4日目 【盲目な子羊たち】

中国の山間やまあいに小さな街があり、少し大きなビルの地下には生物兵器の研究施設があった。

研究員たちはビルの地下に行くために、エレベーターで地下に降りると防犯カメラがついた扉の前で立ち止まり、手に持ったICカードを扉の磁気端末に当てて1人ずつ中に入っていく。


通路の奥に進んで一番奥のドアを開けて中に入るとズラッと科学防護服がハンガーにかけられて並んでいる。

研究員たちは科学防護服に着替え始めた。チャンは自分の化学防護服に着替えようとしたときに腹部のあたりに小さな穴があることに気づいた。


目をまんまるに見開いてチャンは動揺した。


この化学防護服はいつから穴が開いていたのだろうか?


チャンは科学防護服を廃棄のカゴに入れ、研究室には入らずに周りに誰も居ないことを確認しながら医療室のほうへ入って行った。

誰かに見られては非常にマズイ。チャンのひたいには冷や汗が吹き出している。


医療室の部屋の灯りをつけると机の引き出しを開けて、ゴムチューブを取り出した。チャンはすぐに自分の腕をゴムチューブで縛り、浮き出た腕の血管に注射針を打って採血をした。


チャンが自分の血液で行った血液検査の結果は陰性である。ひとまずホッとするチャンだった。

研究所では様々なウイルスを研究している。もしエボラウイルスに感染していれば助かる見込みはない。その恐怖は研究者であれば誰もが知っていた。


血液検査は陰性だったが、他のウイルスによる症状が出ないとは限らない。

唯一、救いだったのは化学防護服に穴は開いていたが内部に送る酸素の空気圧があるため服の内部にウイルスが入る可能性は極めて低いということだ。


研究所に在籍している特別医療班が出勤するまで1時間ほどの空き時間があった。チャンは携帯で研究所内のリーダーに連絡をした。


事情を説明するとリーダーの顔は青ざめた。


午前中にチャンは特別医療班に全身をくまなく検査され、他の研究員たちはチャンが使ったベッドやイスなどを完全に消毒した後に、午後から1人ずつ検査されていった。


午前中に検査されたチャンは肺のあたりにかげがあり、何かのウイルスに感染した疑いが持たれていた。

医療室から隔離部屋に移されて、ベッドで横になったまま天井を見つめ不安になるチャンの鼓動こどうは高まり、落ち着けない様子である。


隔離部屋のドアの前の通路で医療班が話し合っている声が聞こえる。医療班のリーダーだけが残り他のメンバーは去っていった。

医療班のリーダーは通路で携帯で誰かと話しているようだった。リーダーが電話越しにしゃべっている声がチャンの耳に聞こえてくる。


しばらくチャンは研究所の施設内にある隔離部屋で過ごすことになった。

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