第8話 彼女の宣言
二人が皆の方を向いて聞き入っていると、彼女が彼にキスをした事が話題だと気付いた。
「何で私のキスが話題なの~私が誰とキスしようが誰にも迷惑を掛ける訳でもないでしょ」
「貴方が余りにも綺麗で、そんな貴方が私の様な冴えない貴方に似合わない私とだからですよ」
「貴方が私に似合わないですって・・・正直に言って貴方に初めて会って私は一目惚れよ、話をしてますます惚れたわ」
「それも誰かに操られてでは無いのですか」
「それは絶対に違う、私はこれまで頭の良い人に出会うのを待っていたの、そりゃ~頭の良い人にも一杯会ったはでもそれは誰かの何かを覚えているだけの頭の良さで自分の考えが無かったの、でも貴方は違った、そうね~、記憶と理解の違いかなぁ」
「僕も貴方にそれを感じました、貴方は知識欲が旺盛な人だ、でもそれは知識を増やしたいでは無く理解したい欲求でした」
「そうよ、だってこの世の中、不思議で一杯~何で皆は知ろうとしないのか、知らずに平気なのか不思議で不可解でしょうが無いわ」
「僕もそれを何時も感じていますよ」
「ほらね、私達は気が合うのよ、私が貴方を好きになっても不思議は無いわ、何か文句でもあるの」
最後は周りで二人の会話を聞いていた人達に向けられていた。
ストーカー達の一人が聞いた。
「貴方の言う我々が気にしていない不思議とは例えば何かな」
「音は空気の振動だけど光は何が媒体なの、重力は何が媒体なの、貴方が知っているなら、ぜひ教えて」
「光は粒子的特徴があり、振動波的特徴もある・・・重力は時空の歪みだ」
「ほらね、そんな事は私も知っているわ、貴方は私が思う一般の人の中でも物理に少しは知識がある様だけどそれは誰かが言った只の情報にしか過ぎない・・・そんな事は現代ではネットで調べれば直ぐに判る事よ・・・私が聞いたのは媒体・・・音が伝わるには空気がいるわ宇宙の真空では音は伝わらない、でも光や重力は伝わる、光は壁が間にあると伝わらない、でも重力は伝わる・・・何が違うの、何を使って、何を伝わって繋がるの・・・それを尋ねているのよ」
周りのストーカーと化している人達の誰からも返事は無かった。
「彼は仮説だけど説明してくれたわ、私はその彼だけの考え、仮説に納得した、私の長年の疑問が解消できたのよ、惚れるのは当然でしょ、何か文句あるの」
最後は喧嘩でも吹っ掛ける様に文句があるなら言って見ろ・・・と挑んでいた。
「えぇ~彼は光の媒体も重力の媒体も答えたの」
先程の男性と違う人が尋ねた。
「ええ、彼の考えを聞かせてくれたわ、私はその説明で納得出来たわ」
「それ私も知りたい、彼は何て教えてくれたの」
「駄目、教えない、彼は私に教えてくれたのよ、知りたければ自分で尋ねなさい」
その人が彼を見つめたが彼は何も言わなかった。
彼女と彼らの会話は英語で、それもネイティブ同士の会話でだったので彼には早過ぎて理解が出来なかった事も彼が返事をしなかった理由ではあった。
「残念でした、彼の関心の中には言語は入っていないのよ、英語も少しは話せるけど彼の説明は日本語で聞いたのよ、彼は日本人で私は日本語が話せるのよ」
「彼は日本人なのか、そうか日本人か、彼の様な人がいるから日本は新開発に優れているのかな」
「そんな事は無いんじゃないの、世界中に新な事を研究している人は一杯いるでしょ」
「そうだね」
「どう、少しは私が彼に夢中な訳が解ってもらえたかしら」
一人の女性が尋ねた。
「貴方の質問の中に人の年齢と言うか寿命というか・・・そんな様なものはあったの」
「ありましたよ、貴方は具体的に疑問に思っている事は何」
「私の友達に子供が二人いる女性がいるんだけどとても老けて見えるのね、彼女に会うと私も歳を感じる、考えさせられる・・・だから最近は余り会いたいと思わなくなったの、何故、同じ年なのに見た目の年齢差が大きく違うのか疑問に思っているのよ、子供を産むと何かのホルモンのせいかとも思ったのだけれど・・・」
「私は他の問い掛けをした時に例えで丁度その事を教えてくれたわ・・・う~ん、どうしようかな」
彼女が彼を見ると英語が理解できたのか、彼が頷いていた。
「彼が許してくれた様なので話しましょう、彼の説では、人も動物です、生物です、生き物です、生き物の第一の生存目的は子孫繁栄です、子供を産んだ人は子孫が出来た任務を達成した生物学的安心感が生まれ生に対する執着心つまり寿命への関心が肉体から薄れて行く・・・例えば、川を遡上して卵を産む魚の中には卵を産んだ直後に死んでしまう種類もいます・・・大変な遡上の疲れもあるのでしょうが・・・カマキリの中には受精した直後に雄を食べる雌の種類もあるそうです・・・生物学的安心感は何も女性ばかりでは無いのです、彼に言われて私の友達を思い浮かべました、彼の言う通りに子供のいる男性も老けて見えるのです、同じ年の独身の人よりね、貴方の周りではどうですか」
「・・・そうです、言われれば確かにその通りですね」
その女性は彼女から彼に視線を移し好奇心を露わにした。
「駄目よ、もう彼は私の者よ、私だけの者よ」
彼女はその女性の欲求を感じ取り激しく抗議した。
「いいじゃ無いの減る物じゃないでしょ」
「駄目~、彼は私の旦那様になるの」
「式はまだじゃないの」
「これで私が結婚式を急いだ訳が少なくとも貴方には解ったでしょ」
「悔しいけどわかったわ」
二人の会話を興味深々で聞いていた人達も彼を見る眼が少し変わり始めていた。
その時、ガイドが現れて昼食休憩の終了を告げた、次の洞窟への出発だった。
次の洞窟は「ジュエル・ケイブ」と言う西オーストラリアで見学できる中では一番大きな物だった。
一時間毎に専用ガイドが説明してくれる。
二人は皆と一緒にとても幻想的な風景を堪能した。
一番深い処を見物している時に二人は眼を見合わせた。
誰かが話し掛けている感じがしたのだ。
そしてその内容は「二人きりに成れ」だった。
だが、専用ガイドの案内なしでは行動が出来ない為、とても強い欲求に駆られていたが断念した。
二人はその欲求を話合い現実である事を確認した。
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