第67話 大統領の乗船
「さぁ、船に乗ったら、まず食事よね、やっぱり・・・何にしようかなぁ~」
「・・・」
「おや、キャシーが何か言うと思ったんだけどな」
「言ってほしいのなら言うけどね、予想していたから、やっぱりね、と言う感じ、カリーだって予想してたでしょ」
「正直に言えば、はい、予想通りの言葉でした」
「アダム、私に寿司盛りAを頼む」
「何、そのAって」
「寿司の盛り合わせに何種類も設定してあります、その中のAです」
「アダム、AからIまでを升目で見せて上げて下さい」
画面が9分割され寿司盛りの種類が表示された。
「私はBでワサビは少なくでお願いします」
ヘレンは即答だった。
「私は巻物が多いFでワサビは普通でお願いよ、アダム」
「私はAでワタビ無しでお願いね。アダム」
「あら、カリーはワサビが苦手なの」
「少しは慣れたのですがもまだまだです」
「デザートは何にしますか」
アダムから問いがあった。
「最近、ずっと、サヴァランかパパナシだけなのよね、少し変えて見ようかしら」
「お母さん、良い考えだと思うけど我慢出来るの」
「問題はそこなのよねぇ~、他の物を食べて見ないと解らないわ、婿殿、何かお勧めはあるかしら」
「お母さん、少しは自分で決めなさいよ」
「何言ってるの、自分だって同じでしょ」
「まぁ、そうなんだけど~、でも私は彼の妻よ、旦那様に従うのは当然でしょ」
「全く、お前は・・・私より議員に向いているかもね」
「アダム、私のデザートはビワにして下さい、2個、お願いします」
「皮を剥きますか」
「自分でします、ありがとう」
「ビワ、ビワって何、皮って言ったわね・・・果物ね、アダムは果物の皮も剥いてくれるの」
「はい、ヘレン、何か果物を食べますか」
「アダム、ありがとう、キャシーは婿殿と同じに決まっているから、私も同じでお願いします、カリーは」
「私も同じでお願いします、聞いた事も無い果物ですので試して見たいです」
「食事は暫く待って頂きます」
「どうしてなの」
「お客様を招くからです、一緒に食べたいと考えています」
「誰、私の旦那さんと息子なの」
「そろそろ二人もその時期に来ているでしょう、が今日は大統領と主席補佐官です」
「ええぇ~、大統領と主席補佐官を一緒に長期間、不在に出来るの、婿殿」
「お母さん、彼がやると言ったらやるのよ」
「二人は私の療養施設で精密検査と療養を行う事になっています、公式にはキャンプ・デービッドでの療養となります」
「そうなの、早く来てくれないとお腹が空いて来たわ」
その途端にドアが開き管制室に大統領と主席補佐官の二人が入って来た。
「これで私達も漸く貴方の正式な仲間に成れますね」
「その通りです、大統領、補佐官、彼の仲間です、正式なね」
「ヘレン、嬉しいです、貴方は何番目ですか」
「一番では無いですね、娘よりも後ですから」
「副大統領が先だと思っていました」
「大統領、詳しい話は食事をしながらでは如何かしら、我々はお寿司ですが、お嫌いですか」
「大好物です、ジェレミーは好きですか」
「私も大好物なのは御存じでしょう」
「おぉ~、そうでした、二人で執務室で食べましたね」
「では、私と同じ物にしましょう、アダム、お願いね」
「アダム???」
「アダムはこの船のAIです、御免ね、アダム」
「いいえ、ヘレン、真実ですから、気にしないで下さい」
「お二人もテーブルを囲んで、囲んで」
「食事は少し待って貰います」
「えぇ~、どうしてよ、婿殿、私はもうお腹が空いてぺこぺこで倒れそうよ」
「はい、はい、お母さん、旦那様の話を聞きなさい、どうぞ、貴方」
「キャサリン、二人の健康検査をして下さい」
「・・・はい、ほら、お母さん、理由は明らかでしょう、食事の間にあれが出来上がるのよ」
「・・・はい、解りました、降参です、婿殿には勝てません」
キャサリンが大統領と補佐官の二人を別の部屋へ連れて行った。
「二人にスーツを上げるのね、婿殿」
「二人が長期の休みを取る意味はスーツの訓練以外にありますか」
「宇宙旅行とか・・・宇宙探検とか・・・宇宙見学とか・・・」
「上院議員、失礼ですが全て宇宙の何処かへ行く事です、同じです」
「カリー、解っているのよ、でも少し反論もしたいじゃないの、あぁ、そうそう、カリー、私の事はヘレンと呼んでと言ったでしょ」
「はい、ありがとう御座います、まだ、なかなか勇気が出ません」
「気持ちは解らないでも無いけど簡単よ、私の名前は何???」
「ヘレン・ヘイウッド上院議員です」
「違うわよ、上院議員は名前じゃ無いわ、もう一度言ってみて」
「・・・ヘレン・・・ミス・ヘイウッド・・・ミス・ヘレン・・・ヘレン」
「良し、じゃあ~これからはヘレンと呼んでね」
「はい、ヘレン・・・さん」
「処で、キャシーはまだ終わらないのかしら、二人に何処か悪い処があるのかしら」
「健康な様に見えましたが・・・」
「解らないものよ、私も腰痛、外反母趾を隠していたもの、多分誰も気付いていなかったと思うわ」
「確かに」
「でも、困るわね、大統領はマスコミへの露出度が高いでしょ、それが突然、若返ったりしたら・・・」
「そうですね、でもアダムを信じませんか」
「そうね、アダムならその辺も考えているわね、それに裏には婿殿もいる事ですしね」
その時、ドアが開いてキャサリンが二人を従えて戻って来た。
「さぁ、食事にしましょう」
キャサリンが言った、その途端にテーブルが二人分大きくなった。
皆がテーブルを囲んで座った途端にテーブルの中央から寿司盛りが現れた。
「旦那様の分ね」
キャサリンが現れた寿司盛りを彼の前に置いて、次を待って出て来た寿司盛りを自分の前に引き寄せた。
ヘレンは次に現れるのを待ち構えた。
テーブルの中央が下がり上がり始めると上がり着る前にヘレンは寿司盛りを自分の前に引き寄せた。
次がカリーの分で次が大統領と主席補佐官の二人分が一緒に出て来た。
ヘレンが皆の寿司盛りを見渡し「頂きます」と言って、皆が唱和し食べ始めた。
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