第20話 レストラン・アフロディーテ
「お二人ともお疲れ様でした、アイス珈琲を飲みませんか」
支配人が二人を誘った。
エマが彼を見ると彼が頷いた。
「頂きます」
支配人はレストランでもカフェでも無くバーに案内した。
支配人とメアリーはカウンターの中に入りアイス珈琲作りを始めた。
ここで思い出した様に支配人は壁の電話を持つと館内放送でスタッフに呼びかけた。
「私は当ホテルの支配人です、此れより通常のホテル業務を再開します、スタッフの皆さんはホテルの開錠を始めお客様に失礼の無い様にして下さい、よろしくお願いします、なお、お客様にお願いで御座います、ご宿泊のお客様は御自分の部屋へは勿論入出可能です、当ホテル以外から講演会に参加のお客様はスタッフが外部への出口を開錠しますので暫くお時間を下さい、レストラン、喫茶室の利用もスタッフが準備出来次第可能です、ご協力をお願い申し上げます」
「支配人、このバーを利用可能とは言いませんでしたね」
エマが指摘した。
「はい、鍵を掛けましたので誰も入れません、私からのほんの些細なお二人へのお礼です」
エマが通訳してセイジに伝えるとセイジが「サンキュー」と礼を言った。
「礼を言われると困ります、彼女はともかく私はお二人とゆっくりと話たいと言う狡い考えが有っての事ですから・・・」
「私も勿論同じです」
支配人とメアリーが正直に自分の気持ちを暴露した。
「私も彼もお二人には好感を持っています、出来る限りお答えします」
エマは英語の後でセイジに日本語で通訳すると彼も賛同し頷いた。
「ね、彼も同感の様です」
「お二人は本当に仲が良いと言うか息が合っていますね、本当に2、3日前に知り合ったばかりなのですか」
「私もそれを聞きたい、まるで心が繋がっていると言うか心で話してしると言うか、そんな感じです」
「貴方たちだけに教えます・・・その通りです、私達二人は心で話をした事があります、信じますか」
「他の人が言うと信じられませんが、貴方たち二人なら私は信じます、支配人はどうですか」
「私も信じます、勿論・・・その感能力とも言うものが皆を引き付けるのでしょうか」
「少し違いますが、多分、その様なものだと思います」
「今は言えない何かがお二人にはあるのですね、それが本来の理由だと思っているわけですね」
「そうです、確証は得られましたがとても普通の人には信じられない事です、私もまだ完全には、心の奥底では信じて居ない部分がある様です、但し、セイジ、彼は完全に信じています、私は彼を信じていますので私も直ぐに信じる様になるでしょう」
「お二人は毎日、洞窟に行っていますが何か関係があるのですか」
「やはり、メアリー、貴方に隠す事は難しいようですね」
エマはセイジに現状を通訳した。
セイジの返事は完結だった、「OK」だけだった。
彼は話をしながら持参していたノート・パソコンで非常な速さで入力していた。
そのセイジが入力を止め暫く画面を見ていたがパソコンを閉じた。
「たった今、約束のサイト<ガイア>を開設しましたが直ぐに会員数が20人を超えました。
「えぇ~もうサイトを開設したのですか貴方のITの能力は相当なものですね」
「サイト何て大体同じ様な形式ですから簡単です」
「通常と違う点は私からの返事がほしい方は個人情報を記入して貰う事です、氏名、生年月日、住所、電話番号、メール・アドレスです」
「私、そのガイアって何処かで聞いた気がするのです、最初に聞いた時からずっと考えているのですが思い出さなくて、何時もなら直ぐにネットで調べるのですが努力しないと情報が知恵にならないと言うから・・・」
「私は知っている・・・もう良いだろう、ネットで調べると良い他人に聞くよりは努力する事になるからね」
メアリーの言葉に支配人が調べる様に説得した。
メアリーは携帯電話を取り出した処で動きを止めた。
「地球、地球の事だわ、人って不思議ですね、思い出すのを諦めた途端に思い出すなんて」
「そう、地球の事です、支配人は他にどのような知識をお持ちですか」
「地球も一つの生き物だと言う説でしたかね、私もその説を知った時に賛同しました、地球も生きていて人が悪さの度が過ぎると戦争が起きる、火山噴火、地震が起きる、天災と言うものです、その様に思いました」
「地球が意識して天災をお越していると思いましたか」
「はい、そう思っています、人は地球によって生かされているのです」
「あぁ、貴方が作ったサイトの会員数が100人を超えています、あぁ、凄い速さで人数が増えています」
