第9話 遭遇
最後に四つ目の「ニルギ・ケイブ」へ行った。
この洞窟の専用ガイドは三十分に一回でガイド経路の後は自由行動が許されていた。
二人は流行る欲求を押さえガイドの案内に付いていた。
ガイドの案内が終り二人きりになろうとしたが完全にストーカーと化した人達がそれを許してはくれなかった。
「少しの時間で良いですから二人だけにして下さい、お願いします」
彼女はこれまでの強気な態度では無く優しく皆にお願いした、それは勿論英語で語られたがこれ程の丁寧で切迫した言葉は英語で語られる事は珍しく日本語で言うならば「歎願」に当たるものだった。
皆は余りの彼女の真剣さに圧倒され引き返して行った。
二人は洞窟の奥深く二酸化炭素の濃度が濃く温度も湿度も高い場所へと向かった。
そして、それは突然やって来た。
「あぁ~長い長い時間貴方方の訪問を話せる事を待ち望んで居ました」
はっきりと言葉として聞こえた、但し音としてでは無く、頭の中に直接響いていた。
二人は見つめ合い聞こえた事を確認し合った。
彼が口に出して行った。
「貴方は何方ですか、我々に何を望んでいるのですか、貴方は何処に居るのですか、姿を見せて下さい」
横で彼女も少し怯え彼の腕を強く掴んでいた。
「私は人類が地球と呼んでいる物です」
二人は絶句し見つめ合った。
「地球ってこの惑星の事~惑星に意識があるの~~」
彼女の言葉だった・・・が彼の言葉は違っていた。
「やはりでしたか」
「貴方は予想していましたね、だから通じ易かった」
「私達にその地球が何を望んでいるのですか、何故に我々二人なのですか」
「世界中で私の声が聞こえたのは貴方たち二人だけです」
「えぇ~70億人の中で二人だけなの~」
「そうです、二人だけです、だから私は世界中の言語の中からまず日本語を覚える事にしたのです、その後に貴方に行き付き英語も覚える事にしました、が貴方が日本語を学んでいると知り日本語だけにしました、現在は世界中の言語が解ります」
「それで我々に貴方は何を望んでいるのですか、何故我々をここへ呼んだのですか」
「ここへお呼びしたのは私の声が届き易い場所だからです、お呼びした理由は私にいろいろな事を教えてほしいからです、私の先生になって欲しいのです」
「貴方は本当に地球なの、彼は信じている様だけど私はまだ信じられないのよ、貴方が本当に地球だと言う証拠を見せて下さい」
「私には証明の方法が解りません、信じて頂くしかありません」
「貴方、何か方法は無いかしら」
彼女は彼に方法を考えろ・・・と言っていた。
「私はもし貴方が地球だったらどの様に確認するか、証明して貰うかを考えていました」
「まぁ~もう考えてあるのですか」
「ええ、但し彼に何が出来るのかが解らないのでその確認が先に成ります」
「えぇ、彼に・・・地球の彼に何かが出来るのですか・・・その前に彼の名前を決めませんか、貴方も彼で彼も彼だから・・・私にとっての彼は日本人の貴方だけだから・・・ね、決めましょう」
「僕は彼さえ良ければ、もう決めてあります・・・ガイアです、どうですか、気に入りませんか」
「ガイア・・・良い響きですね、気に入りました、私をガイアと呼んで下さい」
「ガイア・・・何処かで聞いた事がある・・・ような~~」
「昔の学者の一人の学説です、それは地球も生物では無いが意思、意識を持っている・・・と言うものなのです」
「まぁ~本当に~、既に真実を言い当てた人が居たのですか」
「えぇそうです、ではガイア、証明の方法ですが、貴方は嵐を起こせますか、昼を夜にできますか、夜を昼にできますか、火山を噴火させる事が出来ますか、噴火している火山の噴火を止める事が出来ますか、砂漠に雨を降らせることが出来ますか、何処でも指定した処に地震を起こせますか、次に地震が・・・大きな地震が起こる場所が判りますか、磁力を指定した処だけ強く出来ますか、風を自由に起こせますか…どれか出来る事は在りますか」
「全て出来るでしょう、多分ですが・・・やった事が無いものもあるのです」
「凄い、凄い、じゃ今何かをやってもらいましょ」
「待ちなさい」
彼には珍しく語調が強かった。
「ガイアさんまだ何もしない様にして下さい、火山を噴火されたら困ります、嵐も困ります、地震を起こされたら大問題です」
「そうですね、すみません、ガイアさん何もしないでね」
「はい、まだ何もしません、証明方法を考えて下さい」
「そうですね、ガイアさん、私の眼の前にある岩に強い磁力を発生させる事は出来ますか、強いと言っても南北を向くはずの針がこの岩に向く程度の磁力で良いのですが・・・可能ですか、できますか」
彼はそう言って先にその岩に磁力が無い事を確かめる為に鍵を近づけた。
鍵は岩に対して何の反応も見せなかった。
「その様な事はした事がありませんが出来ると思います、やって見ますので確認して下さい」
暫く、二人はガイアからの言葉を待った。
二人の脳に声が響いた。
「出来たと思います、確認して下さい」
彼が再度、鍵を岩に近づけると今度は鍵が岩に張り付いた。
「うわ~磁石になりましたね、でもこれ、この岩は鉄では無いですよ、どうして磁石になったのですか」
「地球上の全ての石、岩、土には多少なりとも鉄分が含まれている物なのですよ・・・ありがとう、ガイアさん、他の人の迷惑に成りますので元の岩に戻して下さい、出来ますよね」
「はい、出来ます・・・・・・・戻しました」
彼が鍵を近づけたが元の様に反応が無くなっていた。
「ありかとう、これで彼女も納得してくれたでしょう、どうですか」
「はい、ガイアさん、貴方は地球さんです、不思議ですが・・・」
二人と一体と言うべきか、三人と言うべきか、ガイアは二人の心に二人は声に出して会話していた。
「まず、お二人にお願いが在ります・・・ガイアさんは止めて下さい、ガイアの方が好きです、それと声に出さなくても私に届きます、お二人の心の声は私を通してお二人に届きます、それとお二人の心の中の全てを私は読む事は出来ませんのでご安心下さい、先程からの会話で分かったのですがお二人が会話の最初に私の名前を言うと届きが良い様です、ですから私と話したい時はガイアと言ってからが良いと思われます」
「解りました、いや、ガイア、解りました」
「ガイア、了解です」
「ガイア、我々はそろそろこの場を離れた方が良さそうです、二酸化炭素の濃度が濃くなってきましたし時間切れの様です」
「あら、ほんとこんなに時間が経っているわ」
彼女が腕時計を確認しながら言った。
「時間はどうにもできませんが二酸化炭素を減らし酸素を増やす事は出来ますが・・・」
「ガイア、そうして下さい、でも今日は時間切れです、但し明日また来ます、宜しいですか」
「はい、お願いします、風を入れて二酸化炭素の濃度は減ったと思います」
「ガイア、ありがとう、ではまた明日お会いしましょう」
「ガイア、また明日ね、バイバイ」
「はい、楽しみにしています、さようなら」
二人は手を繋いで洞窟を入口の方へ戻って行った。
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