第16話 二度目のガイア
洞窟に着いて二人がバスを降りると男女二組が近づいて来た。
「お二人はうんざりしているでしょうが、少し時間を下さい」
礼儀正しく言われたのでは応対せざるを得ないと諦めた。
彼女が彼に目で確認し賛同を得て答えた。
「どうぞ」
「我々、大勢がお二人の後を追うのには大きく分けて二通りある様です・・・一つ、美しい、極めて美しく若い女性が、こう言っては失礼と思いますが冴えない中年の男性に求婚した・・・その訳が解らない、真実なのか騙されているのか、騙されているのならば救って上げたい、それ程、信じられない様です、もう一つは、彼女が言ったこれまでの疑問、不思議に思っていた事を彼が解決してくれたと言う事、皆それぞれに悩みや疑問を持っています、もし解決できるなら、と思うのは当然です、二人を追いかけるのは、どちらかでは無く二人なのです、貴方がたも、もう追い掛けられるのはうんざりでしょう、そこで提案です、明日、町の会場を借ります、そこで講演会を開きたいのです、そこで壇上に二人に立って貰って皆の疑問に答えて貰いたいのです・・・いかがですか」
「・・・」
「・・・」
「はぁ~、その提案に私たち二人のメリットが何処にあるのですか」
「もう後を付いて来なくなります」
「本当にそう言えますか」
「疑問、悩みが無くなるのですよ、後を追う理由が無くなるのです、止まりますよ」
彼女が全てを通訳して彼に伝えると、彼が彼女に言った。
「人はいつも疑問と悩みを持つ生き物です、金持ちは金持ちの悩みがあり、幸せそうに見える人も悩みを持ち疑問を持つ、作り出す生き物なのです、講演など無駄です」
彼女が通訳して伝えると感激した様に言った。
「成程、そう言う話が聞きたいのですよ、彼の何気ない処に気付く感性の言葉をね、何とかお願い出来ないかね」
「やれやれ、貴方の今の言葉は逆効果だった見たいよ、火をつけちゃった見たいね、どうするの」
「そんな物やりませんよ、我々に何の得もありませんからね、やったからと言ってもう付いて来ないとは限りませんからね」
「そうよね、当てに出来ないものね」
彼女が彼の言葉を伝えると四人はとても残念がった。
「では失礼します」
二人は別れの挨拶をすると洞窟へ向かった。
交渉に来た四人はがっかりと洞窟に向かう二人を見つめたが、もっとがっかりした二人と四人を見つめる大勢がいた。
洞窟に入った二人は皆が来る前に下へ下へと降りて行った。
奥へ向かい降りるにしたがって二人の頭の中の声が大きくはっきりとして来た。
<待っていました、尋ねたい事がいっぱいあります>
「私たちもいっぱいあります、一つずつ交代ではどうですか」
<お願いします>
「では、まずもこちらから質問です、貴方の意識が目覚めたのは何時ですか」
<意識と言う意味が解りません、が、あれ、ここは何処だと思った時がそうなら4億5千年前です、凡そ>
「4億5千年前・・・私の予想よりも凄く前です、では次は貴方の番です」
<二人は男ですか、女ですか>
「私は女で彼が男です」
<では貴方が子孫を残すのですね>
「そうです、貴方は子孫を残せますか」
<この大地は全て繋がる一つですから無理です、でも何か方法があるかも知れません、考えます、何故、伝達手段の言語が多数あるのですか>
「御免なさい、私には解りません、貴方は解りますか」
エマが彼に尋ねた。
「昔は人も少なく、交通手段も歩き、馬に乗るしかありませんでした、ですから村単位の集団だったのです。
その集団だけで意思疎通ができれば良かったのです、ですから村単位の言葉だったと私は思っています。
その最小集団に人が増え町になり、貿易が始まり村又は町だけの言語に共通語が必要になったり、大きな町が村を言語的に吸収し、侵略や戦争で町が更に大きくなり言語地域も広くなって行ったのだと思います、その証拠に第二次大戦前後に植民地だった国は侵略した国の言語を現在も使っています」
ガイアよりも早くエマが「素晴らしい」と叫び彼に飛びつきキスの雨を降らした。
<今、その時代を思い出していますが、その頃の私は言語を理解していなかったので確証はありませんが、貴方の言う通りの様な気がします、ありがとう>
「私も今の彼の・・・貴方の事をセイジさんと呼んで良いでしょうか」
「さんは要りません、セイジと呼んで下さい」
「セイジ、私もセイジの説明が正しいと思います、だから言語がいっぱいあり、交通の便が良くなるに従い、言語が消えて行くのですね」
「残念ですが」
「えぇ~、何故残念なの、私は言語は一つで良いと思うけど」
「英語以外でも良いのですか」
「う~ん、困るかな~」
「それよりも残念と言ったのは別の理由なのです、消えてしまった言語で書かれた碑文が世界中にいっぱいあるのです、それが読めれば、その意味が解れば、世界の歴史、人類の歴史が変わるかも知れないんです」
<私がもっと早く言語の勉強をしていれば役に立てたでしょう、残念です、私もセイジと呼んで良いですか>
「どうぞ」
<ありがとう>
「じゃあ、私はエマと呼んで下さい、二人ともね」
「はい」<はい>
セイジとガイアが一緒に答えた。
「今度は私達だけど私が聞いて良い???」
「どうぞ」
「では、貴方は自分を男だと思いますか、女だと思いますか」
<私の認識では男女、雌雄の見分け方の多くは生殖器の形ですが私にはありません、答えようもありません、解りません>
「セイジはどう思うの」
「ガイア、両性具有と言う言葉とその意味を知っていますか、エマは知っていますか」
「私は知っています、ガイアはどう???」
<知りません>
「エマは言い難いでしょうから私が言いましょう」
「あら、ありがとう」
「いいえ、どう致しまして、両性具有とは雄と雌の両方の特徴を持っていると言う事です」
<雄と雌の生殖器を持っているのですか>
「そうです」
<私がそうだと言うのですか>
「貴方は火山を噴火出来ますね、それも大大大噴火も可能でしょう、その噴火で岩石の一部を宇宙に飛ばす事が出来るでしょう・・・それが意識を持とうが持つまいが子供と言えなくも無い、でも決してお願いですから、その様な噴火はしないで下さい、我々人類が滅んで仕舞いますのでね、雌の特徴として直接子孫繁栄する方の個体とも言えます、又、生物の中には無性生物と言うものもいます、雌雄が無いのです、貴方はこちらかも知れません」
<セイジさん・・・私は無性生物の様な気がします>
「ガイアさん、私もそう思います、貴方に・・・があるとは思えません」
<セイジさん、エマさん、誰かがやって来ます>
二人は振り返り誰が来るのかと身構えた。
「話し声がしていたな、誰かいるぞ、あぁ、あの二人だ」
「二人だけだぞ、誰と話していたんだ、可笑しいなぁ~」
六人の男女が話しながら近づいて来た。
「そろそろ時間だから戻りましょう」
「そうですね、戻りましょう」
二人はそう言って手を繋いで六人の横を通り抜け出口へと向かった。
<ガイア、又、明日来ます>
<楽しみにしています、セイジさん>
<私も楽しみよ、ガイアさん>
<はい、お待ちしています、エマさん>
残された六人は何があるのか、誰かいるのかと周りを探していた。
無論、気になるものなど何も見つかる事は無かった。
<つづく>
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