第20話 帰宅

二人が家に戻ると日曜日なので議員の母も家に居た。

何時もは遊びに忙しい妹も珍しく家に残っていた。

父親と兄は庭でテニスをしていた。

彼が玄関を開けて彼女を先に入れた。

「ただいま」

彼女が帰宅を知らせる声を掛けた、すると、両親、兄、妹、コックと執事の夫婦、家の全員が玄関ホールにすっ飛んで来て顔を揃えた。

「お帰りなさい」

全員の声が合唱団の様にハモってホールに響いた。  

「どうしたの皆、何か有ったの」

「何にも無いわよ、何にも無い・・・彼を連れて帰ったかなぁ~と」

「お母さん、私の旦那様なんだから帰ってくるのは当たり前でしょ、皆もそうなの???」

皆がホールから居間へ歩きながら話ていると彼は居間からそのままテラスへ向かい籐製のソファーに寝転んでしまった。

皆はそれを見ながら会話を続けていた。

彼女は調理師の女性に彼への飲み物を頼んだ。

冷たい珈琲で牛乳を1/10、砂糖の変わりに蜂蜜を多めに氷を入れてと注文した。

ついでに自分の飲み物も頼んだ、何時もは日本茶だったが今日は彼と同じ物で但し暖かい物をと頼んだ。

「で~皆で出迎えた訳は何???」

「大統領との会談って言ってたからホワイト・ハウスに本当に行ったのかなぁと思ったのよ」

「本当にそれだけ? 第一本当に行ったのなら言える訳無いのは知っているでしょ」

「うぉほん、正直に言えば・・・お前が彼を連れて戻るかが心配だったのでな」

「私も~」

「私も」

「僕も」

「どうしてよ~、娘の私より、兄弟の私より彼な訳~~」

「しょうが無いでしょ、彼は魅力があるのだから」

「魅力・・・彼はハンサムじゃ無いけど」

「見た目ばかりが魅力じゃないのよ、貴方はまだまだ青い・・・若い」

「あのね~彼の奥さんになるのは私、私なの、解ってるの~」

「そこがね~、確かに貴方は母親の私から見ても綺麗な部類に入るけど~」

「何よ、彼には私じゃ合わないの~、私には彼が勿体ないって言うの~」

「お母さん、ほかの家に取られるよりは良いんじゃ無いの」

「そう言われればそうね」

「酷い言われ様だわ」

彼女が怒った様に言うと皆で笑い合った。


彼女が彼の横たわるテラスに向かうとそこには既に冷たい珈琲と温かい珈琲がテーブルに乗っていた。

彼女には彼が彼女が来た事に気付いているのか、いないのか解らなかった。

彼女は眼を瞑っている彼の前の椅子に座り珈琲に手を伸ばした。

彼女は何度か珈琲を飲んだ後、意を決した様に立ち上がり彼の横に座り身体を彼に預けて寄り掛かった。

嫌がるか何かの反応を待ったが何の反応も無かった。

調子に乗った彼女は彼の手を取って自分の身体を包む様にした・・・が彼はされるがままだった。

この態勢がそれから毎日の二人の日常になった。

暫くして彼女がうとうとしていると「まぁまぁ」と言う声が聞こえ彼女が眼を開けると、そこには母親が呆れたと言う顔で立っていた。

「夕食の時間よ、彼を起こしなさい」

「お母さん、彼は寝てなんかいないわよ、瞑想しているだけよ」

彼女がそう答えると彼女の身体が持ち上げられ静かに床に立たされた。

「ほらね」

「はい、はい」

母親は返事をすると室内へと姿を消した。

「ありがとう、疲れがすっかり取れました」

彼女が礼を言った。

「今日は大活躍でしたからね、良く出来ました」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます