第5話 クアンタナモ

-----------------------------------------<クアンタナモ>-------------------------------------------

1898年、アメリカとスペインの戦争でアメリカが占領しスペインから独立したキューバが1903年にグアンタナモ地区の永久貸し出しを約束した。

キューバ革命でも返還されず現在に至っている。

基地の周囲は両国の地雷原となっている。

この基地はアメリカの法律の外にあり、ましてやキューバの法律も適用されず通用する只一つの規則はアメリカ軍の軍法のみである。

2002年にアフガニスタンとイラクで逮捕された捕虜を収容する為のキャンプが設営された。

この治外法権の基地、キャンプで拷問などが行われている、との噂が流れている。

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飛行機の後部ハッチが開き機関銃を構えた5人の兵士を従えて男が現れた。

男は上官の様で拳銃を構えた男と話した。

暫くして日本の男と日本語が話せる男が飛行機を降ろされ連行された。

連行された先は小部屋で尋問室の様だった。

上官が日本語が話せる男に何か言った。

「これからこの日本人の尋問を始める、お前が通訳しろ」

「ここはグアンタナモですか、ペンタゴンへ連れて行くはずですが」

「煩い、通訳をしろ」

「そうは行きません、ここに命令書があります、確かにペンタゴンへとなっています」

「私が決めた事だ、従え」

「貴方は何方ですか、大佐の様ですが、この命令書は准将とFBI長官とNSA長官の署名入りですよ」

「それがどうした、ここグアンタナモでは私が法律だ」

「貴方はここの司令官ですか、でも南方軍の一大佐ではありませんか、准将の命令書を無視して良いのですか」

「お前は上官に逆らうのか」

「逆らっているのは貴方の方でしょう」

大佐は部下に聞いた。

「他に日本語の解る奴は居ないか」

「は、私の知る限りいません、サー」

「そうか、やはり、君にやってもらう以外に無い、やらないのなら上官に対する不服従として逮捕する」

「・・・解りました、通訳します、ですが、彼はテロリストではありませんので拷問はしないで下さい」

「奴が素直に話せば何もしない、では早速始めよう」

日本人はテーブルの鉄の輪に手錠を繋がれた。

大佐が男の正面に座り、隣に通訳が座り、5人の機関銃を持った男と日本から同行して来た男が回りを囲んだ。

「名前は?」

「桜井誠一」

「ピラミッドを光らせたのはお前か」

「貴方に答えるつもりは無い」

大佐の右手が男の顔を殴る様に伸びた。だが、男が首をひねり拳を交わした。

「お前は・・・避けたな・・・お前たちこの男を押さえろ」

大佐は部下の二人に命じた。

だが二人は躊躇した。

「早く押さえろ、儂の言う事が聞けぬのか」

「大佐殿、殴る理由は何でしょうか」

「理由など無い、殴りたいから殴る、さぁ~押さえろ」

「文句を言うな、大佐殿の命令だ」

一人の部下が片腕を押さえもう一人にも押さえろと言った。

「手錠を掛けられ無抵抗な人間に暴力を振るう・・・貴方は最低な男・・・人間ですね・・・貴方には部下を持つ資格は無い・・・それに従う君も同罪だ」

と日本人が言いアメリカ人が通訳した。

大佐の顔が怒りで真っ赤になったが片側を押さえていた部下は手を離した。

「儂は押さえろと言ったぞ、押さえろ」

「止めましょう、大佐殿」

押さえる事を躊躇った兵士が大佐を諫めた。

その時、日本人が立ち上がり後ろ手の手錠がバキと音を立てちぎれ手が前に回された。

それを見ていた皆が驚き目を丸くした。

日本人は通訳に向かって言った。

「ここが目的地では無いでしょう、貴方の命令の地へ行きましょう」

大佐が驚きから目覚め拳銃を構えた。

「止まれ、動くな、動くと撃つ・・・脱走しようとした、これで正当な理由が出来た」

「脱走、正当な理由、貴方は何を言っているのですか、彼は何の罪にも問われていません、脱走も何も逮捕などされてはいない、第一何故手錠など掛けたのてすか、大佐、貴方の考えですか」

通訳の男が大佐に言った。

「煩い、アメリカ人の癖にこいつの味方をするのか、なら貴様も同罪だ、貴様もテロリストだ」

「大佐、もう止めましょう」

部下の兵士が言った。

「お前もか、お前は儂の部下ではないか・・・」

「大佐、貴方は狂っている」

通訳の男が言った。

「儂が狂っているだと・・・死ね」

大佐が拳銃を通訳に向けて撃った。

ドンと銃声と共に「ギャー」と悲鳴が上がりガチャと音がした。

悲鳴を上げたのは通訳の男では無く、銃を撃ったはずの大佐だった。

大佐は痛みに銃を落とし撃たれた右腕を左手で押さえていた。

周りの兵士たちは誰が撃ったのかと身構え周りを見渡した。

その時、平然としていた日本人が通訳に日本語で何かを言い通訳が皆に言った。

「大佐は自分の撃った玉にやられた・・・らしい」

続けて日本人が話出し、今度は少し長かった。

通訳も日本語で答えていた。

「大佐の副官は真ともか、それとも大佐と同じか」

「中佐は大佐に逆らって、今は独房に入れられております」

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