「会場に来ていた300、400人止まりでしょう」
「それはどうでしょう、誰かが動画を撮っていた様で、既にアップされていて・・・こちらも凄い速さで人数が増えています、あぁ300人を超えました、凄い、凄い速さです」
支配人も携帯電話を取り出し操作を始めた。
「残念です、私は会員番号1番が欲しかった、メアリーが一番ですか」
「飛んでもありません、私は152番です、支配人は何番ですか」
「何と329番ですよ、そんな馬鹿な会場には400人以下のはずです」
「あら、貴方、質問が100件を超えています」
「そうですね、とりあえず、順番に答えます、と表示しましょう」
彼が言った途端に、その文がそのままサイトに表示された。
「今の翻訳プログラムは凄いですね、直ぐに英語に変換されて表示されました」
「支配人、申し訳ありませんが飲み物の追加をお願いします、四人分ですね」
「支配人、私が作ります」
メアリーが支配人に代わって作ると宣言した。
「アイス珈琲では無くカクテルをお願いしたい」
「ラム・ベースのマティーニをシェイクしてでしたね、ミス・エマはマンハッタンで宜しいですか、支配人は何にしますか」
「そうですね、私も君も既に勤務外ですから私も彼と同じものを試してみます」
「では、私はミス・エマと同じにします」
支配人に代わりカウンターの中に入ったメアリーは手際良く2杯づつ作りコースターに乗せて差し出した。
椅子に座った三人とカウンター内の一人がグラスを持ち上げ小さく頷きグ゛ラスに口を付けた。
「旨い」
「うん、旨い」
「美味しいわ」
「ありがとう御座います」
「お二人共、お疲れでしょう、当ホテルで講演される芸能人でも舞台を降りられるとお疲れですから、お二人は一般の方ですから舞台に慣れて居ませんからね」
「いいえ、不思議な事に彼が隣にいてくれるせいでしょうか、私はとてもリラックスしていて疲れては居ません」
「私もエマさんが隣にいるので、それが嬉しくて周りは気になりませんでした」
「まぁ~、何とも幸せなお二人ですね、私にもそんな相手がほしいです」
「あら、メアリーは支配人が好きなのではないのですか、支配人も貴方が好きですよ」
「えぇ~、でも支配人は既婚者ですよ」
「嬉しい言葉ですね、実は私の指輪は飾り物で本当は独身です」
「以前の奥様が忘れられなくて外さないのではないのですか」
「はい、それもありますが、支配人と言う立場上既婚者の方が良いと思い、指輪をしているのです」
「まぁ~」
「それでは、今日はダブル・デートにしましょう、支配人、良い場所はありませんか」
「そうですね、シティー・タワーの上階に最上級のレストラン・バーがあります、いかがですか」
「ドレス・コードがあるのではないですか」
「我々の服装を見て下さい、この服装で断られる事はありません、ご安心下さい、ミス・エマ」
「後は、どうやってこのホテルを出るかですね、支配人」
「ミス・メアリー・ワトソン、私をステュワートと呼んで下さい、しかし、部下と付き合って良いのだろうか」
「世界中で一番多いのは職場結婚だと思います、支配人」
「ミス・メアリー、君も私にプロポーズをしているのですか、ミス・エマの様に」
「お断りになりますか、ミスター・ステュワート・アトキンス」
「お二人、貴方たちには大変大事な話ですが続きは別の場所にしませんか」
「話は騒がれずにどうやってホテルを出てレストランに行くかに戻りますね」
「貴方に何か策はありますか、セイジ」
「はい」
「えぇ~、あるのですか、どんな方法てすか」
「簡単です、正面玄関から四人で出ていくだけです」
「そんな事をしたら皆に囲まれてしまいますよ」
「大丈夫です、私を信じて下さい、それに失敗しても只囲まれるだけの事です、死ぬ訳ではありません」
「・・・そうね、そうですね」
「そうだね」
「そうですね」
「では、行きましょう」
「ちょっと、待って下さい、使ったグラスを洗いますので」
メアリーが四人の使ったグラスとカクテルを作るのに使った用具を洗った。
それを待って三人は椅子から立ち上がり支配人が先導してバーのドアを開けた。
四人の先頭を彼に変わりエマが腕を絡ませ後ろに支配人とメアリーが続いた。
ホテルのフロアーには大勢の人がいた。
勿論、今晩の講演の観客たちである。
人々は直ぐに四人に気付いたが何故か話を止めて見つめるだけだった。
四人がホテルの玄関へ向かうとまるでモーゼが海を割った様に人垣が割れた。
