なんか、姉ちゃんが占い見る
「うわっ、始まった! かしてかして! リモコンかして、早く!」
朝、ぬぼっとトーストを齧っていたら向かいに座っていた姉ちゃんがバタバタと騒ぎ出した。
姉ちゃんは星占いが嫌いだ。
我が家の朝は何となくいつも習慣的に情報番組を流しているので、星占いのコーナーが始まると姉ちゃんは素早く部屋から出ていく。無理ならTVの音を消す。
「ふう、危ない、間に合った。もー、占いのコーナーとかマジいらないんだけど。誰が見てるの、これ?」
………結構みんな見てると思うけどなあ、続いてるんだし。
「根拠もないのに適当なことばっか言ってさ。朝から順位つけられて気分悪いし、聞いてないのにラッキーアイテムとか勝手に宣告されたら時間ないのに部屋に探しに戻んなきゃいけなくなるし、ラッキーカラーのせいでヘアゴム変えるのとかほんっとめんどくさい。ほんっっとうんざり!」
めっちゃ信じてるじゃん、星占い。
「あー。でも、あれだよね。僕も当たるとは思ってないけどさ、やってたらつい見ちゃうよね、あーゆーのって」
「…………ふーん」
麦茶を一口飲み下し、細めた目で僕を見る姉ちゃん。
「………獅子座、何位だったん?」
「え?」
「見てたんでしょ、何位だったんよ」
「ああ、僕の獅子座は……四位」
「…………そう」
「姉ちゃんのてんびん座も聞いとく?」
「いいって」
「あ、そう」
「……………………」
「……………………」
「………偶数か奇数かだけ教えて」
めっちゃ気にしてるわー。
「早く、教えてって」
「えーっと。もう言おうか、順位?」
「なんでよ!偶数か奇数かだけでいいって言ってるじゃん!」
「奇数だよ」
「…………ふーん」
「………………………」
「………それは素数なの?」
もう、めんどくさいんですけど。
「もう言うよ、順位」
「は? なんで? 聞きたくない!素数かだけでいいから」
「わかんないよ、もう。聞けって。大丈夫、良い順位だったから」
「え? え? なんで言ったの!聞きたくないって言ったのに!なんで言ったの?」
「いや、まだ言ってないし」
「言ったようなもんじゃん!良い順位って四位までじゃん! 奇数なら一位か三位のどっちかじゃん!一は素数じゃないから三位に決まりじゃん!ほら、言ってるじゃん!」
すげー頭回るじゃん、朝から。
「あー、最悪だー。知っちゃったー。最悪だー。だから嫌いなんだよ、占いなんて」
その割にグイグイ近寄ってくるんだもんなー、勝手に。
「もういいじゃん、知っても。占いなんか信じてないんでしょ?」
「……………………」
「姉ちゃん?」
「…………信じてないけど」
信じてるわー、この人。
「何よ?信じてないって言ってるでしょ」
「………はあ」
「全っっ然信じてないから、マジで」
「…………ちなみにラッキーアイテムは牛乳だってさ」
「……………………」
姉ちゃんの麦茶を飲む手が止まった。
「信じてないよね?」
「…………信じてない」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「………カフェオレ飲もー」
うわ、ズルっ!!
姉ちゃんのてんびん座は五位だった。
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