的存在としても位置付けている。屋根は、光は透過させつつ熱は遮断する膜構造で、QRコードを使った自動改札や、人工知能(AI)案内ロボット、無人コンビニエンスストアなど、まるでドラえもんの中の世界だ。

 駅ホーム照明にはパナソニックのPLCによる自動調光調色システムを採用し日中は昼白色、夕方からは電球色に調色される。


 大宮行きの京浜東北線ブルー・トレインのトイレで殺人事件が起こり、被害者の女性が持っていたルビーがなくなっていた。そして、被害者の別居中の夫が容疑者となった。

 列車が緊急停止して樹は驚いた。車内放送で殺人事件が起きたことが判明した。


 樹はエルキュール・ポアロに自己投影していた。

 車内には富豪の佐伯四郎、四郎の娘の涼香、涼香の夫・瀬島壮馬(自衛官)、

佐伯四郎の秘書・瀧川長介、四郎の愛人の月島哲子、骨董商の富樫夏希など様々な人間がいた。


 8月15日、高輪ゲートウェイ駅のホームで渋谷に住む19歳少年が、帰宅途中の東京都職員、38歳男性を線路に突き落とした。被害者の新島沼男は電車にはねられ、翌8月16日に死亡した。事件直後に鉄道警察隊が駆けつけた時に、少年が犯行を認めたため、逮捕された。また、JRは、発生直後から当駅を通る列車の運転を見合わせた。


 少年は事件当日朝に家出していたため、両親が同日夜に渋谷警察署に家出人捜索願を出していた。また、少年は、「ホーム下に人を落とせば、電車にはねられて死ぬ。幼い頃からイジメに遭ってた。15日は終戦記念日、戦いを終わらせたかった。人を殺せば刑務所に行ける。誰でもよかった。」と供述した。また刃渡り約12センチの果物ナイフを所持していた。

 

「戦いってのは内面のことですよね?」

 捜査員たちはビアガーデンに来ていた。新人刑事の根津則夫巡査は言った。

 先輩の原仁志はうんざりそうに言った。

「仕事のことは忘れて飲もうよ?カンパーイ!」🍻


 少年は都内の高校に進学。高校時代の少年は成績優秀で、学校推薦で国立大学進学を希望していたが、家庭が学費を払えないことから進学を断念せざるを得なかった。コロナのせいで祖父、それから父親が亡くなった。


 父は自動車工場で働いていたが、不況で仕事が減り、約6年前に派遣社員になった。しかし、15歳上の少年の兄は私立大を卒業しており、少年は進学をあきらめきれず、高校卒業後に自力でお金をためようとしたが勉強時間を確保できるようなバイトが見つからなかった。 少年の家族環境は、実父とは親子というよりも友達のような人間関係だった。

 簡易精神鑑定では広汎性発達障害と診断された。

 亡くなった新島の妻、史恵は少年が死刑にならないことを悟った。

「あの、悪魔……殺してやる」 

 

 


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