フロアーを歩いている間に支配人が手配したホテルのリムジンが玄関前に待っていた。
リムジンが着いた処は街一番の高層ビル・シティー・タワーだった。
車を降りた四人はタワーに入るとエレベーターに乗り最上階へと向かった。
レストランは街一番の人気店で「アフロディーテ」と言う名の店だった。
支配人の口利きで予約で一杯の店に急遽予約が取れた。
勿論、お客が今、街中で評判の二人だと言う事も大いに力になっていた。
支配人を先頭に店に入り受付から店の支配人・ダニエル・ニーリーが先頭になり席へ向かった。
途中、客の多くはホテルの支配人の顔見知りらしく眼で挨拶していたが支配人の後ろの二人、話題の二人を見て驚きの顔に変わっていた。
レストランのお客たちの会話も無くなり視線が四人に集まった。
「ダニエル、夕食は済ませて来たんだがテーブル席を頼めるかな」
「ステュワート、今日のホテルでの会の事は知っています、私も見たかった、テーブルを用意しています」
四人は窓際の一角に儲けられたテーブルに向かいエマの椅子をレストラン支配人・ダニエルが引き座らせ、メアリーの椅子はチテュワートが引き座らせ二人の男も座った。
ウエイターがメニューを持って近づいてきたがダニエルが手で制した。
「何を飲まれますか」
「ダニエル、カクテルをお願いしたいが良いかね」
「良いとも、ステュワート、何だい」
「皆、同じ物で良いですね」
ステュワート支配人が三人に確認し三人の頷きを見て続けた。
「ドライ・マティーニとマンハッタンを二つづつお願いします」
「畏まりました、ステュワート、良く此処に連れて来てくれた、ありがとう」
「そうか、喜んでくれるか、まぁ、私と君の中だ、食べる、飲むで勧めると成れば此処しか無い」
「ありがとう」
支配人が礼を言っている間にウエイターが注文をバーテンダーに伝えに行った。
そこで珍しく彼がくちを開きエマが通訳した。
「ダニエル支配人、椅子を一つ持って来て我々に参加しませんか、それとも業務中ですか」
「私も参加して良いのですか、私の休暇は溜まりに溜まって居りますので何時でも休みに出来ます」
ウエイターが気を利かせて椅子をひとつ追加し支配人の為にマディーニも追加した。
飲み物が五人に配られ四人は彼の祝杯の言葉を待って彼を見つめた。
「御参加下さり真にあリがとう御座います、御迷惑お掛けします」
エマが通訳し皆で乾杯し飲み始めた。
「ステュワート、二人を当レストランに連れて来てくれて礼を言うよ、周りを見れば解るだろ、お客様もスタッフも皆が二人に注目している」
「お互い様だよ、ダニエル」
「お二人はお友達なのですか」
「家族ぐるみの付き合いなんですよ、ミス・エマ」
「でもね、残念だったが、ステュワートの奥さんは3年前に病気で他界してしまったのです、スチュワート、残念だったよ」
「ありがとう、ダニエル」
「残念でしたね、ステュワート」
「ありがとう、ミス・エマ」
その時、5人の席に一人の男が現れた。
「エマ、久し振りですね、元気そうだ、どうです、ここで会ったのも縁だ、一緒に飲みませんか」
エマは振り向いて男の顔を確認すると立ち上がりもせずに答えた。
「あら、ジョエル、珍しい処で会いましたね、何か御用ですか」
「まさか、今、噂の二人の女が貴方じゃ無いだろうな」
「どんな噂か知りませんが、もしもその噂が若い女性が東洋人にプロポーズをした、と言うものなら私の事ですね」
「えぇ、じゃ、此処にいる冴えない中年の東洋人が彼氏かい・・・お前の財産を狙っているに違い無いぜ」
「あら、彼は貴方と違ってお金には興味がありません、では失礼」
エマはこれ以上の会話を断る様に正面を向いた。
男はすごすごと自分の席へ戻って行った。
「皆さん、嫌な気分にさせて申し訳ありませんでした、他人の悪口は言いたくは無いのですが、私は今の人が大嫌いなのです、親のお金を自分の物だと勘違いして遊び呆けている次男坊です」
「エマ、気にしないで下さい、何処の国にも街にも良い人ばかりではありません」
「日本には良い人ばかりの様に思いますが」
「エマ、そんな事はありません、日本にも警察があり犯罪者も数えきれない程います、他の国より少ないたげです」
「私は家族と何度も日本に行きましたが親切な人ばかりでした」
「貴方がたが観光客だから、日本の国にとってはお客様だからですよ」
エマが二人の会話を通訳して皆に聞かせた。
そこへ別の男が現れた。
