第14話 二日目

翌朝、彼女はベッドで近年では感じられなかった爽快な気分で目覚めた。

ベッドの中で大きく伸びをして元気良く飛び起きた、そして気付いた。

昨夜、余りの疲れにお風呂にも入らずシャワーさえも浴びず、何と服さえもそのままに眠り込んでしまっていた。

彼女は自分が今どこにいるのかを思い出し再び部屋中を眺め現実を受け入れた。

「は~~」と大きくため息を付き「成る様になるわ」と声に出し何時も通りの事を始めた。

そして化粧をしようと鏡を見て驚いた。

鏡に映っているのは誰? と思う程に顔が変わっていた、若返っていた。

眼の周りの小皺が全く無くなっていた。

眼の下の疲れた様な弛みが全く無くなっていた。

若い年齢の割りに職業のせいか薄く現れ始めていたほうれい線が全く無くなっていた。

額の薄い皺が全く無くなっていた。

首の皮膚に張りが有った、手を足を見ると皮膚に張りと弾力があった。

そこで彼女は思い出した。

彼が言った「もし成れるなら幾つに戻りたいですか」

その時、彼女は「18才」と答えていた、今、鏡に映る姿は自分の昔の18才の頃の姿だった。

いや、それ以上だった、初期の外反母趾の症状が出ていた足も元の様に真っすぐになり痛みも無かった。

そして熟睡したせいか頭の中も爽快に若返った様に感じた。


「おはようございま~す」と彼女は元気な声を掛けて管制室に入って行った。

「おはよう、良く眠れましたか」

「はい、ありがとうございます、18才に戻りました、昨日の機械はなんですか」

「健康診断と治療機です」

「治療機ですか、何でも治せるのですか? 若返らせる機能もありますよね」

「どんな病気も治せます、貴方には若返って貰いました」

「私には・・・ですか」

「はい」

「私だけですか」

「そのつもりです、それは、またの機会にお話ししましょう」

「・・・」

「私には貴方に対して秘密はありません、但し、話をする時期はそれぞれの事柄により異なると思って下さい」

「・・・」

「朝食にしましょう、アメリカらしくベーコン、玉子焼き、トースト二枚に珈琲でよいですか」

「いいえ、私はと言うか私の家族は皆、日本食好みなの」

「それはまた健康志向ですね」

「母の仕事で日本に住んでから日本食以外は滅多に口にしなくなってしまったの」

「では、日本の旅館風の朝食にしましょう」

彼がそう言うとテーブルの中央がせり上がりお盆に乗った旅館風の日本食が現れた。

味噌汁とお茶からは湯気が立ち納豆まで付いていた。

「わぉ~、美味しそうね」

彼女はそう言って椅子に座りお盆を引き寄せた。


食後のお茶を美味しそうに飲みながら彼女が聞いた。

「食事は何でも頼めるの」

「材料が有れば何でも作れます」

「それは便利ね、デザートもあるのですか」

彼女がそう言うとまたテーブルの中央がせり上がり小皿に乗ったケーキが一つ出て来た。

「えぇ~、どうして、どうして・・・」

それは「サヴァラン」と言うラム酒のケーキで、まさに彼女が頭に浮かべ、今食べられたらと望んだ物だったからだ。


「昨日から私は何度驚かされた事か、これまでの人生の驚きの回数を超えました、でも不快ではありません、嬉しい驚きです・・・ですから、これからも何度でも大歓迎です」

「それは良かった、ではデザートを食べたら次の驚きにしましょう」

「まだ、嬉しい事があるのですか・・・やっぱり楽しみな様な・・・ちょっと怖い様な・・・」

「貴方の部屋へ行って下さい、テーブルに服が用意されています、只の服ではありません、スーツです、ダイビングに使う様なスーツです、但し着る時には全ての下着も脱いで着て下さい」

「スーツ、ウェット・スーツ???」

「例えです、お願いします、どうぞ」

彼女は言われるがままに自分用と言われた部屋に向かった。

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