第21話 ボディー・チェッカー

夕食が終わって皆で日本茶を飲んで寛いでいた時に珍しく彼が皆に話掛けた。

「キャシーのお母さん・・・」

「待った、そのキャシーのお母さんと言うのは止めなさい、ヘレンかお母さんかどちらかにしなさい」

とキャシーの母親ヘレンが言った。

「解りました、お母さんと呼ばせて頂きます、ではお母さん、最近余り良く眠れ無いのではありませんか、それに歩くと足が痛いのではありませんか、腰も痛いのではありませんか、お父さんは糖尿病の初期症状が出ているのではありませんか、貴方も腰が痛いのではありませんか、腰はお兄さん、貴方も痛いようですね、妹さんは足が痛いのでは、女性二人は外反母趾で足が痛いでしょう、男性二人は疲れが腰に痛みを起こしていませんか、妹さんは不規則な生活のせいでしょうが体重が増えて来ていませんか」

彼が皆に率直に身体の不具合を語った・・・言い当てた。

「うん、最近、糖尿病に成りますよ、と医者に注意をされた、確かに腰が痛い」

父親が認めた。

「私も最近眠りが浅い様で朝までに何回も目が覚めるのよ、それに確かに足も痛い」

母親も認めた。

「僕も腰が痛い、が運動不足だったので急に運動を始めたからと思っていた」

兄の言葉だった。

皆が妹を見ると渋々妹が言った。

「生活が乱れている事は認めるわ、女性に体重の事は失礼よ、確かに最近体重が増えて脂肪も付き初めてはいる・・・けど、やっぱり失礼よ、足が痛いのは認める」

「貴方・・・突然どうしたの」

ジェニーが尋ねた。

「書斎を見て来なさい」

彼が彼女に言った・・・彼女は不思議そうに彼の言葉に従って書斎を覗いて叫んだ。

「あの機械が・・・何時、どうやって・・・」

「皆を機械に寝かせなさい。」

彼女は皆を呼んで私が保証するからと言って一人づつ機械に掛けた。

当然、最初は皆は拒否したが、妹の一言で変わった。

「姉さんの変化はこの機械の・・・」

両親の健康状態を危惧し彼ら全員を「ボディー・チェッカー」「ボディー・リフレッサー」に掛けたのだ。

両親は初老に入り各臓器が不調を起こしていた、特に貿易商の父、議員の母は付き合いの飲酒の機会が多く、そのせいで肝臓が弱っていた。父は痔に悩み、母は外反母趾に痛んでいた。兄は運動不足で筋肉の衰えから腰痛に苦しんでいた。妹は姿勢の悪さからか骨盤が歪み歩き方にむらが有り最近の暴飲暴食で肥満ぎみだった、腎臓にも負担がかかっていた。

機器を使用したのは就寝直前で測定年齢結果にがっかりしての睡眠だった。


翌日、「わぉーー」と言う母親の悲鳴で全員が起こされた。

母は何時もの様に朝のシャワーを浴びようとガウンを羽織り浴室に向かい洗面台の前を通る時に何気に鏡を見てそこに映る自分の姿に驚き悲鳴をあげてしまったのだ。

鏡に映った女性は顔に皺が無く髪はふさふさでつやがあった。その身体は贅肉が無く引き締まり胸には張りがあった。彼女は残りの一枚の下着も脱ぎ捨て全裸になって鏡に映る自分の姿に見惚れていた。そこに妻の悲鳴を聞いた夫が現れた。

その夫の姿に妻は再度驚いた。目の前の夫は髪もふさふさで贅肉が無くお腹は六つに割れていた。近年はアームレスリングをしていたので腕と胸の筋肉は凄かったがお腹は贅肉が付いていた、それが今はボディービルダーの様な体形に変化していた。

驚く妻に「どうした」と聞いた。妻は黙って鏡を指さした。鏡を見た夫は驚きに声を失くした。

その後、ボディービルダーの様にいろいろなポーズをし自分の姿を惚れ惚れと見つめた。

それを一緒に見ていた妻が鏡に映る自分の姿を指さし夫の関心を自分に向けさせた。

妻の姿を観た夫はまたまた驚き喜び抱き合った。

その時、娘の悲鳴が聞こえた、慌てて全裸で走り出そうとする妻を夫が止めた、気付いた妻は下着を着けガウンを掴み羽織りながら廊下に向かった。

廊下に出ると今度は兄の部屋からも悲鳴が上がった。父が兄の元へ母は妹の部屋へ向かった。

妹は母と同様に洗面台の鏡の前で下着一枚で立っていた。

「おかあさん、見て見て・・・2年前はこんなだった・・・のよねー」

「何を言っているの、2年前の貴方は胸はペチャンコ、お尻は男みたいだったわよ・・・それが何とスーパーモデルみたいじゃないの」

「そうね、そうよね、昔は昔、今のこの体系、皮膚の艶と張り・・・最高、ほんと最高」

娘はそう言いながらいろいろなポーズでウットリと自分の身体を眺めていた。

「その身体が貴方本来の身体、体形だったのよ、それなのに貴方は不摂生な生活を続けて台無しにしていたの・・・だだそれだけの事よ、奇跡でも驚きでもないわよ・・・でもね・・・」

と言って母は着ていたバスローブを脱いだ。

鏡に映った母の身体に体形に娘は目を見張った。

そこには素晴らしいと思った自分とそっくりな母の身体が映っていた。

娘は横を向き実際の母の全身を下から上、そして上から下と何度も眺めた。

「凄い、綺麗、ど・ど・どうしたの」

「きっと貴方と同じよ、今朝起きたらこうなっていたの鏡を見て悲鳴を上げて確認して何度も確認して、でもお父さんを見たら驚くわよ」

「お父さんも変わったの」

「そりゃー凄いわよ、まるでボディービルダーよ」

「じゃさっきの兄さんの叫び声も自分の身体を見ての驚き・・・なのかな」

「たぶんね」

そこへ上半身をハダカにした男二人が部屋に入って来た。

女二人は下着一枚の姿を恥ずかしげもなく二人の男に見せつけた。

男二人はポージングをしてそれに答えた。

母が言った。

「でも、どうして???」

この自分に言ったのか他の人に言ったのかは分からない言葉に四人は我に戻った。

「とりあえず服を着て居間に行こう」

父の言葉に四人はそれぞれの部屋に戻った。

居間に集まって四人が確認し合った事は四人の変化の原因・要因は昨夜の機械だと言う事だった。

彼に言われた様に全員が何等かの病を抱えていた。

あの機械に掛かって具体的な病と肉体年齢をキャシーに伝えられていた。

また何より全員が運動不足であったり怠惰な生活で有ったりとで贅肉がついていた。

それが次の日の朝には贅肉は無くなり病は全快している様だった。

娘が妹が言った。

「私はもうこの身体を手放さない、絶対に元には戻りたくない」

他の三人は無言で首を縦に振り相槌を打った。

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