「ミス・エマ、お久振りです、貴方のお父さんに牧場を任されているディック・コステロです、牧場で何度かお会いしました、貴方の愛馬は元気にしていますよ」
「お久振りです、ディック、牧場はどうですか」
「皆、無事に育っております、おりますが、お父上に満足頂ける味には成りません、それで飼育に成功していると言う、この地に参りました」
「まぁ~、大変ですね、それで目途はつきそうですか」
「和牛の生育はなかなか難しいものです、それで和牛の生育に成功したオーストラリアの牧場を見学に来ました、和牛は手間の掛かる牛だとは解っていましたが想像以上でした、和牛が美味しく高価なのも頷けました」
「そうですか、でも見習うなら本家本元の日本へ行った方が良いのでは無いのですか」
「そうも考えたのですが私は日本語を理解出来ませんし秘密を教えてくれるとも思えませんので、こちらにしました」
「秘密を教えてくれないのは、此処も同じでしょう、教えて貰えましたか」
「いいえ、今の処、駄目ですね、自分が日本へ行って、頼み込んで何年も実践経験して努力して覚えた技術と知識をそう簡単には教えてはくれません」
「普通はそうでしょうね~、でも日本人は違います、日本の文化を世界に広めたいと言う思いもあるでしょうが、尋ねる人には教える、困った人は助ける、親切な国民です、日本に直接行った方が良いと思いますよ、通訳は父に言えば見つけてくれますし、貴方が熱心で有れば直ぐに日本語を覚えるでしょう」
「日本語は世界一難しいと聞いた事があります、私に出来るでしょうか???」
「確かに日本語は難しいですが、少し話せる様になると貴方はきっと虜(とりこ)になりますよ」
「貴方は話せる様な口ぶりですが、話せるのですか」
「横にいる彼は日本人で英語が余り出来ません、私と彼は日本語で話しています」
「日本行きを考えてみます、食事中に申し訳ありませんでした、失礼します」
ディック・コステロがエマに礼を言って自分の席に戻って行った。
「貴方のお父さんは牧場主ですか、ミス・エマ」
「いいえ違います、父は日本の和牛の美味しさに惚れこんで日本に行くと必ず食べていたのですが日本に行か無くても食べたいと和牛の為の牧場を作りたいと考え彼に牧場を任せたのです、ですが肉の味が本物とは可成り違う様ですね」
「貴方のお父さんは徹底している様ですね、私も和牛は世界でもずば抜けて美味しいと思います、最近では確かにオーストラリアでも飼育されています、私のホテルのレストランでも人気の肉です」
「皆さんは日本に行った事がありますか」
「ありません」
「ありません」
「私は一度あります、貴方が言われた様にとても親切な国民、民族だと感じました、又行きたいと思っているのですが、中々時間が捕れません」
「ダニエル、何時の間に行ったんだい」
「4年前だったかな、家族で行ったのだが妻も子供たちも次は何時行くのだと時々聞いて来るんだ」
「二家族でイタリアやフランスに行ったじゃないか、其処にはもう一度行きたいとは言わないのかい」
「イタリアに行った後はまだ見たい物があるからもう一度行きたいと言っていたのたが日本へ行った後はイタリアを忘れてしまった様に言わなくなったんだ、日本に行く前はイタリアに行きたい、何故日本何だと言っていたのにね」
「日本の何が気に入ったんだい」
「子供たちはアキハバラとディズニー・ランドかな、妻は京都だね、でもやっぱり人々の優しさ、お客様への接待の仕方が一番の理由だろうな」
「オモテナシ、と言う接待方法かな」
「そうそれだね、私もそのオモテナシに感銘を受けて、この店に取り入れて今のこの店の人気があるのだと思う」
「私も日本の話を聞いてホテルに取り入れたいと思っていたのだけれど実際に経験が無いから上手く行かないんだ」
「私は一度日本に行く事を勧めるね、我々の様にお客様に対する職業の者、特に管理者は見習うべきだろうな」
「そうだな、彼が生まれた国を見てみたくなった、彼女の生まれたアメリカは行った事があるからね、まぁ本の一部に過ぎ無いがね、メアリーは何処か旅行に行った事がありますか」
「残念ですが、オーストラリア国内だけです」
「ミスター・ウチダとミス・カレンはいろいろな国に行かれたのでしょうね」
「はい、家族でいろいろな国に行きましたが一度日本に行ってからは日本ばかりになって仕舞いました」
「貴方も日本ですか」
「両親が兎に角大好きになりました、それで私も好きになって日本語を勉強する様になりました」
「それで今では日本人の彼と日本語で話せる様にまでなった訳ですね」
