第12話 第一回目の会談の実態

「まずは何が聞きたいですか」

二人はリンカーン記念堂の階段に寝そべる様に座っていた。

「USBを握っただけで何かを書き込めたのですか、後から来た担当者の態度で書き込みがされていたのは判るのですが?」

「言葉通りに裁判での証拠となる書類と写真とビデオです」

「暫く握っていただけでですか」

「そうです・・・う~ん、私が書き込みをした訳ではありません、友人です」

「友達・・・仲間がいるのですか、でもどうやって握った手の中のUSBに書き込みができるのですか」

「彼にとっては簡単な事です」

「技術的な事はどうせ聞いても解りませんから良しとして、その後の担当者の驚きは何についてですか」

「説明には少し技術的な事になりますが宜しいですか」

「少しならお願いします・・・少しですよ」

「技術的な確認です、量子コンピューターはご存知ですか?、データ伝送にはデータ圧縮しているのをご暫時ですか? データ伝送にはテキュリティーの為に暗号化がなされているのをご暫時ですか?」

「どの様な方法かは判りませんが圧縮も暗号化もされている事は知っています、量子コンピューターも最近会議があった事は知っています・・・何の会議かは知りません」

「量子コンピューターの利点をご存知ですか」

「計算速度が現存の物に比べて驚異的に早い・・・と言う事ですか」

「そうです、早い事の何が問題になると思いますか」

「早くなる事は良い事ばかりの様に思いますが」

「一見、そう見えますが問題が有ります、早いので現在のセキュリティーのパスワードが短時間で解読されてしまうのです」

「なるほど、それで先日の会議は量子コンピーューターでも解読できないパスワード・アルゴリズムの考案だったのですね」

「そうです、でも出来なかった様です」

「貴方の渡したUSBにそれに対処できるアルゴリズムが入っていたわけですね」

「そうです」

「でも、それだけでは無い様でした・・・特許申請とかその場合のライセンス料とか言っていました・・・が」

「それは多分、データ圧縮のアルゴリズムでしょう」

「データ圧縮ですか・・・それで100億ドル以上にもなると言っていましたが?」

「データを保存する時に圧縮してファイルを小さくできれば容量に余裕が出来、沢山のデータを保存できます、何より通信ですね、圧縮率が高くファイルが小さければ通信に時間が掛かりません、ですから圧縮率が高く安全度の高いアルゴリズムが開発される度に採用されるのです、但しどんどん複雑になりますので由り早いCPUが必要とされます」

「なるほど、それであの方は時間が掛かると言ったのですね・・・と言う事は貴方のアルゴリズムは現状では通信に時間は掛からないけれど圧縮と復元に時間が掛かると言う事ですね」

「そうです」

「USBの事はそれで理解しました・・・私が部屋に入った時に皆さんが驚いた様に感じたのですがどうしてですか」

「それは、貴方を私の通訳に指名した直後に貴方が来られたからです」

「えぇ~私は副局長の指示で行ったのですが」

「その指示メールの確認をしましたか」

「私の携帯電話はFBI専用です、ですからメールが来ればその指示に従います」

「そのメールは私が送った物です」

「えぇ~FBIにハッキングしたのですか」

「ハッキング、そうですね、ハッキングです」

「犯罪ですよ」

「そうですね、捕まえますか」

「う~ん、どうせ証拠は無いのでしょうね」

「ありませんね」

「では、通訳に私を指名した途端に私が現れた・・・ので皆さんが驚いた訳ですか」

「副局長は貴方の存在をご存知でした」

「あぁ~、きっと上院議員の娘としてでしょう・・・ね」

「残念ですが、その通りでしょうね」

「ところでこれからどうなさいますか」

「少し、考える時間を下さい」

桜井はそう言って一点を見つめ考えに落ちた。

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