「まだまだです、先程の彼が言っていた様に日本語は難しいのです、多様性に飛んでいるのです」
「貴方が彼に惹かれたのは日本人だからですか」
「いいえ、彼の頭脳と精神です、その質問を昨日から何度された事か、貴方が日本語が話せて彼と話をすれば直ぐに解って貰えるでしょうね、残念です」
「ダニエル、彼が二人のホーム・ページを開設したんだ、其処に登録すると彼が質問に答えてくれるそうだよ、私もメアリーも登録したんだ、サイト名はガイアだよ」
「ガイア・・・地球と言う意味じゃ無かったかな」
「そうだよ、地球も生きていると言う概念だね」
ダニエルは「失礼」と言うと携帯電話を出して検索しサイトを探し出した。
「閲覧回数が2000件を超え会員数が500人を超えているが何時開設したんだい」
「1時間程前だが、もうそんなに会員が増えたのか、今日の講演の来場者は400人程のはずだが、その人数を超えているとはなぁ~、凄いな」
「彼が話した理論も書かれているぞ、何々、同じ歳でも若く見える人と・・・ほう~面白いなぁ~」
「重力について彼の理論をエマは聞いたらしいが説明は避けた、と書いてあるぞ」
「彼は自分に話てくれたのだから知りたければ自分で聞きなさい、と答えたと書いてある・・・強気な返事だね」
「その後の言葉も強気と言えば強気だねぇ~、彼は日本語だけで英語は話せないけど、どうぞ、と言ったとあるな」
「うわ~、凄いですねぇ~、殆どそのままですね、私は家族や友人からは性格は男だと言われています、あんまり頭に来たから性格がそのまま出てしまった様ですね」
「我々が尋ねても同じ答えですか」
「ちょっと待って下さい」
エマは彼に日本語で通訳し確認した。
「彼の了承を得ましたので、お答えします・・・彼の理論では重力は我々が知っている物質を構成している粒子よりも一段階、二段階小さな粒子の作用だと言うのです、光もその粒子の作用だと言うのです、只、彼の理論も初期段階で重力についてはもっと深い理論があるそうなのですが、光については波動の特徴と粒子の特徴の併用理論が確率出来ない様です」
「重力についての理論はあるのですか、素晴らしい」
「エマ、貴方は聞いたのですか」
「いいえ、まだ、聞いていません、と言うか理論が難しいので私が理解出来ないのです」
「じゃあ、彼は説明をしたのですね」
「はい、彼は簡単に言うと物質崩壊、分裂、作用反作用だと言いました」
「物質崩壊、分裂、作用反作用・・・どれも難しい物とは思えないが・・・」
「そうなんですよね~、処が彼の理論が余りにも突飛過ぎて理解出来ないのです」
「専門家の貴方が理解出来ないのでしたら我々には無理な話ですね」
「ブラック・ホールの理論も難しいでしょうね」
「彼はフラック・ホールは無いと言っています、我々がブラック・ホールと呼んでいる物は言わばブラック・ホールとホワイト・ホールの合体物とでも言う物らしいです」
「ブラックとホワイトの両方の特徴があると言う事か・・・うむ、確かにそうかも知れないなぁ~」
「何と言う名前のホールになるのかしら、それともホールでも無いのかしら」
「ブラックとホワイトの合成だからグレー・・・なんてね」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、それは可笑しい」
「処で、今の会話をサイトに投稿しても宜しいですか」
「彼に聞いてみますね」
エマが彼に日本語で通訳した。
「良いそうです、日本人はとても優しいのでお願い事を断る事は殆どありません、特に彼はとても優しい親切なんです」
「話は尽きないのですが、私は明日の仕事が早いのでそろそろ失礼します」
「おぉ、もうこんな時間か、そろそろ帰ろう、メアリー、君はホテルに泊まりなさい、私も今日はホテルに泊まる事にするよ、皆で外に待っている車でホテルに戻ろう」
「はい」
「じゃあ、ダニエル今日はありがとう、無理を言ったね」
「いやいや、こちらこそ、又いらして下さい、皆さん」
「ありがとう」
「ありがとう」
別れの挨拶をして四人は出口に向かった、するとお客様たちから拍手が起こった。
お客様たちは静かに聞き耳を立てて五人の会話を聞いていた様だった。
驚きながらもエマは出口で後ろを向くと舞台挨拶の様に片足を後ろに引き片手をお腹に当ててお辞儀をした。
拍手が更に大きく成り五人が外に出ても続いていた。
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